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7-1 別の思惑と、塩漬けと


――王都 軍部庁舎


「枢密院が解体されたそうだな」


「ようやく目の上のたんこぶが消えたか」


「はい」


しかし、表情はあまり明るくない。


「王家の再編となるとたんこぶどころではなくなるかも」


「確かに王女はやり手すぎる」


「軍部に口出ししてくると厄介だ」


色々な話が飛び交う中


「例の異常幸運の冒険者はうちで抱えれそうか」


「それなんですが」


部下が一枚の資料を差し出す。


「既に王女殿下が接触済みの報告が」


「接触程度なら問題ないのでは?」


「それが、王城への出入り許可証も発行されているとのことです」


「何だそれは?」


「わかりません、ですが一介の冒険者には異例の待遇です」


「……そうか」


「枢密院ならまだ隙もあった」


「だが王家が直接抱えるなら話は別だ」


資料を机へ放り投げる。


「現状維持だ」


「監視だけ続けろ」


「接触は禁止する」


「下手につついて何かあれば、軍部も解体されるかも知れん」


「了解しました」


男は椅子に深く腰掛けた。


「手遅れじゃないか」


――


昼。


薬草採取を終えて宿へ戻る。


部屋で起きてきたみんなと昼食をとる。


「ちょっくらギルドにでも顔出すか」


剣士が今日のプランを話す


それを聞いた娘は


「あたしはちょっと学校に顔出さなきゃだからパス」


と一人先に食事を済ませて出て行った


みんなが食事を終えた頃。


ロリ猫が立ち上がる。


「じゃあギルド行くにゃ」


剣士も他の面子も立ち上がる。


みんなが出ていくのを見ていると。


「何してるにゃ?」


「え?」


剣士が振り返る。


「お前も行くんだよ」


「え」


(今帰ってきたとこなのに)


――


結局。


またギルドへ来ていた。


薬草採取の担当職員がタイチを見つけ


あれ?という顔をする


タイチは黙って前を歩くバルキリー達を指差す


察した職員は何も言わずに苦笑いする


カウンターでバルキリーの担当職員を呼び出す。


担当職員がバルキリーをそのまま一階の待合室のソファへ促す


「例の件ですが、

 今のところ進展はありません」


「そうか、まあ、ここで話すって事はそう言う事だよな」


「ええ、せっかく来ていただいたのに申し訳ありません」


「しかし、他の地域では似たような報告が続いてるので油断はできません」


「王都周辺は冒険者が多いですからね」


「活動を控えているだけなのかもしれません」


「特にバルキリーだけで何回か遭遇してますからね」


「オレたちが強すぎるのも考えものだなぁ」


剣士は上の方を見つめながら言う


「聴取の方も進展はないと言うことじゃな」


エルフが確認する


「ええ、変わらずですね」


ロリ猫が思い立ったように


「何か他に塩漬けは無いんにゃ?」


(塩漬け?)


「ああ、私はここの所属では無いので確認してきますね」


そう言って職員は一旦席を離れる


「ねえ、塩漬けってなあに?」


エルフに耳打ちする


「塩漬けってのは長い間、未完了のクエストのことを言うんじゃ」


「長期保存の塩漬けとかけてるんじゃな」


「なるほど」


程なくして職員が戻ってくる。


「鉱山地域にワイバーンが巣を作ってて、度々鉱山関係者が襲われてるそうです」


にこやかに言う


「被害はほとんどないのですが」


「まぁ鉱山関係者は基本屈強だからな」


「ええ、それで長い間未完了になっているらしいです」


「ウチらが受けるにゃ」


「それはありがたい、ここのギルドも対応に困っていたようで」


「未完了のクエストはギルドの評価に繋がるからな」


「その通りです」


「バルキリーがクエスト探してるって言ったら」


「喜んでこれを出してきましたよ」


「まぁワイバーンは素材の宝庫だしな」


「行っても損は無いだろう」


急遽、ワイバーンの討伐をする事になった。


「では、明朝にこちらで」


「オッケーにゃ」


(また朝の待ち合わせにしてる…)


「あの、」


「僕、薬草採取を先に行きたいんで昼前より少し早いくらいでいいですか?」


「構いませんよ」


「なんにゃ薬草採取くらいサボればいいにゃ」


「いえ、一応名人の称号を頂いてるので」


「真面目だなぁ」


(あなた達が不真面目なんです)


――


帰り道、


「ワイバーンってなに?」


「なんだ?そんな事も知らずにクエスト受けたのか?」


「いえ、受けたのは僕じゃ――」


「ほんとにタイチは物を知らんのう」


「だから僕じゃ――」


「安請け合い…命取り…」


「ちゃんと話を聞かないとダメですぅ」


「タイチはそそっかしいにゃ」


(え、なんで僕が詰められてんの?)


「ワイバーンは飛竜の一種でな」


「爪や牙は武器の素材になるし」


「羽は軽くて丈夫で防具の素材になる」


ピンと来てない顔をしてたのかエルフが、


「そうじゃな、ちょっと寄り道いいか?」


そう言って

『王都冒険者資料店』に立ち寄る


人の群がっていない店の隅に行き

何やら本を探す


周りでは


「おい、バルキリーが居るぞ」

「絵札にサイン貰おうかな」

「プライベートに声をかけるのはマナー違反だぞ」

「そうだなファンにあるまじき行為だ」


と話しているのが聞こえる


(あ、気付いてなかった訳じゃないんだ)


「あった、これじゃ」


と一冊の本を取り出す


そして本を開くと

魔物や魔獣の絵と文字が載っている


「へーこんなのも置いてるんだ!」


「何を言っておる、ここは元々そう言う店じゃ」


(そう言われれば冒険者資料店だった)


「ワシが見せたかったのはこれじゃ」


エルフが開いたページには

竜っぽい魔物の数々が載っていた


そのうちの一つを指差し、


「これがワイバーンじゃ」


見ると濃い青色のトカゲに、羽の生えた竜っぽいのが描かれている


「これが、ワイバーン…」


「さっきも言ったように素材が取れるし、」


「そうじゃな、あとは――」


「肉は臭みが少なくて焼いても揚げても美味い」


(焼いても揚げても…)


「え?まさかヘンネって」


するとロリ猫が


「タイチはなかなか鋭いにゃ」


「え?」


「気づいて…しまったか…」


「え?え?」


「まぁ美味しいですもんねぇ」


「え?え?え?」


そして剣士を見ると


「何言ってるんだヘンネはヘンネだろ」


ホッとする


が結局ヘンネは謎のままだった

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