2-3 月と、会話と
夜。
空に、月が二つ並んでいた。
(……二つ)
この前とは違う。
(二つの時もあるんだ…)
少しだけ不思議に思いながら、
そのまま空を見上げる。
(そうだ、スマホは?)
スマホを取り出す。
直後。
スマホが震えだす。
画面に、通知が表示される。
タダシから、
メッセージが届いています。
[これが届いたら電話してくれ]
通話ボタンを押す。
コール音。
……少し間があって、
「……もしもし」
「お、繋がったのか」
少しだけノイズ混じりの声。
この前よりは不安定だが、
確かに繋がっている。
「どうだよ異世界は?」
「こっちの世界、月が三つあってさ」
「こないだ話した時は三つだったんだけど、今日は二つ出てる」
「月が一つの時は?」
「気にしてなかったけど、多分圏外」
「……そうか」
「いや、それも気になるけどさ。異世界生活の方はどうよ」
「薬草採り、向いてるかも」
「は?」
簡単に説明する。
「お前それ、もう天職じゃねーか」
笑い混じりの声。
「でさ、なんか最近オークが増えてきたとかなんとか」
「オークか、やっぱ異世界なんだな」
「あと、なんかそれ絡みで強い冒険者が帰って来てるとか」
「おおー、どんな感じなの?強そう?かっこいい?」
「まだ、出会ってはないんだけど」
「そうか、他には?」
「そうそう、森で切り付けられてさ」
「は?」
「スキルが発動して」
「は??」
「そっち先言えよ!!」
一気に声が大きくなる。
「いや、ごめん、忘れてた」
「ホントにおまえってやつは、で?」
ノイズが少し混じる。
「勝手に発動することもあるっぽい」
「何か条件があるのかも」
タダシの声色が変わる。
「何かトリガーが…」
「状況か?いや…」
こうなると、タダシはだいたい長い。
いつものことなので、気にせず話を続ける。
「で、気づいたら膝枕されてて」
一瞬の沈黙。
「……は?」
「ひーざーまーくーらーだー?」
「お前――」
タダシが言いかけて、
一瞬だけ詰まる。
「……いや、なんでもない」
少しだけ声が落ちる。
「で、怪我は?」
「あー、ちょっと切れたけど」
「薬草貼ってたら治った」
「そのまま?」
「うん」
「でも、ホントはすり潰して塗るんだってさ。」
「ゲームだと一瞬だけど、ホントは――」
ノイズが強くなる。
「ちょっ――」
声が途切れる。
「……タダシ?」
ザーッという音。
「やばい、マジ電波悪い!」
さらにノイズ。
「タイチ!――」
「――死ぬなよ!」
「――ああ」
聞こえたかどうかは分からない。
そのまま、通話は切れた。
――
空を見上げる。
月は一つになっていた。
静かな夜だった。




