演技の苦しみ
「……今までも、辛かった。悪役令嬢って、誰かに悪口言わなきゃいけない。それで相手が傷つく度に私すごい悲しかった。ごめんなさいって謝りたかった。心の中で何度も謝った。セレスティアが噴水に突き落とされた時もそう。ソフィアって娘がやったんだけど、それを見て、私の方に誇らしそうな表情をしているの。セレスティアもつらそうだったけど、それをやってしまったソフィアを見るのも悲しかったし、何も言えない私も嫌になった。いっそ私に心がなければ、とか心が悪に染まればって何度も思ったよ。悪役令嬢だけじゃない。私は公爵令嬢。常に完璧を求められるし、失敗が許されない。貴族って辛いね。誰にも、家族にも本音で話せない。友達だって居ない。立場しか見てない人ばっかで。ほんとの私を見つけてくれる人なんていなかった。腹の中を探り合う冷たい会話の何が楽しいんだろう。」
彼女は、息を詰まらせながら言った。僕は黙々と聞いていた。
「リアナ。僕の前では全部吐き出していいよ。そんなに抱え込んでたんだね。ごめん、……気づかなかった。」
「違うよ……。私が一人で抱え込んでた。」
「……これからは。これからは、1人じゃないから。」
「ありがとう、レオン様。……でも、あなたには婚約者がいるわ。大切にしてあげてね。」
「もちろん。」
二人とも大切だ。セレスティアもリアナも。だから、どっちも傷ついてほしくない。ふたりが、仲良く笑い合い日が来てほしい。そう思う。
「……リアナ、僕もね、孤独だったよ。」
「……え?」
「完璧じゃなきゃいけないの、めっちゃわかる。ずっと誰かに監視されてるみたいで……。誰にも相談できないよな。人前で話すの苦手なのに大勢の前ではなさなきゃいけないし。リアナに演技するなって言ったけど、僕も無意識に演技してたみたい。」
「貴族ってみんなそうなのかな。私たちと同じ気持ちなら――。みんなにも、本音を言える人がいるといいな。」
「ああ。そんな世界を作ろう。」
「ねえ、見て。」
彼女の方を見ると、頬が光ったあと、赤く腫れていたところが消えていた。
「治癒魔法?」
「うん、こっそり練習してるの。」
そこには、ただ幸せそうに笑っている少女がいた。
少女は、突然大地の魔法で自らの脚を炎に包んだ。
「……何してるんだ!?危ない!」
「いいの、どうせ治るから。」
「は!?」
彼女はそのあと治癒魔法で脚を治した。そこにあるのは傷1つない脚。でも……。心のどこかで引っかかる。




