9-7 盛況と、声援と、横断幕
娘やバルキリーの面々、剣姫
そしてロリ猫の過剰な対応で大歓声の中
タイチが名前を呼ばれる。
女子たちの中の黒一点、
てっきりアウェーかと思っていた。
足取り重く、ステージへ出ていく。
しかし、
「薬草のお兄ちゃんー!」
子どもたちの声が響く。
「名人は我が街の誇りじゃ!」
老人の声も上がる。
薬草採取で一緒になる、老人と子どもたちだった。
予想外の声援だった。
それ以外にもタイチを呼ぶ声が多い。
客席のあちらこちらから声援が飛ぶ。
ふと後方に目をやると、
横断幕を抱えた一際目立つ集団がいた。
見覚えのある顔ぶれ。
王都の薬草採取のおっさん達だった。
「名人ーがんばれー!」
声を合わせて叫んでいる。
思わず目を逸らす。
「名人どしたー!?」
「こっちだこっち!」
大きくこちらに手を振る。
(やめて、恥ずかしい…)
横断幕には何を書いているのか分からないが、
観客は文字を読み苦笑している。
タイチの登場を最後に一列に並ぶ。
司会が事業の説明、
資料店の出張所、今後の展開などを説明する。
ステージイベントは大盛り上がりで終わる。
――
ステージイベントも終わり、
広場の特設テントで絵札の即売会が行われる。
机が並べられ、みんなが横一列に並んでいる。
そこに各々が、
欲しい絵札のメンバーの前に並んで購入する仕組みだ。
みんなそれぞれ並びの列が出来ており、
一言二言会話して購入していく。
剣士と剣姫の列は、女子が多く、聖女の列は、男子が多い。
ロリ猫は子どもたちが多く、
エルフ、魔法使い、娘は満遍なく人が並んでいる。
そして、タイチの前にも列ができている。
宿の女将さんが、
「うちの宿のタイチの晴れ姿だから買わないと」
と絵札を買ってくれた。
そして次は娘の列に並ぶと言い残して人混みの中に消えていった。
タイチの列の並びも進み、
「よう!元気そうだな!」
そこには王都の薬草採取の時の弁当屋の男の姿があった。
「え、なんでここに?」
「王女に名人パンの権利を買われた時に店ごと買い取ってもらったんだよな」
「で、今日のイベントの時に屋台を出店してみないかって」
「そうなんですか」
「王都の屋台連中も並んでるぞ」
「え、なんで?」
「名人パンはやっぱ名人の絵札がおすすめしないとな!」
「そう言うことですか…」
タイチの列は、
薬草採取界隈と、名人パン界隈で賑わっていた。
そして列は進む。
薬草採りのおっさん達の順番が来る。
「名人、緊張してたなあ」
「そりゃそうですよ、あんな場所に立つなんて」
「でも、俺らからしたら名人はヒーローだからな」
「ヒーロー!?そんな、大それたもんでも無いと…」
「いやいや薬草採取ってみんなが注目しない地味な仕事なんだぜ」
「そんな地味な仕事のヤツがこんなバルキリーとかと並んで立ってんだぜ」
「俺たちも鼻が高いよ!」
「あの、後ろで応援してくれてたのがそうですよね?」
タイチが聞く。
「お、気づいてくれてたか」
おっさん達は嬉しそうに言う。
「あんな大きな横断幕広げてたら嫌でも気付きますよ」
「見てくれたか、あの横断幕も気合入れて作ったんだぜ」
「でも、あれ、なんて書いてあったんですか?」
おっさんが胸を張って答える。
「名人の存在自体が、人類史上最大の奇跡」
「……」
その時に読めなくて良かったと、心から思った。
そうして即売会も大盛況で幕を閉じた。
――
みんなと宿に戻る。
「タイチがここにも居るにゃ」
ロリ猫が宿の入り口を指差す。
「え?」
見ると、宿の入り口には娘とタイチの絵札が飾ってあり、何か文字が書いてある。
「名人考案の焼きヘンネのマヨソース掛けはこの宿から生まれました!だって」
娘が読んでくれる。
「そういう自分のはなんて書いてあるの?」
娘は小声で何かぼそぼそと言うが聞き取れない。
「美人の娘を生んだ、美人の女将の宿はこちら!って書いてあるにゃ」
ロリ猫が読み上げる。
「…恥ずかしい」
娘は顔を真っ赤にしてうつむいた。




