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9-4 王女のパーティーと、剣姫と


 森の入り口では老人と子供たちが薬草を摘んでいる。


「名人、今日は変わった組み合わせだな」


 タイチたちの組み合わせを見て老人が言う。


「皆さま、いつもお疲れ様ですわ」


 王女が声をかける。


「嬢ちゃんたち見ない顔だな、新顔か?」


「姫冒険者ですわ、なにとぞよろしくお願いしますわ」


「姫…」


「……」


「!」


「き、お気をつけて…な!」


「ありがとうございますわ」


 そのまま、森に入っていく。


 入り口の方からは、


「ダメだよおじいちゃん、あんな顔したら!」


「王女さまは冒険者のフリしてるんだから!」


 老人を諭す子供たちの声が聞こえた。


(みんな気づいてるんだ…)


――


 森を歩きながら付人が話をする。


「懐かしいな、昔は冒険者のようにこうやって森に入ったりしたもんだが」


「そうなんですね」


「王都で王女殿下のお付きに抜擢されてからは、その機会も無くなってしまったからね」


「お付きになる前は何をやってたんですか?」


「冒険者まがいの事をしてたんだけどね」


「そこからなんで王女さまの付人に?」


「私の家は代々王家に仕える近衛兵の一族でね」


「家が冒険者になる事を認めてくれなかったんだ」


「そして衛兵になったんだよ」


「王女さまのお付きって衛兵の中からきまるんですか?」


「そういう訳ではないけれどね」


「衛兵になった時に騎士団との合同訓練があってね」


「その時に王家の人間の目に止まったらしい」


「じゃあ、結構強かったんですね」


「そう思ってたんだけどね」


 付人は苦笑いする。


「バルキリーたちや、そこにいる剣姫殿の強さを見て」


「世界の広さを思い知らされたよ」


「まぁバルキリーの強さはちょっとアレですもんね」


「まあ、アレなのは君も一緒だけどね」


「え?」


――


「この辺りで摘みましょうか」


 森の中の拓けたところで採取することにする。


「じゃあ、あっちで剣を振っているので…」


 剣姫は少し離れたところで剣を振り始めた。


「さあ!摘みますわよ!」


 王女は意気揚々と薬草採取を始めた。


「簡単ですわ!」


 薬草を摘み始める。


「虫ですわ!」


 虫に驚く。


「泥ですわ!」


 泥を踏んだ。


 そんな事を、繰り返しながら、


「だいぶ採れましたわ」


 王女は満面の笑みで籠を見せてくる。


「これとこれは…違う草ですね」


「そうなんですの?」


「これも違う草ですね」


「違いが分かりませんわ」


 付人は黙って後ろに立っている。


 剣姫はひたすら剣を振っている。


「薬草は葉っぱのこの部分に特徴があるので…」


「あ、ここですわね」


「そうですそうです」


「パッと見た時でもそこを見れば見分けられます」


「なるほど分かりましたわ」


「早く採取するコツはありますの?」


 王女が聞いてくる。


「コツと言われても、あまり意識したこと無いですけど…」


「横に移動しながら一列ずつやるのが早いのかと」


「お手本を見せていただきたいですわ」


 王女が言うので、やって見せる。


「こうですね」


 一つ摘む。


 横移動して、


「こうですね」


 また一つ。


「こうですね」「こうですね」


 また横移動して摘み取る。


「こうですね」「こうですね」「こうですね」


 左から右へ、横移動しながら摘み取っていく。


「こうですね」「こうですね」「こうですね」


 折り返し、右から左へ。


「こうですね」「こうですね」「こうですね」


 また折り返し、左から右へ。


 非常に地味で淡々と、


 且つ迅速な作業。


「こうですね」「こうですね」「こうですね」――


 みるみるうちに薬草が摘み取られ、


 舞台の幕が上がるように地面の色が変わっていく。


 王女は口を開けたまま見ていた。


 剣姫も思わず手を止めてその様子に見入る。


「なんと言うか凄まじい速さだな」


 付人が思わず言葉を漏らす。


「慣れてたらこんなもんじゃないんですか?」


 振り向きもせず動きながら返答する。


「動きと速さが気持ち悪いですわ」


 王女が呟く。


「え、そんな事ないでしょ?」


「いや…なんと言うか…気持ち悪い」


 剣姫も呟いた。


「え、まじですか?」


 気持ち悪いと言われたタイチのペースが落ちる。


 そこに付人がフォローするように、


「いや!気にしないでくれ!いい意味で!」


「いい意味での気持ち悪さだ!ね?王女殿下?」


 すると王女も、


「も、もちろんですわ!いい意味ですわ!」


「いい意味での気持ち悪さですわ!」


 察した剣姫も、


「うん…いい意味での…気持ち悪さだ」


「……」


(いい意味の気持ち悪さってなんだよ)


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