7-2 ワイバーンと、お荷物と
朝。
いつものように薬草採取を終え、
宿へ戻り部屋に入る。
案の定、
バルキリーの面々はまだ寝ていた。
(なんでこれで朝の待ち合わせを平気でするんだろ)
「ん……」
娘が起きてきた。
朝食とも昼食ともつかない食事をとりながら、
娘と話す。
「そう言えば学校どうだったの?」
「ん、進路の話とかそんなの」
「また顔出さなきゃだけど」
「大変だなあ」
「あ、今日のクエストの話は聞いた?」
「昨日帰ってきてお姉様たちから聞いた」
「行くよね?」
「もちろん行くわよ」
――
しばらくして、
一人、
また一人と起きてくる。
いつもの
「獣人は夜型――」
のくだりを聞き
各々、食事を済ませると
ギルドへ向かった。
――
ギルドへ着くと、
すでに馬車が用意されていた。
「鉱山まではこちらで――」
とバルキリー担当の職員が
クエストの詳細を説明しようとする
「ついてくるんだろ?説明はいいよ」
「とにかく行こうぜ」
全員で馬車に乗り込む。
馬車は王都を出て、
北寄りの街道を進んでいく。
道中、
隣に座ったのは珍しく聖女だった。
「最近あの三人が冷たいんですぅ」
とか言うのでそっちを見る
娘、エルフ、魔法使いが離れて座っていた
(揺れない三人か…)
「そういえば」
「はい?」
「聖女さんて教会とか行かないんですか?」
「あー」
「実はですねぇ」
「わたし、
教会ではちょっとお荷物らしいんですよねぇ」
「お荷物?」
「信者さんが邪念を持つとか言われてぇ」
「そりゃそうでしょうよ」
離れたところに座っている娘が即答した。
「そりゃ持つじゃろ」
やはり離れたところに座るエルフも頷く。
「不可避……」
エルフの隣の魔法使いも頷く。
「なんでなんですかー」
と馬車が段差を通るたび胸が揺れる
「持ってる人は…持たざる人の気持ちを…理解できない…」
三人が頷く。
その様子に
「持たざる者は大変だにゃ」
ロリ猫が腕を組み頷きながら言う。
「だからあんたもこっち側よ!」
娘が即座に言い返すと負けじとロリ猫も言い返す。
「ウチはまだ成長期にゃ!」
「それならあたしだって」
「我も…」
ロリ猫に同調する二人を見てエルフも
「ワ、ワシだって…」
「「「それは無理がある」」」
そんな話をよそに
聖女はにこにこしながら言った。
「わたし、
何も悪いことしてないんですけどねぇ」
「まあ、
それは確かにそうですね」
「あとですねぇ」
聖女は少しだけ困ったように笑う。
「女神さまの加護も無いんですよねぇ」
「加護?」
「無いんですぅ」
「でも聖女なんですよね?」
聖女は肩をすくめた。
「それも含めて、
扱いに困るみたいですぅ」
その辺りの事情はよく分からないが、
ただ、
何か複雑なんだってのはわかった。
「教会って女神様の一つだけなんですか?」
「女神さまは一人ですぅ」
すると、馬車の隅でいじけていたエルフが口を開く
「タイチは他の宗教の事を聞いてるんじゃろ」
「一応、女神教がほとんどじゃが」
「女神教はいわゆる新しめの宗派じゃな」
「この世界を作った創造神からの旧約が存在――」
「そこの枝分かれで女神派と福音派の二つが――」
ひとしきり宗派について説明を受けたが
いくつかある
と言うのは理解した。
――
馬車は進む。
王都を離れるにつれて、
道を行き交う人の数は少しずつ減っていく。
鉱山が見えてくると
代わりに増えたのは、
鉱石を積んだ荷車だった。
石造りの建物が並ぶ場所で、
馬車が止まる。
「着いたようですよ」
職員が降りていく
続いて馬車を降りると
屈強な男たちが忙しなく行き来していた。
腕が丸太みたいな男たちが、
大きな岩を抱えて運んでいる。
丸太みたいな腕に負けないくらい巨大な工具を担いだ男たち。
みんな揃って体格がいい。
馬車を降りて職員が世話役に話をする
「いやぁ来てくれて良かったよ」
「クエスト発注しても誰も来てくれなくてよ」
「ワイバーンには困ってたんだ」
やたらと声の大きい世話役が言う
タイチがボソッと呟く
「…全然倒せそう」
「倒せるぞ」
「え?」
「でもその間は誰が掘るんだ?」
「……あ」
「お前が代わりに掘ってくれるなら行くぞ」
「王都は今高度成長の真っ最中だ」
「いくら掘っても追いついてねぇ」
「作業を止められねえから依頼してるんだよ」
(そういうことか)
「軽はずみな事言ってすいません」
「わかりゃいい」
世話役は笑いながら言う
「とりあえず今日はゆっくり休んで体を癒してくれ」
「宿はあっちだ」
――
宿に着くと
これまた、屈強な女将が出迎えてくれた
(…この人も倒せそう)
「飯はもうちょっと後だね」
「宿の裏から少し登ったとこに温泉が沸いてるから」
「風呂はそこを使ってくれ」
「温泉!」
温泉という言葉にみんなが色めき立つ
鉱山宿の女将が続ける
「ここの名物はしょっぱい料理だ」
「風呂から出てくるまでには出来ると思うよ」
そこで娘が聞く
「お風呂の男と女の時間帯は?」
「そんなの無いよ」
「え、」
「でも別れてるから安心しな」
そう聞いて安心して
「じゃあお風呂行きましょ」
娘は先立って歩いていった。




