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9-11 聖女のアレと、タイミング


「ーーーーーーーー!!」


 変な鳥の鳴き声で起きる。


 薬草採取に向かうために着替えて、


 一階に降りる。


 朝食の席に、味噌汁が並んでいた。


 女将が一言、


「昨日の残りのスープに足すアレ」


「お試しでやってみたら他の客にも好評でさ」


 一口すする。


(うん、おいしい)


 起きてきた王女と、剣姫と森に向かう。


「薬草採取が楽しくて仕方ありませんわ」


(民と距離近すぎだろ…)


――


 昼前にギルドに戻り、薬草を納品する。


 数量をチェックしながら、


 受付嬢が隣町の案件の話をする。


「受注から一週間ほど経過しているんですが」


「担当の冒険者が調査を続けているものの、進展がなく」


「増援をお願いできればと」


「何か問題が発生したんですか?」


「いえ、担当の冒険者パーティーがまだ不慣れで」


「それでバルキリーに?」


「そういう事になりますね」


「分かりました、伝えておきます」


 王女が手を挙げる。


「わたくしが参りますわ!」


「冒険者として当然ですわ!」


「いや、これバルキリーの案件だから、、」


「すでに、わたくしもバルキリーの一味みたいなものですわ!」


(一味って…)


――


 宿に戻り、起きてきたバルキリーたちに伝える。


「乗り気じゃないにゃ」


 皆、めんどくさそうにしている。


 王女が自分だけでも行くと言い出し、


「王女だけを行かすわけにはいかんのう」


「しゃーねーな、行くか」


 そうして、クエストに行くことが決まる。


――


 隣町へ向かう。


 現地の担当冒険者と合流し、


 近隣の森へ調査に向かう。


「確かに、何かおかしいのう」


 エルフが周囲を調べながら言う。


「小動物の気配がせん」


「じゃあ、何もないって事ですか?」


「いや、逆じゃのう」


「逆、ですか?」


「確かに静かすぎるな」


 剣士も周囲を注意深く観察する。


 森の奥に進んでいくと、


「匂うな」


 剣士が足を止める。


 そして、王女に向かい、


「王女、前に出るな」


 次にタイチと娘の方を向き、


「タイチと娘は王女の護衛」


 さらに、剣姫の方に、


「剣姫、お前はオレと先駆け」


 そして、残りのメンバーに、


「あとは適当に…」


(雑だな)


 剣士と剣姫が先駆けで動く。


「隠れてるつもりだろうがバレバレだぜ」


 次の瞬間、


 大きな影が視界に入る。


「「「「「!!!」」」」」


「な、な、なんですかアレ!」


「トロールじゃな」


「小動物の気配がなかったのはアイツらのせいじゃな」


 一匹が姿を現すと、もう一匹、もう一匹と出てくる。


 かなりの数のトロールに、バルキリーがそれぞれに動き始める。


 王女が付人に引き寄せられ、タイチと娘と一ヶ所に固まる。


 娘が何か唱えると、自分たちの周りをうっすら光る何かが包み込む。


「え!何これ!」


「聖女のアレ!」


「え、触るとやばいヤツ?」


「あたしの魔力じゃそこまでの威力は無いけど!」


「けど?」


「触ると少し嫌な感じくらいにはなる!」


 すると一匹のトロールが、うっすら光る何かに触れる。


「バチッ」


 っと音がする。


 トロールは少し嫌そうな顔をする。


(あ、嫌そうだ)


 タイチはそのトロールを遠ざけるため、


 包まれた光から抜け出――


「バチッ」


「あああっ!ビリッときたあっ!」


「ごめん!それこっちにも効くから!」


(そんなとこまで真似しなくても…)


 とりあえず、少し嫌な感じになったが、


 包まれた光から抜け出し、近づくトロールを警戒する。


 剣士と剣姫は動き回り、トロールを斬っていく。


 エルフは周囲に呪符を撒き散らし、近づかせないようにする。


 魔法使いは、


「わははははははは!逃げられると思うなぁ!!!」


 トロールの退路を断つように遠方で爆発を起こす。


 聖女は光を纏いながら、逃げ場を失ったトロールに笑顔で近づいていく。


「おイタをしたらぁ、ダメですよぉ」


 そして光に触れたトロールは灰になる。


「本家はやっぱり怖いなあ」


 娘がその様子を見ながら言う。


(いや、そこはすごいって言ってあげて)


 タイチは、近づくトロールをただひたすら転ばせる。


 すると、木の上に居たロリ猫が、


「血がたぎって来たにゃー!!!」


 毛を逆立て、縦横無尽に走り出す。


「来たぞ」


 剣士が聖女と魔法使いを抱え、


 剣姫に、


「エルフを抱えて後方へ頼む」


「…承知した…」


 剣姫がエルフを抱える。


 そしてタイチの方を向き、


「お前はお前で避けとけ」


 と言い残し後方に避難した。


(こっちも雑だったー)


 ロリ猫が残ったトロールを次々と仕留め、


 そのまま、王女と娘の方に突っ込んでくる。


 タイチが立ち塞がり、ロリ猫の脚を軽く払う。


 勢いを落としたロリ猫はそのまま、包まれた光にゆっくりと突っ込み、


「バチッ」


 と光に触れ、一瞬嫌そうな顔をして、後ろにひっくり返った。


「なんですのアレ!」


 王女の問いに、


「なんか獣人特有のやつらしいです」


 そうとしか説明されてないので、そう答えておく。


 担当冒険者パーティーはその様子をただ茫然と見つめて呟いた。


「これが…ヘルバルキリー…」


――


 魔法使いがトロールを回収し、


 ロリ猫の回復を待って、トロールの現れた方向を進んでいくと、


 奥に、人の手が入ったと思われる構造物が見つかった。


――


 薄暗い部屋。


 黒い装束を身に纏った集団が机を囲んでいる。


「報告が入った」


「バルキリーに東の拠点を潰されたらしい」


「なぜだ」


「王都にいるはずではないのか」


「偶然、東の街に移動していたようです」


「なんてタイミングだ」


「……」


 返事のない沈黙が続いた。


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