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9-9 二度目の対峙と、二度目の反転


 突然の剣姫の申し出に戸惑う。


「私の…目指す先は剣聖…」


「…ならば君を超えねば…」


 騎士団の時のことを言ってるのだろう。


「あ、あれは、剣士さんが途中でめんどくさくなっただけで…」


 剣姫に事情を説明する。


「例えそうだとしても…」


「君を…倒さないまま」


「剣聖の前には立てない…」


 そして王女に向き直る。


「突然だが…」


「ここでタイチと…手合わせすることを…」


「許可して欲しい…」


「素手の組み手でよろしいですの?」


「私は…剣でしか…戦えない」


「剣を使う事を…許して欲しい」


「それ、真剣ですの?」


「うん…本物…」


 王女は少し考える。


「では、なるべく傷付くことの無きよう、十分な注意を」


 と前置きしてから、


「真剣での手合わせは、決闘のルールでよろしいですの?」


 剣姫は静かに頷く。


「タイチさんは、それでよろしくって?」


「真剣相手は初めてですけど、」


 決闘と言っても手加減してくれると思っていた。


 王女もそう思っていたのだろう。


 そうして、安易に答えてしまった。


「大丈夫です」


「よろしいですわ、勝敗の決着は」


「相手を行動不能にするか、参ったを言うまで」


 王女は二人に向き直り、


「わたくし、王女の名において決闘形式の手合わせを認める」


「…感謝いたします」


 剣姫は少し離れた場所で剣を構える。


「手加減はできない…当たったら死んじゃうから…傷付かないよう…」


「十分注意して…」


 そう言いながら、剣を振った。


「えーーーーーーっ!?」


(注意するってこっちが注意するの?!)


 辛うじて見えた剣筋をかわす。


 それでも剣が髪を掠める。


 すぐに次の剣が来る。


 かわす。


 服を掠める。


 段々と剣の動きが速くなってくる。


 一撃をかわすと、もう二撃目がくる。


(これ絶対、当たったら死ぬ)


 止まらない連撃、


 身体が少しずつ遅れてくる。


 このままでは、いずれ当たってしまう。


(ど、ど、どうすれば…)


 組み手の時。


 どうしてた?


(ダメだ、素手とは全然状況が違う)


 ワイバーンの時。


 どうしてた?


 そうだ、ワイバーンの時は、


 手が一本多い人と思って乗り切った。


 剣姫さんも、


 剣が一本多い人と思えば。


(…)


(いやいやいやいや、)


(なんの解決にもなってないじゃないか)


 剣をなんとかかわしながら、突破口を探す。


「考え事するとは…余裕…だな」


 しまった。


 剣が振り下ろされる。


「うわっ、あぶなっ」


 これもまたなんとか避けたものの、


 明らかに身体の反応が遅い。


 剣姫の速さが、タイチの動きを上回り、


 考える余裕を与えてくれない。


 そして、振り下ろしからの返す刀で、下から上へのすり上げに、


 さらに、間髪入れずにまた振り下ろしにつないでくる。


 次の切先は頭の上まで来ていた。


(死ぬ)


――世界が白黒に反転する。


(あ、このタイミングでこれはダメなパターン)


 じわじわと進んでくる切先を見ながら、


 死ぬまでのこの長い時間を過ごすのか。


(…)


(……)


(…考える時間が出来たな)


(切先の動きはこの方向)


(ということはこちらに動けば回避できる)


 動かない体にこっち、こっちの方向と命令する。


 気持ち、自分の体も動いている気がしてきた。


 少しずつ、少しずつ迫る切先と、


 少しずつ、少しずつ逃げる体。


(このまま避けきれば、気絶しても命は助かる)


(てか、このスキルって)


(自分で解除はできないのか)


(気絶する前に解除できれば)


 切先から逃げるように踏ん張りながら、


 ステータスを開いてみる。


 変わらず文字は分からないが、


 三つのゲージの一本が点滅してゆっくりと減っていっている。


(これが無くなると気絶するのかな、たぶん)


 自分の気絶へのカウントダウンを見るためだけにステータスを見ている。


 ステータスのメーターは無慈悲に減っていく。


 念じてみる。


(解除!ストップ!中止!とりやめ!)


 思いつく言葉を羅列した。


 どの言葉が効いたのか分からないが、


 世界の反転が点滅しだした。


(どれ?なに?)


 白黒の世界に少しずつ色が戻っていく。


(動いた!戻った!)


 すぐさま剣姫の空いた脇腹に体を滑り込ませる。


 剣姫は振り下ろす先のなくなった切先を、差し出したままバランスを崩し、


 懐に入ったタイチの背中に跳ね上げられるように、


 投げられたように前に回転しながら倒れこむ。


 剣姫は倒れたまま、一言。


「参った…私の負けだ…」


「あ!あ!剣姫さん大丈夫ですか」


「…問題ない」


 剣姫は土を払いながら立ち上がる。


「まさか…私の…剣をかわすだけでなく」


「投げられて…しまうとは」


「剣聖は…これを五分に持ち込んだのか…」


 剣を鞘に納め、タイチの方を向き、


「君はすごい面白いね」


(やっぱこの人コワイ)


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