6-4 王女と、解散命令と
拘束されていく審問官たちを前にしても、
王女は一切表情を変えなかった。
「そ、
そのような権限、
王女殿下といえど――」
「ありますわ」
即答だった。
「王家直属監査権限」
「並びに、
枢密院緊急停止権限」
「今回はその両方を行使しますの」
傍聴席がどよめく。
「緊急停止権限……?」
「そんなものまで……」
「本気だ……」
王女は、
冷たい視線で審問官たちを見下ろした。
「王は君臨すれども統治せず」
「これは先代国王、
わたくしのお祖父様のお言葉ですわ」
「元々の意味は違いますがお祖父様はこの言葉を大層気に入られて」
「国と言うのは国王でなく民によって成り立っていると考え」
「王家が民を蔑ろにせず、
独裁へ傾かぬように」
「その監査機関として作られたのが、
枢密院ですの」
「本来ならば、
王家の暴走を止めるための機関」
「けれど、
その枢密院を管理する元老院の一部が、
私腹を肥やすために私物化した」
「そして枢密院は、
本来の役目を失いました」
「王家を監査するはずの機関が、
腐敗した者たちの隠れ蓑になったのですわ」
「ですから」
「その枢密院そのものが腐敗したのであれば、
話は別ですわ」
「以前より、
枢密院内部の不自然な動きは報告されていました」
「ですので、
こちらも間者を送り込んで調査していたんですの」
「か、
間者……!?」
その一言に傍聴席もざわつく。
「王女直属の諜報機関……」
「都市伝説だと思っていたが……」
「実在したのか……」
(みんなよく知ってるなぁ)
「証拠を押さえるのに苦労しましたわ」
「枢密院による証言改竄、
責任転嫁、
聴取記録改変」
「こちらの書類は特に警備が厳重で」
「しかし今日は枢密院の皆様すべてこちらへいらっしゃってますから」
「ま、まさか
我々が居ない今日を狙って」
「おかげでこちらへの到着が遅れてしまいましたわ」
「お、横暴だ!王家の暴走だ!」
「治安維持法の特例を使いましたわ」
「我々ほど王国のためを思う――」
「黙れ」
空気が凍る。
王女が、
ゆっくりと大広間を見渡した。
「今ここで枢密院の解散、
及び王家選出審議官による再編成を命じますわ」
傍聴席が再びどよめく。
「王家主導で再編するのか……」
「そこまで踏み込むのか……」
「王女は本気だ……」
王女は構わず続けた。
「なお、
キューティーバルキリーの皆様への嫌疑は、
現時点をもって全て無効」
「よって無罪ですわ」
「国王陛下、これでよろしくって?」
国王がまた一言。
「うむ、良きにはからえ」
ロリ猫が目を丸くする。
「にゃ?」
「終わった……にゃ?」
タイチは、
連行されていく審問官たちを見ながら、
(王族って怖ぇ……)
正直な感想だった。
――
その後。
王城内の一室へ通された。
「なんか知らんが助かったぜ」
剣士がソファーへ倒れ込む。
ロリ猫はソファーにちょこんと座り、
引きつった笑顔で、
「よ、予定通りにゃ」
(絶対違う)
「お主、
もう少し口を慎んだ方がよいと思うぞ……」
エルフは呆れたように言った。
倒れ込んだままの剣士が言う。
「大体ホントに予定通りなんだったらもっとマシな予定を組めよ!」
(確かに)
――
コンコン。
部屋の扉がノックされる。
「王女殿下である」
付人の声が響いた。
部屋へ、
王女が入ってくる。
全員が慌てて立ち上がった。
「平に」
その一言で、
皆が再び席へ座る。
王女は、
静かに椅子へ腰掛けた。
「……あーもう、
疲れちゃった」
「??」
「真面目に王女やると、
肩凝るのよねー」
「???」
「あ、
お姉様方と皆様も楽になさって」
「しかし、
王族の前ですから、
さすがに」
娘が困ったように言う。
しかし剣士は、
「じゃあ」
そう言って、
テーブルへ足を放り上げた。
(コラ!剣士さん!コラ!)
「無礼な!
王女殿下の前であるぞ!」
付き人が怒鳴る。
王女は、
軽く手を上げた。
「良い」
「今この場は無礼講、
敬語も必要ありません」
するとロリ猫が、
「マジで!
話が分かるにゃ!」
(こら!ロリ猫!こら!)
「無礼者!
王女殿下の前であるぞ!」
「良いと言っておる。下がっておれ」
付人は、
部屋の隅へすっと移動した。
(あ、
出てはいかないんだ)
剣士は、
テーブルに足を放り上げたまま言った。
「そっちはそっちの事情があるんだろうけど」
「何にせよ助かった」
(礼を言う態度じゃないなぁ……)
そう思っていると、
「キューティーバルキリーのお姉様方のお役に立てて光栄ですわ!」
「…………にゃ?」
ロリ猫が固まる。
「お忘れになっているかも知れませんが」
「あの日以来、
ずっとお会いしとうございました!」
王女の目が、
異様なほど輝いていた。
しばしの沈黙の後、
ロリ猫が困惑した顔で言う。
「他国の王女ですら虜にしてしまう、
ウチの魅力が怖いにゃ」




