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9-8 積み上げたものと、本当のこと

9-8 積み上げたものと、本当のこと


 朝、早起きの王女と剣姫とギルドへ向かう。


 薬草採取のクエストを受注する。


 王女が同伴することについては、


 剣姫が必ずそばにいることと、


「地図の上はこちらですからね!」


 と念押しを受けて出発する。


――


 森へ向かう道中。


「昨日はタイチさんの絵札が思ったより好評でしたわ」


 王女が昨日のイベントの話をする。


 その言葉に昨日のステージを思い出す。


 ロリ猫の過剰なステージ。


 子どもたちや老人の声援。


 おっさん達の横断幕。


 横断幕の「名人の存在自体が、人類史上最大の奇跡」の言葉。


(……)


「そんなに売れると思ってませんでしたわ」


 王女がずけずけと言う。


「王女、言い方というものが」


 付人がすぐにたしなめる。


「失礼、言葉のチョイスを間違えましたわ」


「タイチさんの絵札は売れ筋ではないと、」


「王女、」


 付人が王女の歯に衣着せぬ物言いを止める。


「大丈夫です、元々僕も売れないと思っていたので」


――


 森の入り口あたりに着く。


 老人と子どもたちが薬草を摘んでいた。


「よお名人!昨日はお疲れだったな」


「いえそんな、こちらこそありがとうございました」


「なーに、気にすんな」


「御守りを一枚買ったと思ったら安いもんだ」


「御守り…ですか?」


「なんか王都では御守りがわりに名人の絵札を持ってんだろ?」


(あー、おっさん達だ)


 子どもたちの何人かも絵札を持っている。


「見てみて、お兄ちゃんの御守りだよ!」


 すると、持っていない子たちが言う。


「昨日はお金が無くて買えなかった…」


「次はいつ売るの?」


「次までにお金を貯めとく!」


 子どもたちが口々に言う。


「この街にお店ができますわ」


 王女が答える。


「そこでいつでも買えるようになりますわよ」


「やったー」


「お兄ちゃんの絵札絶対買うね」


 子どもたちは歓喜する。


「そ、そんな、無理しなくても」


 子どもたちの熱量に押されながら言う。


「でもお兄ちゃんの絵札が欲しい」


「僕お兄ちゃんが好きなんだ」


「私もお兄ちゃんが好き」


「前に魔物がいっぱいの時だって」


「お兄ちゃんが居なきゃ死んでたかもしれないし!」


「ママと会えなくなってたかもしれない!」


「そうじゃな、儂も名人がおぶってくれてなかったら、」


 魔物が大量に出た時の話をする。


「そんな、あの時は緊急事態だったから」


「そんな事考えてる余裕なかったよ」


 そう言うタイチを見て王女がしみじみと言う。


「タイチさんが積み上げた結果ですわ」


「それが昨日のイベントに繋がったんですわ」


――


 老人たちと子どもたちを後にして、


 森の奥へ向かう。


「薬草採取の人たちってそんなに稼いでると思えないのに」


「なんか悪いなぁ」


 そして王女に尋ねる。


「もっと安くとか出来ないんですか?」


 王女は少し考えたのち、


「どうしても絵札はコストがかかりますわ」


「安易に値を下げると、絵師たちの賃金も下げざるを得ませんわ」


「それは、困りますね」


「致し方のない事ですわ」


――


 少し歩いて、薬草が群生しているところに出る。


「今日はこの辺りで採取しましょうか」


 剣姫は少し離れて剣を振り始めた。


 タイチはすぐに採取を終え、王女の方にいく。


「今日は籠をいっぱいにするまでは付き合ってもらいますわ」


 王女は子ども用の小さな籠を手に、


 せっせと薬草を摘み始める。


(王女が薬草を取る姿ってレアだよな)


 手の空いたタイチは、


 剣姫が剣を振る様子をついつい見てしまっていた。


 目が合う。


「ごめんなさい、ついつい見てしまいました」


「…気にすることは無い…」


「聞いたが…剣聖と…やり合って、」


「五分の結果…だって?」


「まさか、めっちゃ負けましたよ!」


「剣士さんが大袈裟に言ってるだけですよ!」


「この間の…騎士団とのやりとりを…見ていたが」


「多分…剣聖の言うのは…」


「本当のこと…だと思う」


 剣姫が続ける。


「私とも…手合わせ…しないか?」


「えっ?!」


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