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11-6 万一の備えと、お前次第


「さすがですわ」


 王女が身を乗り出す。


「いや、よく分かってなかったですけど」


「エルフさんの言う小石を意識したら出来ました」


「おいおい、ワシが説明したのはお前の動きなんじゃぞ」


「ええ、でも、そんなふうに意識したこと無かったので」


「お前は変わっとるのう」


「でも、エルフさんのおかげで何か一つわかった気がします」


 王女は護身術の先生に、


「あれを取り入れることはできまして?」


「あそこまで洗練された動きは難しいですが」


「理屈は理解いたしました」


「ケセモッサの道場の方たちにもご協力を」


 師範は道場生に目配せする。


 何人かの獣人が護身術の先生の前に出る。


「道場の皆さんもよろしくお願いします」


「じゃあ皆さんやってみましょう」


 女性たちに声を掛ける。


 道場生が掴み役で女性たちと練習する。


 まずは掴まれないように逃げる練習。


「ひゃっ」


「掴まれちゃいましたわ」


「もう一度お願いできますか?」


「なんでこっちに来るんですか」


 女性たちはきゃっきゃと逃げ回る。


「やれやれお遊戯だな」


 剣士が呟く。


 ひと通り繰り返したところで、休憩が挟まれることになった。


 女性たちが水を口にする中、


 王女は付人に、


「そろそろ本気で掴み掛かってらっしゃい」


「し、しかし王女様、そろそろ休憩を」


「本気でやってもらわなければ練習になりませんわ」


「それとも」


「わたくしに万一があった時になすすべもなく襲われろと?」


「いえ、そんな滅相もございません」


 そんなやりとりをしていた。


(こっちはこっちで本気すぎる)


 練習の様子を見ていた剣士は、


 振り返りもせずタイチに話しかける。


「お前のそれなんだが、本当は攻撃もできるんだろ?」


「……なんでそう思うんですか?」


「いや、まあ、お前からジジイの方が強いとかの話を聞いてて」


「攻撃の型はあるんだろうなって思っただけ」


(さすがだな)


「なんでお前が攻撃しないのかは知らんが」


「守りだけじゃダメな時もこの先出てくるぞ」


「どういうことですか?」


「自分は守れても、守りたいものは守れない」


 するとタイチは絞るような声で、


「僕は怖いんです」


「僕は人を傷つけるのが怖い」


「僕は人を傷つけたくない」


 剣士はその言葉に淡々と答える。


「綺麗事で人が守れるんなら別にそれでいいと思う」


「でも、怖いんです」


「僕は一度、大切な友達を傷つけてしまった」


「それ以来それが頭から離れなくて、怖くて動けないんです」


「そうか、」


「でも一つだけ言っておく」


「大事な時に動かなければ」


「その大切な友達は誰かに傷つけられてしまうことになるかもしれない」


「それは、」


 言葉に詰まる。


「僕に、出来るんでしょうか?」


「分からん」


「それはお前次第だからな」


 突き放すような言葉を突きつける。


「だが、付き合って日は浅いが、」


「お前はここぞと言う時に動ける男だと思っているがな」


そう話しながら、視界の片隅では付人が王女に投げ飛ばされていた。


 ――


 学校の進路指導室。


「話は耳に入っておるよ」


「バルキリーと行動を共にしておるんじゃな」


「あとは、王女の事業にも参加しておるのも聞いておる」


「え、あたしは事業はバルキリーのおまけみたいなもんで」


「向こうはおまけと思ってないんじゃないか」


「なんで?」


「学校宛てに書状が来ておる」


「学業と国の事業が被って欠席した場合、出席扱いにするようにとな」


「まあ、君は学科の課程は終了しておるから関係ないんじゃが」


「残っとる実地研修が無理そうなら、休学しても構わんよ」


「その実地研修なんですけど……」


「……」


「なるほどのう」


「それが認められるかは職員会議で話し合うとしよう」


 そうして娘が進路指導室を出てくると聖女と魔法使いが居た。


「なんであんた達がここに?」


「……我、ここの卒業生」


「わたしもですよぅ」


「そう言えばそんな事言ってたわね」


「で、何してるの」


「……ん、調べ物しに図書室に」


「例の黒装束のぉ、福音派のぉ」


「そんなのエルフに聞けばいいじゃない」


「……エルフは……どこかで聞いた、」


「……それ以上思い出してない」


「確かにそれよく言ってるわね」


 三人で笑う。


「あたしはよく分かんないからこっちに居るね」


 そう言って歴史の絵巻を手に取り広げる。


 白虎朱雀大戦。


「この白い虎があのロリ猫やお姉様の祖先なのよね」


「へぇ白虎朱雀大戦ってちょうど世界滅亡の危機と時期が被ってるんだ」


「まさかこの大戦が世界滅亡の危機だったわけ?」


ずっと独り言を言う娘に、


「……違う、この時たまたま世界滅亡の危機と白虎朱雀大戦が重なった」


「それって踏んだり蹴ったりじゃない」


「まあ、当時の人は大変だったんじゃないかとぉ」


「あたし、世界滅亡の危機ってよく知らないんだけど」


「何があったの?」


「…我もよく知らん」


「どういうことで世界滅亡の危機になって」


「どうやって解決したのかもわからないんですよねぇ」


「旧約の黙示録に書かれている世界の終わりと言う人もいますしぃ」


「解決したのは女神さまのおかげだなんてのも言われてますけどぉ」


「どれが本当の話なのか分からないんですよねぇ」


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