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5-8 本店と、レストランと


朝。


タイチは、

いつも通り薬草採取へ向かっていた。


今日は、

娘と昼を食べる約束がある。


そのため、

昼前に戻れるように、行きの馬車に待っててもらうように、お願いした。


――


昼前。


採取を終え、

王都へ戻る。


ギルドで薬草を納品し、籠を返却する。


そこへ、

バルキリー付き添いの職員がこちらへやってきた。


「お疲れ様です」


「どうも」


職員は言った。


「黒装束たちは、

 王都の収容所へ移送されました」


「これから本格的に取り調べが始まります」


「バルキリーの皆さんには、

 今日も午後から聴取がありますってお伝えください」


――


宿へ戻る。


すると、

娘とバルキリーたちが、

ちょうど起きてきたところだった。


「お、帰ってきたにゃ」


ロリ猫が欠伸をしながら言う。


タイチは、

ギルドで聞いた話をそのまま伝えた。


「黒装束、

 収容所行きになったって言ってました」


「うわぁ……」


娘が少し引いた顔をする。


「一歩間違えたら、

 ウチらも収容所だったにゃ」


「今日も午後から聴取があるって言ってましたよ」


「いつまで続くんにゃ」


ロリ猫がげんなりした顔で言った。


――


しばらくして、

バルキリーたちはギルドへ向かった。


タイチは娘と一緒に宿を出る。


王都の昼は、

今日も人が多かった。


「そういえば、

 ずっとこっち居るけど学校は大丈夫なの?」


前から少し気になっていたことを聞く。


すると娘は、

少し得意げに笑った。


「あたし、

 今期の学科全部修了してんのよ」


「でも実地研修は未履修だから、

 どうしようかなーって感じ」


――


露店で軽い昼食を買う。


焼き物の香りが漂う中、

適当な席に腰掛けた。


「……増えてる」


「ん?」


「名人パン」


露店の一角。


以前より明らかに数が増えていた。


「名人愛用!」


そんな札までぶら下がっている。


(ほんとにあった)


「猫さんの読みが当たってる」


娘が笑う。


――


食べ終わったあとも、

そのまま商店を見て回った。


王都は歩いているだけでも面白い。


地方では見ないものが、

次々目に入る。


人だかりのある一角にさしかかった。


漂ってくる香辛料の匂い。


「あ」


顔を上げる。


そこにあったのは、

巨大な建物だった。


鳳凰印。


地方で見た店とは、

比べものにならない。


「……でか」


入り口前には、

カフェスペース。


さらに奥には、

高そうな店まで見える。


奥の店は、

明らかに雰囲気が違った。


「アイス食べる?」


気づけば、

周囲にはアイスのようなものを持った人がかなり居た。


「あれ人気なんだ」


「王都名物レベル」


二人でカフェ側に並ぶ。


受け取ったそれは、

完全にアイスクリームだった。


「…………」


冷たい。


甘い。


普通にアイスだ。


(アイスクリームとか……

 やっぱり異世界転生者なのかな)


そんな考えが頭をよぎる。


店内を見る。


服装の良い客ばかりだ。


「あっちは?」


「あー、

 レストラン。


 高いから一回も入ったことない」


「そんな高いんだ」


「普通の学生には無理」


店内は、

地方から買い付けに来た商人たちで、

ごった返していた。


(今は聞ける雰囲気じゃないな)


――


店を出る。


すると、

ちょうど聴取後のバルキリーたちと出くわした。


全員、

かなり疲れた顔をしている。


「終わったにゃ……」


ロリ猫が死んだ目をしていた。


「今日の晩飯、

 鳳凰印のレストランにするか!」


剣士がそう言った。


「え、高いよ?」


娘が即座に反応する。


するとロリ猫は、

ふふんと胸を張った。


「ウチらを誰だと思ってるんにゃ」


「バルキリーにゃ」


(そういや、

 この人たちお金持ってるって言ってたな)


「じゃあ決まりにゃ!」


ロリ猫が指を突き上げる。


「一旦宿に戻って着替えてくるにゃ」


娘は、

レストランの入り口へ向かった。


「予約入れとくね」


「気が利くにゃ」


そう言って、

全員が宿の方へ歩いていく。


――


宿で各々が着替える。


(着替えって言っても同じのしかない)


そう思っていると。


「お待たせ」


娘が先に出てきた。


フリルの付いたドレス姿だった。


(え、着替えってそういうこと?)


すると。


「お待たせにゃ!」


ロリ猫が元気よく出てきた。


見ると、

若干色が違うだけの、

いつもの服だった。


(良かった、同じタイプの人だ)


続いて剣士が出てくる。


やはり色違いの同じ出で立ち。


魔法使い、

エルフもやはり同じ。


聖女だけが、

いつもより胸が開いた同じ服。


「……なんかあたしだけ場違いじゃない?」


娘が自分の格好を見下ろす。


娘は、

いつもの服の色違いに着替え直して戻ってきた。


――


鳳凰印のレストランでは素晴らしく美味しい料理が提供された。


会計時にロリ猫が

「スープが少し冷めてたから値段を下げるにゃ」

とか難癖を付けていて、

見かねたエルフが

「ワシがまとめて払っておくからそのバカを連れて行け」


剣士がロリ猫を担ぎ上げ連れ去っていった。


日も暮れた店の外で、みんなが料理の余韻に浸っているなか、


店の売り場を覗き見る。


店はすでに閉店しており、レストランだけが営業している。


(日を改めるか…)


「タイチ、どうしたにゃ」


「え、いや、なんでもないです」


するとエルフが会計を終えて出てきた。


「それじゃみんなの支払いなんじゃが」


「「「「ご馳走様でーす」」」」


「タイチと娘は奢りとして、」


「「「「ご馳走様でーす」」」」


「一人辺り……」


「「「「ご馳走様でーす」」」」


「おい、お前たち!ちょっ、」


「「「「ご馳走様でーす」」」」


「人の話を…」


「「「「ご馳走様でーす」」」」


「あー!もう分かったわい!」


「さすがにゃ」


「ゴチになる」


「…感謝…」


「エルフさんに女神の加護を」


(なんか申し訳なくなってきたな…)

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