11-2 昼飯と、焚き付けと
宿のシェフに、意見を聞かれ、
トゥンジルのコツと言うか、好みを話す。
「先に具材を炒めるといいかも」
「あと、煮崩れしにくい根菜はおすすめです」
「あ、アクを取るのも忘れずに」
シェフはタイチの一言一言を、書き留める。
(他になんかあったっけ……)
――
翌朝、薬草採取に向かう。
今日はイベントのお礼を言うため、昼を取ってから帰ることにした。
薬草採取のおっさんたちと軽く言葉を交わしていると、
昼飯の屋台の男がやってくる。
「昼飯だよー、うまくて安い昼飯だよー」
「ひとつ下さい」
「今日は焼きヘンネのマヨソースだよ!名人パンにするかい?」
「あ、それで、あとスープも」
「あいよ!」
焼きヘンネの名人パンを渡される。
そして、スープを注ぎながら。
「スープはトゥンジルに、するかい?」
「あ、トゥンジルで」
豚バラ野菜スープに、その場で味噌を溶かして出してくれる。
簡単トゥンジル。
「最初は先にミソペースト入れて持ってきてたんだけどな」
「なんか運んでくるうちに風味が飛んじゃってる気がしてな」
「それでその場で入れる事にしたんだよ」
男が説明する。
(あ、味噌を二回に分けて入れるってのもあったな)
「トゥンジル初めてだけど結構いけるな」
「これだけでおかずになるんじゃないか?」
おっさんたちは初めてのトゥンジルに声を上げる。
そして薬草採取のおっさんたちと昼食を囲む。
不人気クエスト、子供が受けられるクエストについて聞いてみる。
「名人、ほんとに薬草採取しかしたことないのか」
「教えてやるよ、まず街の清掃があるな」
「街の清掃、これは一日でやる量は決まってないけど」
「ひと区画で十人くらいを目安にやってるな」
「王都は広くて一日で終わらないから、たくさんの班で何日もかけて全部の区画をやるんだが」
「一応清掃の頻度は週一なんだが、多分人手が足りてなくて追いついてない」
「ドブさらいは月一の頻度で、これもひと区画ずつ」
「これも一ヶ月以上かかってて、追いついてないと思うな」
「読み書きできる子なんかは、商店で接客とかもする」
「計算ができる子は売り子もしてる」
「あとは薬草採取とかの素材集めだな」
「危険度の低い害獣や、害虫の駆除なんてのもあるな」
考えたら、子供だけのクエストって簡単なものとは言え、危ないよな。
この前の集落の件を話す。
「あー、だいたい元冒険者とかお年寄りとかが」
「危ないところに行ってないか」
「数が足りているか確認する」
「そういう世話役が付いてんだよ」
(なるほど、東の街はあの老人か)
「王都の薬草採取は馬車移動だから」
「あまり子どもは来ないな」
「来てても親子で来るとかだな」
「集落とかになると、正規に受注してないだろうから、」
「子供たちだけのところもあるだろうな」
「なるほど」
「報酬は?」
「大人と同じ量こなせるなら大人と一緒だ」
「大体は半分の仕事量で見積もって半額渡してる事が多いな」
「それと、子供たちも二人一組、三人一組で来て一人分貰うってこともやってる」
「この辺りは受ける時にそう申告してると思う」
「こんな事聞いて、どうしたんだ?」
「いえ、東の街でね…」
「絵札を買えない子供が居て……」
「その子達も絵札を手に入れれるように……」
「不人気クエストにスタンプカードを……」
「……なんてのを考えてたんです」
「名人、なんてこと考えてるんだ」
「みな生活に手一杯で娯楽なんて二の次なのに、」
「確かに裕福じゃない子供たちには絵札は高いな」
「そうか、娯楽があるから頑張れるってのもあるな」
おっさんたちは口々に言う。
「これはもしかすると」
「俺のいとこで引きこもってるやつも仕事をするんじゃ無いか」
「確かに、うちの甥っ子の中にも仕事もせずに、絵札集めるのに必死になってるのが居るな」
「今、そうやって親のスネかじってる奴らが多いからな」
「そいつらもその制度だと働くんじゃないか?」
「……でも、そういう提案出しても実際に始まるまで」
「何年もかかりそうだな」
「違ぇねえ」
おっさんたちは苦笑いする。
「いえ、王女にはもう伝えてあって」
「近いうちに始まるかもって……」
「おいおい、アンバサダーってのはそんなに力があるのかよ」
「薬草採取の報酬、もうちょっと上げてって頼んでくんねーかな」
「バカ言ってんなよ」
「名人の優しさに心打たれたから、すぐに決まったんだろ」
「それもそうか」
おっさんたちはまた大笑いする。
――
武器商人の屋敷。
「えーい、忌々しい」
机を叩き、声を荒げる。
「今度は不人気クエストに補助を出すらしいですよ」
側近が伝える。
「新事業にばっかり金を使いおって」
「国が強くなければ、他国に食い散らかされるぞ」
「あの肝っ玉の小さい軍部の連中はちっとも役に立たん」
怒りのままに、不満を口にする。
「木を見て森を見ない、王女様にも困ったものですな」
側近が穏やかに相槌を打つ。
「それで例の件どうなってる?」
武器商人が側近に問う。
「下町の義侠団を気取るゴロツキ集団を」
「ちょっと焚き付けたら、その気になってましたよ」
「大丈夫なんだろうな?」
「ゴロツキと言っても義侠団。義侠団と言ってもゴロツキ。」
「この件にはピッタリかと」




