5-5 可愛いおじさん達と、枢密院と
昨日は宿に戻るとやっと起きてきた娘が
お腹すいたと言うので食べにまた外に出た
(てか娘はなんでずっと一緒に宿に泊まってるんだろう…)
娘が焼いた玉子とパンを食べる、
昼飯は食べたが一緒に同じものを食べる
お腹が満たされた娘と宿に帰ってくるとさらに疲弊したバルキリーたちが転がっていた
話を聞くと枢密院が出てくるとかなんとか
枢密院が何かわからず薄ら笑いを浮かべて聞いていると
察したエルフが
「枢密院は王家直属の機関でめんどくさい」
と教えてくれた
めんどくさい事は分かった。
――
そんな事を思い出しながら
今日もギルドに向かう
――
ギルドでは
受付嬢と目が合うとすぐに
薬草担当の職員が付く
「さ、こちらです」
と昨日より明らかに丁寧な対応
馬車待合スペースでは昨日とほぼ同じ顔ぶれ
「昨日は見なかったが逃げ出したのかと思った」
「今日はちゃんとやれよ」
と揶揄される
苦笑いしてると職員が
「何言ってるんですあなた達よりも早くそして多く、そして質がいい薬草を持って帰ってきてましたよ」
とフォローする
「あなた達はこの方を知らないでしょうけど、永世薬草採り名人が東の街で出た話は聞いたでしょう」
「「「なにーーーー!!」」」
「まさか、その坊主が、その名人、とか言うんじゃ」
職員は
「そのまさかですよ」
「「「な、なんだってー!!」」」
昨日の温度差と打って変わってのレスポンスを見せる
「まじか、信じられねえ」
「あんな小僧が名人かよ」
「この業界じゃ知らないやつは居ない」
(あ、薬草採り業界とかあるんだ…)
「坊主、すまなかった。みくびってたよ」
「これ昨日の詫びだ」
と売店の果実水を奢ってくれた
(いい人だ)
昨日と違って馬車の中ではいろんな人に話しかけられた
「どうやったら、そんなに採れるんだ?」
「普通にみなさんと同じ感じだと…」
「またまた、そんな訳ないだろ」
「いや、黙々とやってたらいつの間にか…」
「名人ともなると、基礎から違うんじゃねーか?」
(そんな違うところ無いと思うけど)
――
採取場所に到着し
みんなも昨日より意気込んだ感じで散っていった
昨日と同じくらいの場所で、昨日アイテムボックスに入れた残り分を確認する
一日経っていても、特に鮮度が落ちた様子は無かったのでそのまま籠に入れる。
そうしていると昨日より早く終わってしまった
お昼までする事が無いので
久々にステータスの確認をする。
「ステータス」
目の前にステータス画面が流れ込む
「おおお」
最初に見たときも驚いたが
今見てもやっぱり驚く
しかし文字はさっぱり分からない
いや、なんとなく覚えてるものもある
ここは「男」それくらいだった
あとは多分数字の部分
屋台とかで見慣れてきたからだろうか。
隅々まで見渡したが、やっぱりそれくらいだった。
(ちぇっ、
アイテムボックスみたいに全部イラストだったらいいのに…)
アイテムボックスを見ると緑のが一つまだ残っていた。
「ひっ」
ゴブリンの首だった。
以前収納した時、出し忘れていたのだろう
かと言ってここに出すわけにもいかず
そっと画面を閉じた。
――
「昼だぞー!昼飯だぞー、安いよー!」
昨日の男の声がした。
やっと昼かといそいそと屋台に向かう
「おう兄ちゃん、今日も早いな」
「ええ、まあ」
「今日の日替わりは豚と野菜の炒め物だ」
「じゃあそれで」
と銀貨を渡す
「あいよ!毎度あり!」
そう言って皿におかずを盛り付けようとする
「あ、ちょっと待って」
「またパンに挟むので、お皿使わなくていいです」
「そうか、なんか悪いな」
そうやってパンに挟んでもらって
片手に追加のスープを持ち、昼食を取る
しばらくすると、他のみんなが屋台の前に集まった
「俺、名人と同じものを」「俺も」「俺もだ」
次々に同じものを注文する
その様子を見ていると一人が言う
「いつも弁当持ってきてんだけどよ」
「昨日名人が食ってるの見て、今日は持ってきてないんだ」
「俺もだよ」「俺も」
笑いながらみんなが言う
そして昼食をとり終えたみんなはまた散っていった
後片付けしながら男が語りかける
「今日も乗って帰るんだろ?」
「あ、お願いします」
馬車の荷台に乗せてもらって揺られながら王都に向かう
馬の手綱を引きながら男が尋ねる
「兄ちゃん、みんなに名人って呼ばれてたけど…」
「ええ、まあ、成り行きでそうなってしまいました」
「まあ、俺から見ても昼に終わるって事はただもんじゃ無いんだよ」
「はぁ、」
「そりゃそうよ、あの礼儀知らず達が兄ちゃんに一目置いてんだから」
「そうなんですかね」
「それに名人が食べてるのを食べたがるなんてあいつらにも可愛いとこがあるんだな」
「おじさん達ですけどね」
「ははははっ、その通りだな」
「あ、でも、昨日は僕が名人だって知らなかったです」
そんな話をしているうちに王都に着いた
男に軽く礼を言い別れた。
――
ギルドへ戻ると、
ちょうど聞き取り調査を終えたらしいバルキリー達と鉢合わせた。
みんな揃って疲れた顔をしている。
そのまま一緒に宿へ戻る。
――
「あーもう腹立つにゃ!」
宿へ戻るなりロリ猫が机に突っ伏した
「大体あいつらなんであんなに偉そうにゃ」
「まぁ偉い人たちだからなー」
「それに前代未聞だとか細かいにゃ」
「そりゃ前代未聞じゃからな」
エルフが茶をすすりながら言う
「あと、何回も経緯を聞き返してあり得ないとか」
「……あり得ない……から」
魔法使いがぼそりと呟く
「島流しが妥当とか、打首レベルとか、厳しすぎにゃ」
「物が王印ですからねぇ」
聖女が苦笑いしながら返す
「なんにゃなんにゃみんなして!
どっちの味方にゃ!」
「だって、オレらだって」
剣士が言葉を止める
「何回聞いても」
「猫さんを」
「擁護する理由が」
「見つから……ない……」
「にゃ!!」
(僕もみつかりません)




