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5-6 商人ギルドと、登録と


翌日。


ギルドに行くと、

送迎馬車は臨時休業で、

薬草採取のクエストも休場だった。


他のクエストを勧められたが、

正直、薬草採取くらいしか出来ないので帰ってきた。


そして、起きてきた娘と一緒に商人ギルドへ向かう事になった。


「味噌と醤油の食べ方の登録だっけ?」


「あと焼きヘンネのマヨもね」


娘は慣れた様子で王都の通りを歩いていく。


朝の王都は相変わらず人が多い。


屋台の煙。


荷車。


客引きの声。


そんな中。


「王都名物の名人パン!安いよー!」


聞き慣れない声が飛び込んできた。


見ると、

屋台でパンに具材を挟んだものを売っている。


「名人パン?」


「今までそんなの聞いたことなかったけど」


娘が不思議そうに言う。


さらに少し歩く。


「こっちは自家製ハム入り名人パンだ!」


「うちのは野菜たっぷり!」


「朝限定名人パンだよー!」


あちこちの屋台で、

同じようなものが売られていた。


(ああ……嫌な予感しかしない)


娘はきょろきょろと屋台を見回している。


「王都って流行る時は一気なのよね」


嫌な予感は増していく。


「へー、ソウナンダ」


「何よその変な喋り方」


――


商人ギルドは、

冒険者ギルドとはまた違う騒がしさだった。


帳簿を抱えた事務系の人。


荷物を運ぶ旅の商人風の人。


怒鳴り声、値段交渉。


建物の中なのに市場のような活気だ。


「登録したい物があるんですけど」


娘が受付へ声をかける。


「はい、商品部門ですか?技術部門ですか?」


「技術部門で――」


娘が渡された紙に書き込んでいく。


「ひとつ目がミソペーストを溶かしたミソスープ。」


「こっちはショーユソースを隠し味に使う、ショーユステーキ」


「あと焼きヘンネとマヨソースを合わせた食べ方です」


受付の女性が味を確認する。


「……承りました」


受付の女性が一枚、一枚書類を確認する


奥から分厚い本を持ってきて、一行ずつチェックしていく


大体問題なく登録出来そうだけど、


「この焼きヘンネのマヨソース掛けなんか今、王都でも人気のやつよね」


「そう!それ!」


娘が得意げに胸を張る。


「ただ……」


受付の女性が困ったように続ける。


「焼きヘンネのマヨソース掛けの方は、

 かなり広まっちゃってるのよね」


「え?」


「王都は揚げヘンネが主流だけど」


「焼きヘンネのマヨソース掛けを出してる店も増えたし」


「独占登録や専売登録は難しいわね」


「遅かった……」


娘が露骨に嫌そうな顔になる。


「それに明らかな証明が無いと」


「証明……」


「焼きヘンネのマヨソース掛けはうちの宿が発祥なんだけど」


「街の場所は?」


「王都から東の」


「それなら商標登録なら可能よ」


「商標?」


「名前を登録するの」


「ただマヨソースの名前は使えないけどね」


「鳳凰印のマヨソースはマヨソースの名前で登録されてるから」


「よそのお店がマヨソースと言う名前で商品を出すには鳳凰印に使用料を払う仕組み」


「え?じゃあマヨソースって名前を使ってる料理はみんな支払ってるの?」


「もちろんみんなが支払ってるわけじゃ無いわ」


「じゃあ、どうするの?」


「鳳凰印から申し立てがあれば、商人ギルドが代行して使用料を徴収するの」


「でも、鳳凰印が申し立てを出した事はないわ」


「どうして?」


「鳳凰印はその分マヨソースが売れるわけだから儲けの方が大きいのよ」


「鳳凰印じゃないマヨソースを使ってたら、それは詐欺だし、被害はあるわね」


「でも、鳳凰印じゃないマヨソースは客にもすぐに分かるし、繁盛しない」


「それだけ鳳凰印のマヨソースが完成されてるってのもあるわね」


「なるほど……」


「ミソスープとショーユステーキは専売登録が出来ると思うけど」


「結局、鳳凰印が権利を持ってるのか」


娘が急に真面目な顔になる。


「焼きヘンネのマヨソース掛け」


「焼きヘンネの白いソース…」


「白焼きヘンネ…」


「白ソースヘンネ…」


考え込む娘に受付の女性が補足する


「ちなみに登録料は年間金貨五枚よ」


「!!」


「え、そんな高いの」


「…無理だわ」


「それなら、鳳凰印の上層部に商品開発のアイディアを提出して、

 採用されれば報酬が得られる可能性はあるわ」


「無理…上層部にツテなんてない…」


八方塞がりの、娘を見ながら


(もし、鳳凰印の人間が転生者ならワンチャン…)


――


結局何も登録せずに商人ギルドを出る。


すると行きよりさらに屋台が増えていた。


「名人パン二つ!」


「うちは特製ソース付き!」


「肉たっぷり名人パンだ!」


「うちの名人パン弁当はスープ付きでお徳だよう!」


「増えてる……」


娘が呆れた顔で周囲を見る。


その時だった。


「よう兄ちゃん!……いや、名人か!」


聞き覚えのある声。


「あ」


スープ付きの名人パン弁当を売っていたのは、


採取場へ昼飯を売りに来ていた男だった。


「名人?タイチが?」


娘が不思議そうな顔をする


「名人の食い方真似して売ってみたらよ、

 バカ売れでな!」


男は豪快に笑う。


「今朝から周りも真似し始めやがってよ!」


そこで娘の視線が、

ゆっくりタイチへ向く。


「……ターイーチー?」


怖くてそっちを見れない。


「あんたまたやらかしたのね!」


「いや僕もこんな事になるとは……」


「さっさと名人パンも登録してきなさい!」


「えぇ!だって金貨五枚だよ?」


「それじゃ、あの男に登録させてきなさいよ!」


「えーー!」

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