10-1 提案と、仰々しさと、動揺と
翌朝、薬草採取に向かう。
今日も王女は当然のようについてくる。
必然的に剣姫も一緒に行動する。
森の入り口では、いつもの老人や子どもたちが採取をしていて、
軽く会話をしてから、奥に入る。
王女とタイチは薬草採取を、
剣姫は少し離れたところで剣を振る。
王女と並んで採取をしながら、
昨晩のタダシの提案を口にする。
「聞いてほしいことがあるんですけど」
「なんですの?」
「絵札の値段下げるの難しいって話でしたけど」
「それでも、なんかこう、子どもたちも手に入れやすくならないかと」
言いながら、自分でもうまく言えていない気がしてくる。
「子どもたちが絵札を手にする別の手段を用意したい、ということですの?」
「あ、はい、そんな感じです」
「簡単なクエスト、薬草採取とか、なんか、そういうのに、」
「参加したらご褒美がもらえるようにとか」
「……達成したクエストの実績に応じて、
金銭を介さず絵札を得られる制度、ということですの?」
「いや、どっちかと言うと参加賞みたいな感じですね」
「ただ、他の人がやりたがらない安い報酬の簡単なクエスト限定で、」
「大体、そういうのって子どもたちや一線を退いた人がやってると思うんですよ」
「確かに、一定のランクに達すると冒険者は討伐クエストをメインに活動しますものね」
「それで、その簡単なクエストを受注すると、」
「スタンプみたいなの、押してもらえて、」
「一定の数が貯まったら、絵札と交換できたりしたら、とか、」
「なるほど、あえて不人気クエストに限定して、ポイントをつけると言うことですのね?」
「そう!そう言うことです!」
王女は手を止め、しばらく考え込む。
「実は、王都も似たような問題がありますのよ」
「不人気な低ランククエストは、誰もやりたがらず、
人手が慢性的に足りておりませんの」
「それで、別で人を雇ってその低ランククエストを消化してますの」
そこまで言ってから、王女はハッとした顔をする。
「別で人を雇うのに比べれば絵札の方が…」
「絵札という対価があれば、積極的に取り組んでもらえる」
「なるほど……採用するかは別として、少し考えさせてくださいまし」
「……もしかして、これは良いきっかけになるかもしれませんわね」
王女は一人で頷きながら、また採取を続ける。
――
その日の夕方。
宿の前に、やけに仰々しい馬車が停まっていた。
護衛の数も、明らかに多く、辺りに緊張感が漂う。
「王女様、お迎えが到着しました」
付人が、申し訳なさそうな顔でそう告げる。
「あら、もう来ましたの?」
名残惜しそうにしながらも、王女は帰り支度を始める。
さすがにずっとこちらに居るわけにもいかず、
王都に先に帰ることになったらしい。
(そりゃ薬草採取ばっかりしてる訳にもいかないよな)
馬車に乗り込む前、王女が足を止めてタイチを振り返る。
「先ほどのお話、王都に戻ったら早速検討いたしますわ」
「お願いします」
馬車に乗り込む王女を見送りながら、
タイチは子どもたちみんなが絵札を手にする姿を想像していた。
――
ギルドの二階。
ギルドマスターが受付嬢と話す。
「しかし、王女自らが薬草採取するとはねぇ」
「王族のお遊びに付き合うのも大変だな」
そうギルドマスターが言うと、
「それがお遊びとも言い切れず、」
受付嬢が、言葉を濁す。
「もう帰ったんだから、そんな気を使う必要ないぞ?」
「いえ、確かに初日はお遊び程度だったんですが、」
「日を追うごとに採取量が増えてきて、」
「最終日の今日は一般の採取量に達していました。」
「タイチが手伝ったとかじゃねーのか?」
「それの確認もしました、王女が一人でと…」
「本当なのか?」
「王女の付人にも確認しましたが、一切手を出さずに見守って居たそうです」
「まだあります」
「子どもたちと老人の採取量も増えてるんです」
「あれだよな?入り口付近の」
「そうです、いつも二、三日かけて採取してたんですが」
「それが、一日で終わらせてくるとかか?」
「ええ、その通りです」
「一体、何が起きてんだ?」
「さらにもう一つ、」
「まだあるのか?さすがにもう驚かねーぞ?」
ギルドマスターは腕を組み直し、受付嬢を見据える。
「剣姫がタイチと手合わせして、」
「負けたそうです」
「なん…だと…」




