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5-11 外華内実と、権謀術数


翌日。


聴取に行くため起きて来たバルキリー達は、

まだ目も覚めやらぬままでいた。


剣士は椅子に座ったまま寝ている。


ロリ猫は机に突っ伏したまま言う。


「ウチらは夜型だから……ムニャムニャ」


エルフはソファで白目を剥いている。


魔法使いはウサちゃんを抱えたまま動かない。


(こんなの知ったら、ほんとにファンが泣く)


「ってあれ?聖女さんは?」


娘が浴室の方を指差す。


中から水音が聞こえていた。


すると、


「タイチさーん、タイチさーん、


 タオルを持って来てくださいませんかぁ」


「持って入るの忘れちゃったんですぅ」


タイチは娘の肩を叩き、

浴室の方を指差す。


娘が渋々タオルを持って行くと、


「あら、

 タイチさんじゃなかったんですの?」


「タイチじゃなくて悪かったわね!」


「なんか私にだけ当たりがキツくないですかぁ」


「どうしてですかぁ」


とバスタオル一枚で出て来て言う。


「そういうとこよっ!!」


「えー?タイチさんはどう思いますかぁ」


大きな胸を揺らしながら言う。


(……こんなの知られたらファンに殺される)


「チッ」


娘の大きな舌打ちが部屋に響き渡った。


――


一方。


枢密院の一室。


「バルキリーの件はどうなってる?」


「概ね順調に」


「よろしい」


「それでは本題だが、」


机の上には、

大量の書類が積まれていた。


薬草採取記録。


ギルド提出資料。


王都採取場の報告書。


各地ギルドから集められた資料。


男は一枚の紙を見ながら言う。


「ギルド登録後、

 一ヶ月に満たないうちに

 “永世薬草採り名人”の称号を取得」


「しかもその後、

 自身の記録をさらに更新、か」


別の男が口を開く。


「薬草採り名人……

 なんだそれは」


「魔術師ギルドが制定した、

 れっきとした称号です」


「過去には、

 大賢者、

 大魔導、

 大聖女なども取得した記録があります」


「本来は、

 長年の採取実績を持つ者へ送られる栄誉称号ですが」


「この冒険者は、

 二度と塗り替えられないであろう最速記録を打ち立てたとの話」


「しかも数日後には、

 さらに自身の記録を更新」


「王都での薬草採取でも、

 同様の結果を出しています」


男は眉をひそめた。


「たかが薬草採取だろう?」


「問題はそこではありません」


資料を捲りながら続ける。


「王都採取場は、

 群生していない箇所が多い」


「つまり、

 かなりの運が要求されます」


「そして過去の異常幸運持ちの多くが、

 採取系統の最上位称号を取得している」


「これは、

 判断の指針となる大きな要素です」


「その後の調査は」


「危険区域での生存率です」


「ただ、

 まだデータが少ない」


「現時点では断定出来ません」


短い沈黙。


やがて一人が口を開く。


「異常幸運というが、

 そこまで重要なのか?」


部屋の空気が少しだけ変わった。


一人が資料を読み上げる。


「異常幸運持ち、」


「それは類い稀なる幸運の持ち主」


「異常幸運持ちは、

 歴史上、

 国家単位で保護、

 あるいは囲い込みの対象となってきました」


「災害では生存率を上げ、

 戦争では勝敗を分ける」


「何百年も栄えた国家が、

 異常幸運持ちを失った途端に滅びたという話もあります」


「他にも例を挙げれば――」


「もういい、もういい、重要さは分かった」


「問題はどうするかだ」


「元老連中はなんと?」


短い間。


そして。


「軍部の連中に囲われてしまう前に、

 対処しろと」


「軍部の連中が気づいてるのか?」


「分からんが、

 知っていると考えるべきだ」


「枢密院も軍部も、

 同じ国家の組織だろう?」


「国家的には結果は同じだ」


「問題なのは、

 どちらが抱えるかです」


「万一にも向こうに先を越されるようなら、」


「こちらも対処せざるを得まい」


「そうだな」


「自分達の立場を危うくする対立組織に持たれるくらいなら、」


「……」


「…最初から居なかった事にすればいい」


その言葉に、

部屋の空気がさらに冷えた。

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