10-8 噂話の続きと、ライオンと
そのまま、商人宅での雑談は続く。
「そういえば、転送の魔法陣に使われる魔石が近頃買い占められているとかで」
「ほう」
転送の魔法陣のワードにエルフが反応する。
「王都や多方面から在庫がないかと問い合わせが来てまして」
「ふむ、あとでその問い合わせしてきた者達のリストを見せてもらえたりせんかのう」
「残念ながら顧客の個人情報はお教えできません」
商人の息子は穏やかに断りを入れる。
「まあそりゃそうじゃな」
「もしかすると調査関連で特権を使うかもしれんので、その時は頼むぞ……」
「ええ、きちんとした手順を踏んで頂ければ問題ありませんよ」
話はそのまま、別の話題へ移っていく。
しばらくして、息子がまた思い出したように言う。
「軍に武器を卸してる商人が、卸しの数が落ち込んで困っているとか聞きましたね」
「今期の注文が来る前に、大量発注していたらしく大変だとか」
「ご存知のように今王都は新事業にご執心でしょう?」
「なるほど軍備の予算が削られているんじゃな」
「あちらを立てればこちらが立たず、どこにでもある話じゃのう」
話題は、また別の世間話へ移っていった。
ひとしきり話した後、寝室へ案内される。
部屋はゲストルームというには豪華で広々としていた。元貴族の妻のセンスが随所に見受けられる。
風呂も併設されており、ロリ猫は
「ウチが一番風呂にゃー!!」
とその場に服を脱ぎ散らかしながら駆け込んで行った。
娘は内装をチェックしだす。
「いい仕事してるわねぇ」
「この調度品もなかなか――」
「豪華なのにいやらしさを感じさせない絶妙な――」
なんだか分からないが、分かる人には分かるのだろう。
すると、真っ先に風呂に入っていたロリ猫が、
すっぽんぽんで出てきて言う。
「これすごいにゃ!」
「あんた、何か隠すとかしなさいよ」
娘がロリ猫を嗜めている横で、
「どれですかぁ」
と聖女がその場で服を脱ぎ出す。
「あんたもよ!」
「どうせ脱ぐんだから、一緒じゃないですかぁ」
「だから!中で脱ぎなさい!」
とりあえず、見ないようにする。
「何がすごいんだよ」
剣士がそう言うと、
娘にタオルを巻きつけられたロリ猫が、
「ライオンの口から湯が出てるんにゃ!」
「はあ?そんなのうちにもあるじゃねーか」
(???)
「違うんにゃ!とにかく見るにゃ」
必死に説明するが、ちっとも剣士に伝わらない。
「わかったよ見に行くからちょっと待ってろ」
おもむろに服を脱ぎ出す。
「ああ、お姉さままでそんな…」
娘がモジモジする。
(嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか)
「おお、こりゃすごい!」
「タイチ!来てみろ!」
突如、矛先がこちらに向いた。
「今はいいです」
「なんだよ、いいから来てみろよ」
背中を向けてソファーに座っているタイチを、
後ろからむんずと掴み、抱え上げる。
「あ、ちょっと!」
「あ!ほら!服が濡れちゃうから!」
必死に抵抗すると、
「それもそうか」
と手を止める。
ホッとしたのも束の間。
「じゃあ」
「裸なら問題ないな」
「え!?」
必死の抵抗も虚しく、服を剥ぎ取られる。
「あっーーー!」
――
確かに風呂はライオンの口から湯が出ていた。
しかし、ここのライオンは、
温泉にあるような顔だけのライオンで無く、
体全部があるライオンだった。
そしてなす術もなく、
そのまま流れ作業のように、
体を洗われ、今に至る。
「な!すごかっただろ?」
「すごかった、すごかったですけど…」
抜け殻のように項垂れるタイチ。
「なんか、あんたが可哀想に見えてきたわ」
娘が慰める。
「見えてきたんじゃなくて、"可哀想"なんだよ…」
項垂れたまま、呟く。
そして商人宅の夜はふけてゆく。
お風呂のライオンイメージ
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