2-1 ツングルスクと、騒がしいギルド
宿の朝。
朝食をとりながら、女将の話を聞く。
「女将さん、ツングルスクって結局なんなんですか?」
「ツングルスクのお祭りってのはね、
年に一度の祭りなんだよ」
「大ツングルスクって呼ばれててね」
「その日は三つの月が、
綺麗に揃うんだよ」
「あんたの故郷はやってなかったのかい?」
(故郷は三つもなかったし)
「ツングルスクの三姉妹のおとぎ話くらいは聞いたことあるだろ?」
(無いけど、そのまま、笑顔で聞く)
――
昔、仲の良い三姉妹が居て
ある日大喧嘩して
怒った神様が
三人を月にしてバラバラに空に放り投げ
年に一度しか会えなくした
――
「へーーなんか織姫と彦星みたい」
「お前さん知ってるじゃないか
大姉月はウルズ、豊穣の女神、織姫様の事さね」
「へーーーなんか偶然!!」
一通り聞き終えて、席を立つ。
――
ギルドの扉を開けた瞬間、
いつもより少しだけ騒がしい空気が流れてきた。
冒険者たちの声は抑えられているが、
あちこちで同じ話題が繰り返されている。
オークが増えている。
その言葉だけが、
断片的に耳に入る。
受付嬢と職員が少しピリついた空気なのが感じ取れる。
(……なんか、いつもと違うな)
ただ、それがどれくらいの話なのかは分からない。
(オークって、あれだよな、ゲームとかでよく出てくる。)
でも、
最低ランクの冒険者には縁遠い話だ。
そんな事を考えながら、
受付の前に立つと、
「よっ!永世薬草採り名人!」
と、冷やかしが飛んでくる。
軽く手を振って受け流す。
最近、こう言った絡みが多くなった。
冷やかされるのはいい気はしないが
だいぶここに馴染んできたって感じもする
いつも通り依頼を受けて、
いつも通り森に向かう。
日常は続く。




