4-1 後処理と、ギルマスと
街のあちこちでは、まだ後処理が続いていた
壊れた建物の補修
負傷者の手当て
魔獣の死骸の回収
それでも、街の空気はどこか落ち着きを取り戻している
――
タイチはベッドの上にいた
全身が重い
動こうとすると、どこかが軋むような感覚が走る
原因は分かっていた
無理をした反動だ
痛む体と裏腹に
病室ではバルキリーの面々が、いつも通り好き勝手に振る舞っている
「ここはワシの場所じゃ」
「いやそこは私の場所です!」
「…ここは我の陣地、」
(いや、僕のベッドだけど、)
「うるせぇ!ベッドの上で暴れんな!」
剣士がベッドの上に腰掛けながら言う
「そうにゃ!ここはみんなの場所では無いにゃ!」
珍しくロリ猫がまともなことを言う
かと思いきや
「ここはウチの場所にゃー!!」
とベッドにダイブする
(……人の病室で、何やってんだこの人たちは)
とてもさっきまで命のやり取りをしていたとは思えない
そんな空気の中
扉が開いた
ギルマスが入ってくる
「よう、世話になったな」
そう言って、バルキリーの方を見る
「森の外の魔獣のほとんどを片付けてくれて助かった」
「ウチらは駆け抜けただけにゃ」
「ああ、ほとんどは聖女が片付けた」
「聖女が?」
ギルマスの眉がピクリと動く
「まさか魔獣以外も灰にしてないだろうな」
「ウチらが後ろから見てた限り大丈夫にゃ」
「…多分にゃ」
「まぁあれだけの騒ぎだ、巻き込まれたやつが居たとしたら、そいつは運がなかったんだろうよ」
とさらに剣士が輪をかけて不安を煽る
「おいおい勘弁してくれよ」
頭を抱えるギルマスに受付嬢が口添えする
「大丈夫です。名簿と照らし合わせた結果、死者、不明者はいませんでした」
「そうか、なら良いんだが」
「あれだけの数の魔獣が押し寄せて、これは奇跡に近いです」
「ウチの指示通りにゃ」
聖女がロリ猫に言い返す
「違います、女神様の加護です」
「にゃ?女神の加護は予定してたにゃ」
「今思いついた事言わないでください」
「にゃ?計算してたにゃ!」
言い合いを始めるロリ猫と聖女を無視して
ギルマスが口を開く
「で、今回のスタンピードだが――」
するとまた剣士が口を挟む
「あれがスタンピードだって?笑わせるな」
「どういう事だ」
「机仕事ばっかで勘が鈍ったんじゃねーか?ギルマスさんよ」
「うむ、スタンピードにしては数が少ない」
エルフも同調する
「あれはスタンピードじゃなかったと?」
「魔獣の動きが一直線過ぎる」
「それと、何か操られてる気配もあった」
魔法使いも会話に入る
「微かだが、意図的な魔力が森の中に残留してた」
(やっぱりこの人たちすごい…)
「その情報はかなりありがたい」
「こっちは街中の魔獣を撃退するのに必死でそこまで手が回らなかったからな」
ギルマスは街中で、魔獣の残党を相手に剣を振るっていたらしい
久しく戦闘に出てなかったので
運動不足解消だとか言っていた
ギルマスは雑な立ち回りで
豪快に魔獣を薙ぎ払いながらも
取りこぼしを
受付嬢が仕留めていたらしい
受付嬢は元凄腕の冒険者だったとか
そうは見えない
普段の穏やかな対応からは想像もつかない
エルフがボソッと呟く
「あやつは人族に見えるがハーフエルフだから騙されるなよ」
(…人の心が読めるんだろうか)
その言葉に、周囲が一瞬だけ静かになる
「あなたにだけは言われたくありませんね」
受付嬢が反論する
すると今度はみんながエルフに注目する
エルフは、しまったという顔をして目を逸らす
(確かにエルフさんの年齢の方が気になるな)
魔法使いがこっそりタイチに言う
「我が魔法学校初等部に入学した時からあの見た目だからな」
つまり、あの二人は見た目通りではない、ということらしい
初等部ってことは小学生くらいだろうか
でも、
魔法使いも若そうな見た目だが
何歳なのかわからない
と考えていると
「我はあの二人と違って年相応だぞ」
(ここの人たちは人の心が読めるのか?)
「聞こえてますよ」「聞こえとるぞ」
魔法使いは、ふひゅーふひゅーと鳴らない口笛で誤魔化した




