10-10 あみだくじの行方と、少しだけ集中
朝。
商人宅での朝食の席。
デザートに出されたプディングがとても美味しく、
「もう一個食べたいにゃ」
ロリ猫がそう言うと、
「もう、卑しい事言わないの!」
すぐに娘が嗜める。
「私も食べたいー」
と孫娘も言いだした。
「もう、真似しちゃったじゃない」
娘が呆れていると、
「とは言えこのプディングが美味かったのは間違いないがの」
エルフもそう言う。
すると、商人の息子が笑いながら、
「キッチンにまだあるか聞いてみましょう」
すぐに給仕に確認する。
戻ってきた給仕が、
「おひとつならご用意出来ます」
「だそうですよ」
商人の息子が言う。
「一つだけにゃー」
するとロリ猫が閃く。
「昨日のやつやるにゃ!」
察した魔法使いがすぐに、昨日のくじを取り出す。
「やるにゃ」
するとエルフが止める。
「待て待て、そのままじゃと昨日と結果は同じじゃろ」
「じゃあ、適当に横線を足したら結果が変わりますよ」
また、各々が横線を追加していく。
「孫娘もやるにゃ?」
「やるーー!」
「この場合は縦線を一本増やしたら良いのかのう?」
「それでいけると思います。多分」
「じゃあやるにゃ、当たってもハズレても恨みっこなしにゃ」
そう言ってロリ猫が口ずさむ。
「ジャンジャカジャカジャカ」
「ジャンジャカジャカジャカ」
「ジャンジャカジャカジャカジャーン」
――
結果は、孫娘が当たりに行き着いた。
「むー、ハズレたにゃ」
落ち込むロリ猫に、孫娘が、
「猫のお姉ちゃまに半分あげる」
と、プディングを半分もらった。
「こんな小さな子に気を遣わせてどうするんじゃ」
エルフが呆れる。
その様子を、見ていた商人の息子が尋ねる。
「それはなんなんですか?」
「あみだくじにゃ!」
「あみだくじとは?」
問われたロリ猫がチラリとタイチを見る。
「あ、はい、えっと、これはくじ引きですね」
「ほう……」
「くじ引きと言われて思いつくのは、」
「当たりやハズレを書いた木札や紙をたくさん用意して箱の中に入れて一枚取る」
「そんなイメージでしたが」
「これは一枚だけしか使わないのですね」
「やってみるのが手っ取り早いにゃ」
ロリ猫が紙を差し出し、
「好きなところを選ぶにゃ」
商人の息子が一つの線を指差す。
「おっけー、そこで決定にゃ?」
言われるがまま、商人の息子が頷く。
ロリ猫は指差された線を指でなぞっていく。
「ジャンジャカジャカジャカ」
「ジャンジャカジャカジャカ」
「ジャンジャカジャカジャカジャーン」
ロリ猫が口ずさむ。
「その歌は?」
「運命にゃ!このくじのテーマソングにゃ!」
「なるほど、運命という歌なのですね、とても良い歌だ」
そして線の行き着いた先は、ハズレだった。
「残念ハズレにゃ」
「ハズレでしたか」
商人の息子は笑う。
「これは線の数は自由に決めれるのですか?」
「にゃ、それは……」
ロリ猫はまたチラリとタイチを見る。
「あ、自由だと思います」
「参加者の数や、賞品の数なんかで増やしたり減らしたり出来ると思います」
商人の息子は、紙の上のすべての線を何回もなぞる。
「これは横線の数も好きに設定していいのですか?」
「いいと思います」
「少なければすぐに決まるし、多ければ時間がかかってワクワクします」
「なるほど……」
商人の息子は、何やら考え込む様子を見せる。
――
朝食を終え、身支度を整える。
「大変お世話になりました」
「いえいえ、またいつでもお立ち寄りください」
「お姉ちゃまたちまた来てねー」
孫娘が手を振る。
商人一家に見送られ、王都への道を再開する。
――
道中の休憩地で、剣士が声をかけてくる。
「タイチ、組手やらないか」
「今ですか?」
「嫌なことがあった時は体を動かすのが一番だからな」
(嫌なことした本人が言うことじゃないと思う……)
しかし、剣士なりの気遣いに乗ることにする。
「こないだはかなり油断してたからな、今回は最初から本気で行くぞ」
「でも勝ったじゃないですか」
「バカ言え、あれはギリギリ勝ったんだ」
「今日は圧勝する」
そう言うや剣士が突っ込んでくる。
(やば、速い)
ギリギリで見極めて、かわす。
振り向きざまにまた速攻で突っ込んでくる。
かわす。
剣士の速攻は止まらない。
(なんだよ、体動かすとか言いながら戦いたいだけじゃないか)
少し腹が立ったので、少しだけ集中する。
(ここ!)
懐に入る。
「おっと、やばいやばい」
剣士はすぐに体勢を入れ替える。
(ここ!)
また懐に入る。
「おいおい」
「前より早くなってねーか」
何度かそんなやりとりが続く、
そしてついに剣士の身体を完全に捉えた。
(今!)
「やばっ、まじか!」
投げられそうになった瞬間。
剣士の身体は赤くなり、毛が逆立った。
完全に捉えたはずの剣士の身体は、さらに速度を増し、タイチの間合いから逃げ延びた。
(完全に捉えたと思ったのに…)
そして、そのままあっという間に組み伏せられた。
「やっぱ、剣士さんには敵わないな」
組み伏せられたまま、タイチが参ったをする。
「ま、まあな、しかし、タイチがあと少し早かったら勝てなかったな」
勝ち口上を述べる。
そして、休憩も終わり、また馬車が動き出す。
ロリ猫が剣士にこっそり言う。
「あんな、追い詰められた剣聖を見たのは何年振りかにゃ」
「ああ、マジでヤバかった……」
そして、呟く。
「タイチ、あいつマジでなんなの?怖いんだけど」




