4-7 商人と、ビジネスチャンス
馬車はゆっくりと街道を進んでいた。
揺れにも慣れてきた頃、
前の方から何やら賑やかな声が聞こえてくる。
「ちょっと止めてもらえるかの」
御者が手綱を引き、馬車が止まる。
外を見ると、小さな屋台が並んでいた。
「こういうところで意外な掘り出し物が見つかったりするんじゃ」
エルフが嬉しそうに降りていく。
商人のキャラバン隊の一角らしい。
簡易的な造りだが、人はそこそこ集まっている。
「腹減ったにゃ」
ロリ猫も馬車から飛び降りる。
「さっき食ったばっかだろ」
剣士が呆れたように言うが、
そのまま後に続く。
流れで全員が降りる。
娘は並んでる沢山の商品に目を輝かせていた。
「こういうのもあるんですね!」
「道中の行商みたいなもんじゃな」
エルフが軽く説明する。
適当に店を見て回る。
衣類や雑貨、干し肉、見たことのない食べ物もある。
その中で、一つの屋台に目が止まる。
白いソースのかかった串焼き。
見覚えのある見た目。
「焼きヘンネのマヨソース掛けにゃ」
ロリ猫が迷いなく手に取る。
「ご存じでしたか、今ここいらで大流行りの味付けなんですがね」
「もちろんにゃ!しかもこれは鳳凰印にゃ!」
「さすがですね、お客さん!そこまで分かって頂けるとは!」
「うちの店は親父の親父、そのまた前の代から鳳凰印使ってますからね」
(そんな前からあるのか)
「やっぱり鳳凰印は違うにゃ?」
「マヨソースも色んなとこが出してるけど、元祖の鳳凰印が一番美味い」
店主が言う。
「この味付けは王都でも流行りますよ」
その時、横を通り過ぎていく荷車が目に入る。
幌付きの荷台には、同じ白いソースの瓶が積まれていた。
「……あれもマヨソースにゃ?」
ロリ猫が目を細める。
「あいつも同業ですよ」
荷車の男が声を張り上げる。
「王都直送!マヨソースだ!焼きヘンネにどうだ!」
「昨日仕入れたばっかだぞ!」
店主に聞けば、焼きヘンネにマヨソースをかける食べ方を、
この先の街の宿屋が始めたらしい。
それが大層美味いと評判で、
街の食べ物屋がこぞってマヨソースの注文を出した。
と、こう言う事らしい。
(この先の街の宿って、もしかして)
「もう広まってるの!?」
娘が思わず声を上げる。
(あれだけマヨソースをかき集めたら、そりゃそうなるよな)
「……ビジネスチャンスを逃したにゃ」
ロリ猫がぼそっと言う。
少しの沈黙。
「……商人ギルドに登録しとけばよかったにゃ」
「あっ、そうか!」
娘が何かに気付いた顔をする。
――
「商人ギルドってなんなんですか?」
エルフに問いかける。
「商人ギルドは、冒険者ギルド、魔術師ギルドと並ぶ三大ギルドの一つじゃ」
(魔術師ギルド……称号くれたとこか)
「登録ってのは?」
「商品を開発した時に、その商品を登録しておくことが出来るんじゃ」
「そうすると、その商品は登録した者の財産として扱われ、同じ商品を売りたい商人は使用料を登録者に払わないと売れない仕組みじゃな」
「なるほど、発明した人を守る仕組みなんですね」
「ちなみに鳳凰印は、マヨソースを発明した時に商人ギルドがまだ無くて、紛い物が横行したんじゃ」
「え?じゃあどうしたんですか?」
「鳳凰印が儲けた金で商人ギルドを作ったんじゃ」
「以降は鳳凰印に金を払わんとマヨソースを売ることは出来んようになった」
「なるほどなぁ」
「鳳凰印の創始者はなかなかの切れ者よ」
「それって焼きヘンネにマヨソースをかける食べ方とかの、食べ方でも登録出来るんですか?」
「基本なんでも登録出来るぞ、もちろん商人ギルドが納得する内容じゃなきゃダメじゃが、」
「焼きヘンネのマヨソース掛けは革命的な食べ方じゃから、審査もすんなり通ってたじゃろうな」
それを聞いて二人のがっかり具合にも、納得がいった。
――
「うちの宿が元祖になれてたのに……」
「今さら言っても遅いにゃ」
その様子を見ながら、
焼き上がったものをもう一口かじる。
(確かによく合うもんな、これ)
「もういいにゃ」
ロリ猫が残念そうに言う。
「さっさと行くぞ」
剣士が声をかける。
再び馬車に戻る。
何事もなかったように、馬車は進み出した。
――
揺れの中で、さっきの光景を思い出す。
すると、また別の幌付き馬車とすれ違う。
「にゃ!?またマヨソース積んでたにゃ!」
「商人たちは儲け話となると動きが早いからな」
流行り物っていうのは、
こうやって広がっていくんだなと思っていると、
またもや二人が、
「あー、好きな物を好きなだけ買える生活が、」
「ビッグマネーの匂いがぷんぷんしてたにゃ」
「「はあぁ……」」
ちっとも諦めきれてない二人を見ながら、ふと思う。
(……ってか、ロリ猫は関係ないんじゃないか?)




