1-4 宿屋と、食事と、眠るということ
ギルドを出ると、空はすでに夕暮れに近かった。
街の通りには灯りが増え、
昼間よりも人の気配が濃くなっている。
受付嬢にもらった手書きの地図を片手に、
宿を探す。
城門を入ってすぐの通り。
木造の建物で、看板には文字と鍋とベッドの絵が描いてある。
入り口では人の出入りがあり、
中からは食べ物の匂いがする。
(……きっとここだな)
扉を押す。
中は、思ったより綺麗だった。
木の床。
いくつかのテーブル。
奥にカウンター。
女将らしき女性が、こちらを見た。
「泊まりかい?」
「はい」
即答した。
「一泊、銀貨3枚。
飯付きなら、銀貨4枚だよ」
(……安いのか、高いのか)
一瞬考えて、銀貨4枚を出す。
女将は受け取ると、手慣れた様子で引き出しにしまい、
後ろに掛かっている鍵の一つを手渡してきた。
「部屋は二階の奥。
飯はもうすぐ出すよ」
「ありがとうございます」
鍵を受け取り、言われた通り二階へ。
部屋は狭い。
けれど、ちゃんとしたベッドがある。
荷物を置いて、下に戻る。
――
食堂はそこそこ賑わっていて、
旅人らしい人や、冒険者風の客もちらほらいる。
女将と目が合うと、食事の用意されたテーブルを指差した。
晩ご飯は、素朴だった。
パンと、具のよく分からないスープ。
それに、焼いた肉。
味付けは塩だけみたいだけど、
空腹だったせいか、普通に美味しい。
噛み応えはあるが、ちゃんと旨い。
スープは塩味が強めで、
体の奥にじんわり染みてくる。
(……食べ物だ)
当たり前のことなのに、
なぜか胸が落ち着いた。
パンをちぎってスープに浸す。
それだけで、十分だった。
食べ終える頃には、
身体の緊張が少し抜けていた。
「ごちそうさまでした」
自然に、そう言っていた。
女将は軽く頷き、
小さく笑った。
「お金貰ってんのに、不思議な子だね」
――
靴を脱ぎ、ベッドに腰を下ろす。
(……長い一日だった)
白黒に反転した世界。
動かない体。
息ができなかった感覚。
思い出すと、少しだけ胸がざわつく。
でも今は――
布団に潜り込むと、
そのまま意識が沈んでいった。
――




