10-3 堂々巡りと、小さじ一杯
しばらく、ギルドマスターと話していると
受付嬢とエルフが来た。
「ギルマスはここじゃと聞いてな」
「俺に用があるって事は、例の?」
「うむ、調査の結果じゃな」
「どうする?場所変えるか?」
エルフが周囲を見回し、
「いや、ここで問題ないじゃろう」
ギルドマスターが受付嬢に、
「すまんが茶を入れてくれんか?」
「仕事サボってこんなところに居る人に入れるお茶は無いです!」
「まあ、そう言うなよ」
「もう!」
受付嬢が渋々お茶を持ってくる。
修練場の休憩スペースに座り、
お茶をすすりながらエルフが話しだす。
「で、何か新しい情報が?」
「そうじゃな、今回の調査ではっきりしたのは」
「奴らは周囲の魔素から魔力を集めておるな」
「以前の施設では魔力を集めてる形跡はあったが、機械は持ち出されておった」
「今回の施設では以前のより大型のもので持ち出せなかったようじゃな」
「確実になったのはまずそれじゃな」
「なんのために?」
「分からんが、あちこちで見つかっておる施設の役割は魔力を集めて蓄積し、」
「どこか他の場所に転送しておる」
「そう断定する理由は」
「魔力を蓄積するシステムが無いんじゃ」
「それだけ持ち出したとか?」
「それは無いじゃろう」
「機械に対して集まる魔力は比例する」
「あれほどの機械じゃと集める魔力も相当量じゃろう」
「それほどの魔力を集めるスペースが無いんじゃ」
「持ち出されておる機械の大きさから考えて」
「集めた魔力を転送する装置と言うところじゃな」
「転送装置があれば、どこに送っておるのか分かるんじゃが」
「流石に、そこまで甘くはないのう」
ギルドマスターはお茶を一口すすり、
「わかった事が増えると、分からない事が増える」
「堂々巡りだな」
――
エルフから報告を受けたのち、
ギルドマスターは、
「じゃあまた仕事に戻るわ」
「おう、ギルマスありがとな」
ギルドマスターが修練場を後にしようとした時、
「ドーーーーーーーン」
と周囲をつんざく轟音が響く。
音のした方向を一斉に見る。
粉々の木っ端微塵になった木人形。
呆然と立ち尽くす、魔法使い。
そして、娘と聖女がひっくり返っていた。
慌ててエルフが駆け寄り、二人を介抱する。
「エルフさんも治癒魔法使えるんですね」
タイチがそう聞くと、
「まあ、初級程度じゃがな」
立ち尽くす魔法使いに、
「魔法使いぃ手前ぇ」
ギルドマスターが睨む。
「違う…我…違う…」
「何が違うんだ!」
「我…違う…」
一向に的を得ないので、聖女と娘の回復を待って話を聞く。
話はこうだった。
聖女が娘に魔力の制御を教えていたところ、
「あたし、魔力小出しにするの向いてないかも」
と娘が言うので、初級の火球の作り方を教えた。
すると、火球を出そうとすると今度は勢いが弱く、手の中で消えてしまう。
なので魔法使いが大きい炎をイメージすると教えたところ、
手の中でどんどん火球が大きくなり、慌てて手を離したら、爆発した。
とこう言う事らしい。
「ふむ、娘は魔力を錬成するのに長けておるのかもしれんの」
エルフがそう言い説明を続ける。
「普通は、この魔法にはこのくらいと無意識に魔力の錬成をして、」
「その魔法にちょうどいい魔力を使うんじゃが」
「一度魔法を生成してしまうとそこから魔力を注ぎ足したり、減らすのは難しいんじゃ」
「話を聞く限り、娘は生成した魔法を維持しながら魔力を注ぎ足したようじゃし」
「修練を積めば、良い魔法使いになるかもしれんな」
そのエルフの言葉にギルドマスターが、
「おい、お嬢ちゃんギルドに登録しねえか?」
突然の提案に、
「あ、でもあたし実家を継ぐかもなので」
と言葉を濁す。
「そうか、実家は宿を営んでるんだったな」
「まあ、親御さんとじっくり話して決めてくれりゃあいい」
そう言い残してギルドマスターは修練場を後にする。
そして、ふと思ったことを口にする。
「魔法使いさんて、その錬成?はしてないんですか?」
すると、魔法使いはゴニョゴニョと口ごもる。
エルフが代わりに答える。
「前にも言ったようにこやつは、自身の膨大な魔力の制御が下手くそじゃ」
「まあ、多すぎるあまり細かい調整が難しいんじゃが」
「制御とか調整ってそんなに難しいもんなんですか?」
純粋な疑問をぶつける。
「そりゃあくまで普通の魔力量でやる分には難しくないじゃろう」
「出せる量は皆大体同じくらいじゃからな」
説明をしてくれたがまだいまいちピンとこない。
そんな顔をしていると、さらに説明をしてくれた。
「そうじゃなあ…」
「普通の人のこのくらいっていう魔力量が小さじ一杯とすると、」
「こやつは馬鹿デカいスプーンに小さじ一杯の魔力を出さなきゃならないんじゃ」
「これが調整じゃな」
「そして、普通の人が小さい瓶から魔力をゆっくり出すのに対して」
「こやつの場合は激しい滝壺のような勢いの魔力をゆっくり出さねばならん」
「これが制御じゃ」
「普通の人が小さい瓶から小さじに一杯分を溜めるのに対して」
「こやつの場合は激しい滝壺の下で大きなスプーンを抱えて小さじ一杯分だけを溜めねばならんのじゃな」
「調整し、制御して、且つ錬成を行う」
「出来ると思うか?」
(あー、魔法使いさんには出来なさそう)




