4-5 首輪と、打首と
ギルドに呼ばれ、奥の部屋へ通される。
中にはギルドマスターと受付嬢、
それに見慣れない職員が数人いた。
空気が少し重い。
ギルドマスターが腕を組んだまま、口を開く。
「この間の件だが」
「あの黒ずくめの連中を、ギルドで取り調べた」
「だが、分かったことは少ない」
「どうにも的を得ん」
エルフが言う。
「連中は末端じゃな」
「自分たちが何をやっているのか、分かっておらんのじゃろう」
「ただ指示されたことをやってるだけじゃな」
職員の一人が資料をめくる。
「……宗教じみたことも言ってたな」
「“皆の幸福が”だとか、“解放される”だとか」
「要領を得ない話ばかりでした」
「金で動いてる様子も薄い」
「だが、統率は取れている」
エルフが静かに言う。
「すっきりせんのう」
どれも推測の域を出ない。
だが、誰かが何かを企んでいる。
それだけは確実だった。
話はまとまらない。
――
すると、ギルドマスターが重々しく口を開く。
「こっからが今日の本題なんだが…」
「お前ら、王印持ってないか?」
「は?」
「王印?」
(オーイン…てなんだろう…)
「王が本人の意思や正当な権威を証明するために用いる印鑑の事ですね」
受付嬢が補足する。
「そんなのオレらが持ってるわけねーだろ。」
「何かの間違いじゃねーか?」
「大体オレらがそんなの預かる事がありえん。」
「なあ」
と剣士がロリ猫を見る。
「無いにゃ」
と即答で答える。
「それに王族の護衛任務はオレらだけじゃなかったし」
「確かに複数のパーティーが合同で受けたんじゃったな」
「そうにゃ!ウチらだけじゃなかっ…」
何かに気づいたロリ猫が、言葉を止める。
そして首に手をやる。
そのまま首につけた首輪を恐る恐る外して差し出す。
「きっと…これにゃ…」
「「「「「「はあ!?」」」」」」
留め具のような部分を開くと、細やかな金細工の施された印鑑のようなものが入っている。
「あああ、持ってやがった。」
ギルドマスターが机に突っ伏し、頭を抱える。
「何で持ってるんですか!?」
「あの時、誰かが即位したかなんかで王族が地方に巡遊したにゃ…」
「ああ、その王族の護衛だったな」
「その時、王剣とか神器とかみんなで分けて持ったにゃ」
「神器とか権力の象徴は一つにまとめて運ばずに分散して運ぶとか聞いた事があるな」
と、ギルマスが頭を抱えながら言う。
「盗難対策じゃな」
とエルフが付け加える。
「ウチはその時、この首輪を渡されたにゃ」
「何を渡されたか、よく聞いてなかったから、王印が入ってるとは知らなかったにゃ」
「まじかよ!なんでちゃんと中身を聞いとかねーんだよ」
剣士がロリ猫に詰める。
「ウチは悪く無いにゃ」
「ウチの首にジャストフィットしてしまったこの首輪が悪いにゃ」
(いや、間違いなく聞いてなかった猫さんが悪い)
ギルマスは頭を抱えたまま、
「至急、王都にこれを返してこい」
タイチが眉をひそめる。
「返さないとどうなるんですか?」
一瞬だけ間が空く。
「打首かにゃ」
ロリ猫が軽く言う。
「打首って?」
「打首は打首にゃ」
「こう頭と体が首からぽーんっと」
ヘラヘラと笑いながら、手で首の辺りをスパッとやる。
「え!え?冗談でしょ?」
「冗談ではない」
ギルドマスターが低く言う。
「そのジャストフィットした首が本当に飛ぶぞ」
(え、マジで?)
「お気に入りの首輪が着けれなくなるにゃ」
(そう言う問題なのか?)
「返したとしても打首になる可能性も考えられる」
「王印を横領したと見なされてもおかしくないからな」
「それヤバいじゃないですか」
「返しても打首になるなら、いっその事返さず逃げるのも一つの手にゃ」
「「「「「返しましょう!!」」」」」
「冗談にゃ」
(軽い…軽すぎる)
「まあいいにゃ」
ロリ猫が立ち上がる。
「一人の責任はみんなの責任!行くなら行くにゃ!」
(あんたが言うな!)
話はそこで終わった。
――
宿に戻り、その話をすると
「え、うそっ、ホントに!?」
宿の娘が身を乗り出す。
「それっていつ?」
「明日朝には出発すると思う」
「え?それならあたしも一緒に」
「あんた帰るのもうちょい先じゃなかったかい?」
「バルキリーのお姉様とご一緒できるなら明日帰る」
「まったくこの子は…」
「王都に着いたらあたしが案内してあげる」
「美味しい店とかいっぱい知ってるんだから」
「待って待ってとりあえず向こうに聞いてみないと」
「じゃあすぐ聞いて!」
「え?今から?」
「そうよ」
宿の娘に急かされ、急遽バルキリーの宿へ向かう。
夜も遅めだったので、心配だったが、
普段から夜型と言っていただけあって、問題なく部屋に案内される。
全然みんな起きていた。
…いや、聖女だけはもう就寝してた。
「こんな夜遅くになんにゃ、まさか夜這いにゃ?」
(…夜這いってなんだ?)
なんか聞いたらめんどくさそうな気がしたのでスルーして、事情を説明する。
「いいにゃ」
「えっ、いいんですか!?」
「ついでにゃ」
(ついでって……)
こうして、娘ともども王都行きが決まった。




