4-6 移動と、温度差と
朝。
「ーーーーーーーー!!」
なんだかよく分からない、変な鳥の声で目が覚める。
しばらくこの変な鳥の声も聞けなくなる。
身支度をして、一階に降りる。
「おはようございます」
「おはよう、娘はまだ起きてないけど、起こしてこようか?」
「あ、いえ、先にギルドに行ってくるんで」
軽く朝食をとり、ギルドに向かう。
「え!今日も薬草採取行くんですか?」
「ええ、しばらく離れるので採れるだけ採ってきます」
「採り尽くさないようにお願いします」
受付嬢は笑いながら言う。
――
山盛りの籠二つを見て、
「採り尽くして無いですよね?」
「奥の方に行ったんで多分他の人には迷惑かからないと思いますけど」
――
宿に戻ってきた。
娘はまだ降りてきてない。
「呼んでくるよ」
女将が階段を上がる。
「昨日の晩、遅くまで準備してたみたいだからね、勘弁してやっておくれ」
「大丈夫ですよ」
程なくして、
旅行ケース三つを重そうに持った娘が降りてきた。
(何がそんなに入ってるんだ)
娘に一つ持たされて、待ち合わせ場所の表門へ向かう。
「バルキリーのお姉様たちを待たせるなんて…」
娘は旅行ケース二つを抱えながら言う。
「多分大丈夫」
表門に着くと誰も居ない。
ほらね。
案の定来てない。
エルフが現れる。
「すまん寝坊した」
「おはようございます」
まだ眠そうな聖女が現れた。
(昨日、真っ先に寝てたよね?)
魔法使いも現れ、獣人二人も遅れて歩いてくる。
ロリ猫の「ウチは夜型だから…」といつもの言葉を聞き、全員が揃う。
それにしてもみんな軽装だ。
剣士は剣を携えているものの、目立ってそれ以外の荷物は持ってないように見える。
「お姉様たちは荷物は無いんですか?」
娘が不思議そうに問うと
「ああ、全部預けてある」
「こいつに」
と魔法使いを指差す。
「お前の荷物も預けとくといい」
剣士がそう言いながら、魔法使いに目配せすると
魔法使いは娘の荷物をシュッと収納した。
(なるほど、ほんと便利だな収納魔法)
「すごーい」
感激する娘。
しばらくして、門の前に一台の幌馬車が到着する。
「それじゃ出発するにゃ!」
(…あれ?僕ほんとにいらないんじゃないか?)
――
王都へ向かう馬車の中。
「バルキリーの皆さんとご一緒できるなんて感激です!」
宿の娘は目を輝かせていた。
王都の学校では魔術を学んでいるらしく、
魔法使いやエルフ、聖女と話し込んでいる。
「あれってどういう原理なんですか?」
「…収納魔法は…誰でも出来る…」
「へえ〜!すごい!」
「誰でも出来るんじゃがの、位置固定が難しくて習得しとる者は少ないんじゃ」
エルフが補足する。
「へえ〜!全然わかんな〜い!」
聖女も話に加わり
「わたしも習得しようとしましたけど、無理でした」
「魔力の多さで収納できる量も変わるんじゃ」
「普通の人間なら財布一つくらいで精一杯じゃろうな」
「こやつ程魔力の多いやつはそうおらん」
狭い車内でも、自然と座る場所で空気は分かれる。
娘は前側でバルキリーと盛り上がり、
後ろ側では獣人の二人と向かい合って座っていた。
車輪の揺れに合わせて、会話もゆっくり流れる。
――
「なんで首輪にしたんでしょうね」
「普段から首輪してるからだろうな」
「オレらの氏族はみんな首輪してるからな」
「考えたやつは頭がいい」
「こいつは気配に敏感だし逃げ足も早い」
剣士が横ですやすやと眠るロリ猫を指差して言う。
「本気で逃げるこいつを捕まえられるやつはいねーだろうよ」
「首輪にしといたら失くす心配もねーしな」
「でもそれがかえって仇になってしまったと」
「そう言うことだな」
「まったく笑えねーな」
「氏族はみんな首輪をしてるって言ったけど」
「でも剣士さん首輪して無いですよね」
「してるよ」
「これだ」
髪をかき上げて片目の眼帯を見せる
(あ、これ首輪だったんだ、でもなんだろう?違和感が)
「あの、こんなこと聞いていいのかわかんないんですけど」
「剣士さんてその目はどうして」
「あーこれな」
「若い頃に自分の強さに慢心して、」
「死角からの攻撃に気づかずやられちまった」
「それ以来、自分への戒めとして首輪を眼帯代わりにしてんだ」
(そうだったんだ…)
「おいおいなんでタイチがしんみりしてんだよ」
「気にすることはねえ」
「オレはそれ以来一度も負けてねーからな」
――
前の方では、まだ楽しそうな声が続いている。
「それって王都でも習えるんですか?」
「習える…と思う…」
「え、魔法使いさんはうちの卒業生なんですか!」
「わたしもですよぅ」
「…ワシもじゃ」
「「「え?」」」
……なんというか。
打首の危機で緊張している旅のはずなんだけどな。




