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3-9 壊滅と、三つの月


別の日。


再び森に入ることになった。


森の異変の調査は、まだ続いていた。


何やら謎の一味のアジトに踏み込んだらしく


黒ずくめの集団に囲まれた


――が、


謎の集団は


相手が悪名高いヘルバルキリーだったこともあって


どっちが悪者なのか分からないレベルで


あっという間に壊滅した。



エルフがアジトの調査を行い、街に戻り解散となった。


――


宿で夕食を食べ、部屋に戻る。


前の通話から、

毎晩夜空を確認するようになった。


窓から空を確認する。


空には、月が三つ並んでいた。



スマホを確認する。


タダシからメッセージが届いている。


[これが届いたら連絡してくれ]


画面をタップする。


呼び出し音が一度だけ鳴った。


「おう、お疲れ、今日の月は?」


「月が三つ」


「そうか、三つってことはお祭りか?一年経ったのか?」


「てかまだ一年も経ってねーよ」


「…そうか、…でどうだ?」


「前に言ってた、強い冒険者のパーティーに加入することになった」


「おお、いよいよ異世界感が出てきたな」


「女ばっかの中に、俺一人で浮いてるよ」


「女ばっかの中に一人?ハーレムじゃねーか!?」


「いや、なんかそんな感じじゃないし」


「まったくお前ってやつは…」


タダシが電話口の向こうで何かブツブツ言っている。


「…それでさ、ゴブリンがさ、あっという間に――」


「ゴブリン!テンプレだな!もっと聞かせてくれ!」


手短にゴブリン討伐の話をする。


「そんで聖女が――」「聖女が!?」


「うん、服が――」「服が!?」


なんかタダシの食いつきがすごい


(この話はしない方がよさそう)


「いや、まあ、前と同じで灰に」


「ふーん、まあいいや」


少し間が空く。


「あの後考えてみたんだが」


「意識的に使うスキルも急に発動するスキルも」


「実は時間は止まってないと思う」


「発動中に物がゆっくり動いてたんだろ?」


「うん、動いてた」


「どっちなのかは分からんがタイチのスキルは」


「周りの物の時間の流れを遅くしてるんだと思う」


「それなら、気絶するのも説明が付くんだ」


「どう言うこと?」


「分子レベルの話になるんだが、」


「待って!ムリ、ムリ、無理!」


タイチが急に叫ぶ。


「…あー、じゃあもっと雑に言う」


「スキル使ってない普通の時あるだろ?」


「その時も自分の周りには空気がまとわりついてんだよ」


「でも普通に動けるのはそのまとわりついてんのを掻き分けてるんだよ」


「普段は全然わからないレベルだから掻き分けてるって感覚もないけどな」


「それが時間が遅くなるにつれ空気の粘性度も上がるんだよ」


「ネンセイド?」


「うーん、まとわりついてるやつの粘り気と言うか」


「水とか!空気より少し強くなったイメージが水の中」


「水はまとわりついてるけどプールとか水中で歩けるだろ?」


「でも歩きにくいな」


「そう!水だと動き重くなるだろ?」


「その水が、そうだな、たこ焼きの溶き粉とか」


「お好み焼きじゃだめか?」


「どっちでもいいよ想像しやすい方で」


「とにかくそのお好み焼きの溶いたやつは空気や水よりもっとまとわりついてくるんだ」


「あー肌触りが気持ち悪い」


「肌触りの想像とかどうでもいいんだよ」


「スキルを使うと、普段の空気もお好み焼きの溶き粉、いやもっと硬いんだろうな」


「ゼリーとか豆腐とか、」


「分かりやすいのはコンクリートとかだな、最初は液状だけど固まるだろ」


「あれの中にいるイメージ」


「コンクリートの中に入ったことねーよ」


「それならお好み焼きだってそうだろ!」


「あるんだよそれが」


「ある…のか」


「ちっちゃい頃になじいちゃんの道場でお祭りやったんだよ」


「その時に出てたお好み焼きの屋台のでっかいバケツに…」


「いやもういい!話続けさせてくれ」


話が戻る


「…で、コンクリートの話な、それがどんどん重く硬くなっていくとどうなる」


「動けなくなる。」


「ってか実際動けないし」


「空気がそんなふうに硬く感じられようになるってことは」


「ってことは?」


「息も出来なくなる」


「なんで?」


「空気は勝手に吸えるだろ、水はちょっと意識するだろ」


「お好み焼きの溶き粉だと」


「飲み込むのに苦労しそう!」


「そして、コンクリートなんか固まったら石だろ」


「…飲み込めないな」


「そうだ、正確には息が吸い込めない」


「それで…気絶してるってことか?」


「気絶だけならいいが、最悪…」


タダシは言葉を詰まらせる。


「今の状態だと、あれは危なすぎる」


「だから使うな」


「分かった」


「だから恥も外聞も捨てて守ってもらえ」


「分かった守ってもらう」


「前衛で戦うのは禁止」


「大丈夫だよ俺のポジション荷物持ちだし」


「!!」


「荷物持ち…なのか…」


――


「あとさ、異世界で稼ぐ方法考えてたんだけど」


「なになに?」


「薬草採り名人になってから少し増えたけど」


「まだまだ余裕はないから助かるよ」


「薬草採り名人?なんだそれ」


「なんかなっちゃったんだよ」


「まぁそれは置いといて、稼ぐ方法だが」


「うん、教えてくれ」


「マヨネーズだよ」


「マヨネーズ作って流行らせるってのがラノベのテンプレであった」


「ある」


「え?」


「もうあった」


「そうか、あるのか、なんかごめん」


「気にすることねーよ」


「俺タダシと会話出来るだけでホント救われてるんだから」


一瞬、向こうが黙る。


「それを言うなら…」


と、タダシは言葉を詰まらせる。


――


「そろそろだ」


「ん?」


「多分そろそろ通話が切れる」


「前の三つの月の時の通話時間がそろそろ近い」


「まじかーちゃんと覚えてんのか」


「一応、な」


「今分かってることは」


「二つの月よりも三つの月の方が通話時間が長い」


「おお、そんなことまで」


「じゃあ三つの月の時は嬉しさが倍増だな」


「…そうだな、俺もだよ」


「タダシが居ないと俺、生きてけねーよ」


「ああ、死ぬんじゃねーぞ」


「分かった」


そこで通話は切れた。

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