9-5 衣装合わせと、ギャップと、普段着と
ギルドに戻り、薬草を納品する。
タイチが納品し、王女も籠を出す。
受付嬢が王女に、
「王女さまも――」
王女が口に手を当て、
「姫冒険者ですわ」
「失礼しました、姫冒険者さまも結構採取されましたね」
慌てて言い直す。
「わたくしの薬草採り名人の未来もありえますわ」
そんな事を言いだす王女に、
「それは困ります」
すぐに付人が釘を刺すが、
「薬草採り王女と言うのもアリですわ」
と自信満々に言う。
(秘密にする気があるのかないのかどっちなんだろう…)
――
宿に戻ると、バルキリーが食堂で朝食をとっていた。
「おかえりタイチ」
「剣姫も王女も一緒に行ってたにゃ?」
「うん…剣を振りに…」
「寝起きの運動にはちょうど良かったですわ」
食事を終えたみんなと広場へ向かう。
「わぁ、立派な舞台ですねぇ」
聖女がステージを見て嬉しそうに言う。
「これが最初の興行イベントになりますわ」
広場の真ん中にステージは組み上がっており、
興行イベントはいよいよ明日だと聞かされる。
告知の看板のようなものが立っており、
何人かの人が足を止めてそれを読んでいる。
――
そして再び宿に戻ると、
二階から職人らしき人たちが降りてきて、
女将と付人に会釈して出ていった。
二階に上がると、真ん中の広間部分に半分ほどの簡易的な壁ができていた。
「何これ」
娘が言うと、
「ここの宿は広場からすぐなのでイベント用に使わせていただく事にしましたの」
王女が説明する。
そうしているうちに荷物が広間に運び込まれる。
「これは一体なんじゃ」
「明日用のイベント衣装ですわ」
「衣装合わせを行いますわ」
「我…採寸…してないが…」
「調査済みですから大丈夫ですわ」
(何それ)
そして、それぞれに衣装が渡される。
――
渡された衣装を持ち、順番に壁の向こうに作られたフィッティングルームで着替える。
娘は王都の優等生と言うコンセプトで制服風の衣装で出てきた。
「あーこれセンスいい、学校もこの制服にならないかしら」
次に入ったのはエルフ。
エルフが着て出てきたのは緑のフード付きケープ。
ケープの下には薄手のシルクのようなロングスリーブに短パンとブーツ。
森の民がコンセプトのデザインだった。
「別にワシは、森の民では無いのじゃが」
と言いつつも満更ではなさそうだった。
次に出てきた聖女は清楚なベール。
それに反してスリットの入ったミニスカートにロングブーツ。
胸元も強調されていた。
それを見た娘が、
「ふしだらだわ!破戒修道女だわ!」
王女は笑顔で娘に、
「リサーチの結果こうなりましたわ」
「どんなリサーチよ!」
そして、魔法使いは漆黒のマント。
マントは動くと赤色の裏地が見え、その対比が強者感を演出している。
ウィッチハットには金の刺繍が施され、派手さもあり、
杖にはイミテーションの宝石が埋め込まれていた。
そして、振り向くと大きく龍の刺繍が。
「…やはり…龍は…良い…」
次のロリ猫は、扉から顔を覗かせるだけで、なかなか出てこない。
「何してんだ早く出てこい」
剣士に言われ、恐る恐る出てくる。
ロリ猫はフリルのついたピンクの衣装。
耳と尻尾には大きなリボンが付いている。
「ウチはこう言う系は好きじゃないにゃ」
不満そうなロリ猫に対してみんなの反応は、
「いいじゃない」
「似合ってますぅ」
「可愛い……」
みんなに言われてその気になってきたのか、
「まぁ、ウチほどになると、何着ても似合ってしまうにゃ」
とか言い出す。
しかし何か違う。
確かに似合ってはいるが、普段のロリ猫と比べて何かが足りない気がした。
タイチがロリ猫に猫耳マントを羽織らせる。
しっくりきた。
そしてマントを脱ぐと、
フリルの衣装のロリ猫になる。
「これですわ」
「何かが足りませんでしたのよ」
「猫さんは地が可愛いので、可愛い服を着せたらもっといいとそう思っていたんですわ」
「でもそれじゃなくて必要なのはギャップだったんですわ」
(なんでこの人はこんなに理解が早いのか…)
――
そして剣士は、布告式のような男装スタイルの衣装で現れる。
「オレはまたこんな感じか」
普段の剣士は、マントの下にビキニのような布面積の少ないものを着用しているからか、
「動きにくいんだよな」
と不満を漏らす。
しかし、それを見た娘と王女は、
「尊い」
「尊いですわ」
「お前ら、こういう時だけそういうこと言うのやめろ」
剣士に対をなす剣姫もまた布告式同様、華やかな騎士スタイルの衣装。
腰には細い刺突剣が添えられていた。
剣姫がそれに触れながら呟く。
「細くて…頼りない…」
――
タイチに渡された衣装は、
薬草の葉っぱをイメージした模様のついたウェストコート風のベストだった。
普段着の上に羽織るだけ。
そして大きな派手な籠を背負わされた。
「薬草採り名人と荷物持ちをイメージしましたわ」
王女が説明する。
周りを見渡す。
全員が華やかな衣装に身を包んでいる。
(なんか、僕だけ普段着感がすごい)




