↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺しようとする同級生を助けたら乙女ゲームの世界の王子になりました  作者: 夜月海歌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/102

リアナの諦め

 学院の鐘が三度、乾いた音を響かせた。

 講堂の中に広がる沈黙は、あの日の事件以来、どこか重く湿っている。


 壊れた聖具。セレスティアの悲しむ顔。

 そして、名指しされたリアナ。


「……弁明は、ないのですか?」


 教導官の問いに、リアナはただ目を伏せたまま、小さく首を振った。その姿は、まるで罪を認めた者のように静かだった。


 僕は息を呑む。

 違う、彼女はそんなことをする人じゃない。

 でも、彼女は自分の潔白を口にしようとしなかった。

 まるで、すべてを受け入れるように。


 「……リアナ様を責めないでください。」


 柔らかな声が講堂に響く。

 セレスティアだった。

 彼女は傷ついた肩を押さえながら、涙をこぼしていた。


 「彼女は、きっと反省しています。どうか、罰など与えないでください。私が望んでいません。」


 その言葉に、ざわめきが広がった。

 “聖女が罪人を許した”――そんな構図が瞬く間に人々の心を掴んでいく。


 けれどその慈悲は、リアナを救うものではなかった。

 むしろ、彼女をより深く孤独へと沈めていく。


 「やっぱり聖女様はお優しい。」

 「リアナ様は……反省しているのね。」

 そんな囁きが、あちこちで聞こえ始めた。


 僕の胸の中に広がるのは、焦燥と疑念だった。

 セレスティアは本当に、リアナを庇っているのか?

 それとも――。


 だが、彼女の涙を前に、僕は言葉を失った。

 誰が悪いのかも、何が真実なのかも、もう分からなかった。


 講堂を出たあと、リアナは一人で中庭に立っていた。

 風がリアナの艶やかな髪を揺らす。

 その横顔は、どこまでも穏やかで、どこまでも遠かった。


 「リアナ……どうして黙ってるんだ。君が言えば、みんなだって――。」

「言っても、誰も信じないわ」

 彼女は微笑んだ。まるで諦めを受け入れるように。

 「レオン様だけが、私を信じてくれた。それだけで、もういいの。」


 その言葉が胸に刺さる。

 僕は彼女の手を掴もうとしたが、リアナはそっと一歩下がった。


 「ありがとう。でも……これ以上は、あなたまで巻き込みたくない。」


 風が、聖堂の鐘を揺らした。

 その音は、まるで鎖のように僕を縛りつける。


 彼女を守りたい。

 でも、何をすればいいのか分からない。

 誰に話しても、信じてもらえないだろう。


 ――孤独の檻に閉じ込められているのは、きっと僕も同じだった。


 セレスティアは相変わらず優しい微笑みを浮かべて、僕を気遣ってくれる。

 だが、その瞳の奥に映る光は、どこか冷たい。


 「レオン様、リアナ様のこと……どうかお心を痛めないでくださいね。きっと、これも運命なのですわ。」


 運命。

 その言葉がやけに重く響いた。


 僕は頷きながらも、心の底で何かが軋むのを感じていた。

 あの夜から、すべてが少しずつ壊れていく。

 信頼も、友情も、そして――心の支えまでも。


 誰も信じられなくなっていく中で、

 僕はただ、リアナを探し続けていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。