5-4 王都と、薬草採り名人
今日もバルキリーはギルドに行かなければいけないらしい。
昨日帰ってきた時には、
みんな肩を落とし、
かなり疲れた顔をしてうなだれていた。
聴取を免れた剣士は疲れた顔のみんなを笑っていたが
今日もあると聞いた途端、
同じく肩を落とし、
一気にしょぼくれた顔になっていた
どうやら王都側の聴取は、
一回話して終わりではないようだ。
まだ起きてこないみんなを横目に、
(さて、どうするかな)
王都観光でもしてみようかと思ったが、
宿の娘もまだ起きてこないので、
静かに宿を出る。
商売の準備を始める店や、
店に食材を届ける荷車。
そんなのを見ながら通りを歩いていくと
自然と、ギルドの前に着いていた
――
ギルドでも早朝からのクエストが多いのか
すでに賑やかだった
まあ、出来ることも特に無いので
薬草採取に行く事にする。
「薬草採取ですか?」
「はい」
「ええと……王都の採取地は、
送迎馬車制になっていますので」
「送迎?」
「ええ、少し採取地まで距離があるので」
「朝に出発して、
夕方に戻る形ですね」
そう言いながら、
受付嬢が札を渡してくる。
どうやらクエスト受領証のようなものらしい。
「念の為、ギルドプレートの提示を」
首から下げたプレートを見せる
「確認しました。では、あちらへ」
案内された先には、
すでに数人の冒険者が集まっていた。
自分の籠を持った者、
水筒を確認している者、
座り込んでいる者。
みんな、
第一線の冒険者と言う感じはなく、
どこかくたびれていた
(王都でも薬草採取はこんな感じなんだな)
薬草採取の担当だろうか、
別のギルドの職員が
「籠の貸し出しもありますがどうされますか?」
「あ、借ります」
「それでは籠の大きさはどうされます?」
「どんな大きさがあるんですか?」
「大、中、あと魔法印の刻まれた魔法籠がありますが…」
「魔法籠ってなんなんですか?」
その質問に集まってる冒険者が笑う
「魔法籠知らないとかド素人かよ」
職員も少し困った顔をして
「魔法籠は大の籠の三つ分、中の四つ分の容量があります」
(そんなのがあるんだ!さすが都会!)
「魔法籠でお願いします!」
「分かりました、魔法籠の貸し出しは一日、銀貨三枚になりますがよろしいですか?」
(うん。大の籠の三つ分なら、そんなに高くない)
職員が蓋のついた皮のリュックサックを持ってくる
籠よりコンパクトで、動きやすい
(これいいな)
しばらくすると、
馬車乗り場へ移動が始まった
みんなの後についていく
乗り込むと馬車が動き出す。
街を抜け、
しばらく進んだ先で止まった。
「帰りは夕方だ!
遅れるなよー!」
御者が声を張る。
冒険者たちが、
慣れた様子で森へ散っていった。
タイチもその後を追う。
――
薬草自体は、
地方とそこまで変わらない。
むしろ、
管理されている分、
踏み荒らされていない気もした。
(取りやすいな)
黙々と採取していく。
しかし、籠と違っていちいち蓋の開け閉めをしないと、いけない
ふと、思いつく
(アイテムボックスに収納してから後で籠に入れたらいいんじゃね?)
薬草に触れるとシュッと消える
(あ、これは楽だわ)
シュッシュッと収納していく
場所を変え、シュッシュッと収納する
また場所を変え収納する
一息ついてアイテムボックスを確認する
「ひっ」
アイテムボックスが薬草で緑一面になっていた
とりあえず、アイテムボックスからカゴに移す
アイテムボックスの半分もいかないうちに、籠はいっぱいになった。
(意外と入らないんだな)
空を見上げる。
まだ昼少し前くらいだろうか
周囲を見ても、
まだ戻っている人はいない。
(どうしよう)
夕方まで待つのも暇だ。
そう思っていた時だった。
「昼飯だよー、うまくて安い昼飯だよー」
後ろの方から声が飛ぶ。
声のする方へ向かうと
簡易的な屋台馬車のようなものが停まっていた。
「昼飯買うかい?」
どうやら、
採取地へ昼食を売りに来ているらしい。
「日替わりは銀貨二枚、スープ付きなら追加で銀貨一枚だ」
「日替わりとスープを」
銀貨を三枚渡す
「はいよ!まいどあり!」
渡されたのは揚げヘンネ二個とパン、そして野菜の入ったスープ
「マヨソースつけるかい?」
「お願いします」
パンを指で開いて揚げヘンネを挟んで食べる
「兄ちゃんは面白い食い方するんだな」
すると、しばらくしてゾロゾロ他の冒険者たちも集まる
「スープをくれ」
スープのみの注文が多い
各々、弁当を持参しているようだった
何人かがこっちを指差し店の男に
「あいつが食ってるのくれ」
日替わりを頼んでいた。
そして、昼食も終わり、冒険者たちはまたそれぞれ散っていく
後片付けをする男に
「これ、街まで戻ります?」
「ん?ここが最後だからな
今から戻るが」
「乗せてもらえたりします?」
男は一瞬きょとんとした後、
タイチの籠を見る。
「別に構わんが……もう帰るのか?」
「はい、終わったので」
「いやいやいや」
男は苦笑いした。
「ここで商売して長いが、
こんなの初めてだよ」
「そうなんですか?」
「普通は夕方までみんなやってるよ」
そう言われても、
終わったものは終わった。
「兄ちゃんが目の前で食ってたからいつもより売れたし」
「まあ、荷台の空いてるとこに好きに乗ってけ」
「ありがとうございます」
荷台へ乗り込む。
馬車がゆっくりと王都へ向かい始めた。
揺れる景色をぼんやり眺める。
一面に広がるのは小麦畑だろうか
(王都でも、
のどかな景色はあるんだな)
そんな事を考えながら、
タイチは小さく欠伸をした。
――
街に入って降ろしてもらい、
男に軽く礼を言ってギルドに戻る
ギルドでは朝の受付をした職員がタイチを見て駆け寄ってくる
「どうしたんです、まさか馬車に乗り遅れたんですか?」
「いえ、行ってきました」
「え!じゃあなぜ?」
「終わりました」
「えー!?」
魔法籠を差し出す
「一応確認させてもらいますね」
籠を持って奥に入る
しばらくして戻ってくる
「規定量も品質も問題ありませんでした」
そのまま報酬受け取りのカウンターに誘導される
「それではお支払いしますのでギルドプレートをお預かりします」
手渡したプレートをカウンターの中の箱の上に置く
「え!あなたが永世薬草採り名人だったんですか!」
その声に周囲がざわめく
が、それほど注目されなかった。
「そうは言っても薬草採りだからなぁ」
(そうは言っても薬草採りなんですよね)




