2-10 報告と、皮肉と
ホントに予定通りだったのかは分からないが
オークの死骸が、目の前に積み上がっているのは現実だ
さっきまで窮地に立たされていたのが
嘘みたいだった。
彼女たちが噂のヘルバルキリーなんだろうか
圧倒的だった。
でも、
(……なんか、思ってたのと違う)
そんな感覚が、残った。
――
その後、
一緒にギルドに戻ることになった。
帰りの道中で
指示役だった猫型の獣人が口を開く。
「少年のおかげでオークの発見に繋がったにゃ」
片目に眼帯をした犬型の獣人が口を挟む。
「こいつの指示で進むと何度も森の入り口に戻されて弱っていた」
「でも少年の声のおかげで場所が分かったからチャラにゃ」
(そんな迷うもんかな…)
「報酬の半分は少年にあげてもいいくらいの気分にゃ」
(気分…)
ギルドに到着し
タイチは一階に残り、
バルキリーたちは上へ上がっていった。
――
ギルドの二階。
ギルドマスターに、指示役の猫型の獣人が言う。
「今回の討伐は以上だにゃ」
エルフが言う。
「楽勝だった」
犬型の獣人が言う。
「あー、まだ群れとしても小さかった」
軽い調子で報告が始まる。
ギルドの中庭には、オークの死骸が運び込まれていた。
そのほとんどが、
原形を留めていなかった。
受付嬢が言う。
「あれは……使えませんね」
「燃やしすぎたかにゃ」
犬型の獣人が言う。
「しょうがないだろ、数が多かったんだ」
魔法使いが言う。
「討伐優先」
ギルドマスターが言う。
「調査の方は?」
「まだ分からないにゃ」
会話は淡々と進む。
被害の確認も、原因の特定も、
どこか軽い。
話を逸らすように猫型の獣人が言う。
「そんなことより」
空気が変わる。
「最近のギルドはどうなってるにゃ」
受付嬢が言う。
「……と、言いますと?」
犬型の獣人が言う。
「あんな危ないとこで
薬草採取させてんのか」
ギルドの空気が、わずかに張り詰めた。
受付嬢が言う。
「事前に地図は渡しています」
「そういう問題じゃないにゃ」
エルフが言う。
「危険区域に人を流してる」
聖女が言う。
「現に私たちが居なければあの子は」
「……」
受付嬢は一瞬だけ言葉を止める。
受付嬢が言う。
「区域の設定は適切です」
「行くかどうかは自己判断です」
犬型の獣人が言う。
「自己判断?」
「自己判断で、
あんな場所に居るとか、教育が足りてないんじゃないか?」
魔法使いが言う。
「安全に関する再教育が必要かも」
噛み合わない。
会話は続くが、
結論には届かない。
ただ、
ズレだけが、
その場に残っていた。




