10-5 大人気と、謙虚さと
朝、薬草採取に向かう支度をしていると、
娘が起きてきて、ついてくると言い出した。
そうして二人で歩きながら話す。
「そういえば、昨日の晩居なかったね」
「うん、お母さんとちょっと話してた」
そんな話をしているうちに、森の入り口に着く。
いつもの老人と子どもたちの姿があった。
「お兄ちゃんおはよう」
「おはよう」
「お姉ちゃんもおはよう」
「お、おはよう」
「お兄ちゃん聞いて!昨日僕一人で籠をいっぱいにしたんだよ!」
「お、すごいね!きっと上手に採れるようになったんだね」
「お兄ちゃんみたいにたくさん採れるようにって頑張ったんだ!」
「だからお兄ちゃんのおかげ!ありがとう!」
「違う違う、それは自分が頑張ったからだよ」
「ううん、お兄ちゃんのおかげなの!」
「私はもうちょっとで子ども用の籠がいっぱいに出来そう!」
「子ども用がいっぱいに出来るようになったら次は大人用だね」
「私も早く魔法の籠を使えるようになりたいな」
「それならたくさん頑張らないとだね」
「うん!!」
「ふぉっふぉっ」
「儂も最近たくさん採れるようになってきてのう」
「名人の御守りのおかげかのう」
「違いますって、みんなが頑張ってるからですよ」
「いやいや、みんなが頑張れるのは名人がおるからじゃよ」
「ここのみんなは名人がいる事で頑張れるんじゃ」
「なんか恥ずかしいです」
「そういう謙虚なとこも好かれる理由じゃろ」
また老人は笑う。
そう言って、老人はまた採取を続ける。
それを見ながら、森の奥へ向かう。
「何よ、あんた大人気じゃない」
歩きながら、娘が振り返ってそう言った。
「やっぱり僕が絵札になったのが影響してるのかな」
「いーや、絶対それだけじゃないと思うな」
「そうなのかなあ」
そして、そこから少し奥に入ったところで採取を始める。
黙々と採取に勤しんでいると、
その様子をじっと見ていた娘が、
「初めて見たけど……」
「あんたのその速さ、異常よ」
「みんなそう言うんだけど、自分ではいまいち分かんないんだよね」
「素人のあたしが見てもそう思うんだから」
「多分速いんだと思う」
「そりゃ名人の称号貰うわけよ」
「そうなのかな」
すると、娘は、
「あんたはちゃんと世間に認められてていいなあ」
「あたしはまだ全然だわ」
物憂げに言う。
「突然どうしたの」
「別になんてこともないんだけど」
「うん」
「まだ先の話だけど、進路とかも考えなきゃいけなくて」
「色々大変そうだね」
「色々大変なのよ」
苦笑いしながら答える。
娘が、ふと話題を変える。
「そういや昨日二階に上がったら、お姉様たち気まずそうにしてたけど」
「そっちはそっちでなんかあったの?」
「いや、ちょっと…」
「ほら、人には聞いといて自分は言わないわけ?」
「そ、そういうわけじゃないけど…」
「早く、言いなさいよ」
昨晩の、魔法が使えないくだりからの、
タイチの良いところの話をする。
「なんだ、そんな事で」
「だって、だいぶ一緒にいるのにそれだけなんだよ?」
「言葉にするのが必要なわけ?」
「必要ってわけじゃないけど、もうちょっとこう、なんか、あるかなって」
「そんなの別にいいじゃない」
「え、どうして?」
「バルキリーのお姉様たちがあんたを連れ回してるってことが、答えじゃない」
「なんで?」
「普通は気に入らない人や興味ない人と一緒に行動しないでしょ」
「確かに…気に入られてるのかな?」
「どう考えたって気に入られてるでしょ」
「普通は荷物持ちとかは一仕事毎の契約で、終わったらそこでバイバイだもん」
(確かにバイバイはされてない…)
「それに、あたしがバルキリーのお姉様たちにお近づきになれたのだって、あんたのおかげだし」
「見えないとこで、いいところがあんのよ」
そう言ってくれて、少し気が楽になった。
「あたしには全然見えてないけどね」
(結局、見えてないんじゃないか…)




