消えない痛み《セレスティア》
「リアナ様。」
「セレスティア。来てくれてありがとう。」
リアナ様は私のことをセレスティアと呼んだ。それは、入学式――1年ぶりだった。いつも彼女は私のことを聖女様と呼ぶ。悪意を込めた言い方で。
「話ってなんでしょうか……?」
「セレスティア、ごめんなさい。今までずっと、あなたにひどいことしてきた。本当に、ごめんなさい。」
「……え?」
「謝りたいって、思ってた。私のこと嫌いだよね。それでいい。でも、ごめんなさい。許してもらえなくてもいいけど、聞いてほしい。」
「……謝ったら許されると思っているのですか?」
私から出た声は、思っていたよりも冷たい声だった。
「思ってないわ、そんなこと。でも、謝りたいのよ。私の自己満足かもしれないけど、それでも罪を償わさせて。」
「……そんな、そんな自分勝手なこと言わないでください……!」
私の声は、怒りと悲しみで震えていた。
「今さら許してなんて……無理よ。あなたは自分のことしか考えてない。私の気持ち考えたことある?ないでしょ。」
「ごめんなさい――。私、もう絶対悪口言わない。絶対に、何されても言わないから――。」
「違う!」
私は、怒りに任せて魔力が暴走していた。私の光の魔法が彼女を傷つける。でも、彼女は抵抗しようともしなかった。光の魔法を使えない彼女にとっては、ものすごい痛みなはずなのに――。
「あなたが私に攻撃したとかじゃなくて!私は!レオン様を奪われたことが許せない!人の婚約者を奪わないで!」
彼女は、苦しそうだった。魔法を防御しようとも、避けようともしない。それで泣いている。嫌なら避ければいいのに。本当に泣きたいのはわたしの方なのに。泣いて攻撃されればあなたが被害者でしょう。加害者が被害者面していいわけ?そうしたら私が許すとでも思った?私は。私は優しくなんかないから。好きな人を奪われて許せるわけがない。
「……奪ってなんかないわ……。」
「嘘つかないでちょうだい!夜、2人で会ったりしてるのもしってる。レオン様はあなたのことを “りあ”と呼ぶ。2人だけの秘密なの?それで奪ってないとか冗談言わないでよ!」
「違う……。違うわ。レオン様はあなたのこと大切にしてる。」
「大切に?それは“婚約者”としてよ。私のことは見てない。入学した時は、あなたに感謝していたの、私。あなた以外にも私に嫌味を言う人はいる。それはいいの、仕方の無いことだから。でも、他の人はレオン様の前では何もしないんだよね。だから、レオン様はあなたのことしか気づいていない。私、あなたがいなかったらレオン様に見捨てられていたと思う。でもね、最近は違う。あなたにひどいこと言われて傷ついても、レオン様が心配しているのはあなたなの。なぜ?あなたが私を傷つけているのに。レオン様はどうして、あなたの心配をするの?おかしいでしょ、傷つけられた側より、傷つけた側を心配するなんて。……それは、レオン様があなたのこと好きだからよ。あなたは私からレオン様を奪った。その事が何よりも許せない。」
「ごめんなさい。……でも、私にとっても大切な人なの。」
「あなたの謝罪は聞きたくない。」
リアナ様は、悲しそうに私を見つめていた。あなたが悪いのに。ここで、レオン様は取らないって言ってくれれば私は彼女を許せたかもしれないのに。レオン様、あなたは私のものです。彼女に、悪い人にたぶらかされないで――。




