本当のあなたに
「リアナは悪くないよ。」
「……!」
「……レオン様は、お優しいですわね。」
「僕は、優しくなんかないよ――。弱いだけ。前世でも、莉亜のこと助けられなかった。僕が離さなければ莉亜は生きていたかもしれないのに。」
「私は、今生きているから十分です。憧れの悪役令嬢ですよ。それより、優真くんを巻き込んだの本当にごめんなさい。もし会えたら、謝りたいと思ってたんだ。落ちていく時に、優真くんのとこ引っ張ってるのわかった。離したはずなのにね――。」
「それは僕が掴んだ。莉亜は悪くない――。それにね、さっき莉亜のこと止められなかった。本当はもっと早く止めるべきだったのに――。決断が遅くなって、2人とも傷つけることになっちゃった。」
「セレスティアを傷つけたのは私だから。私が傷つくことになったのも私のせい。――優真くんは、自分が守れなかったって言うけど、全部責任私だよ。」
「違う。」
「違くない。全部全部私のせい。やっぱり根が悪役令嬢なんだよ。だから悪役令嬢になった。」
「ねえ、もうやめてよ。莉亜が自分を否定するとこ見たくない。悪役令嬢はプライドが高いんだろ?それなら否定なんかしないよ。」
「……レオン様。本当にずるいお方ですね。」
そういうリアナの顔はさっきよりも温かみがあった。
「リアナ。君は優しい。だから……」
「私が?優しくなんてないわ。自分のためにセレスティアとレオン様を傷つけた。誰も私を優しいなんて思ってないわよ。私自身もそう。」
「誰も、なんて言わないでくれ。僕は、君が優しいと信じてる。」
リアナが顔をあげる。その顔は涙が光のように溢れていた。
「……レオン様、ありがとうございます。でも、これは本心なのですけど、私は幸せになってはいけません。」
「……どうしてそういうことを言う。」
「だって――。私はセレスティアを傷つけました。それが本心じゃないとかそういうことは、その事実を覆す理由にはなりません。私が幸せそうに笑っていたら、それだけでセレスティアを悲しませてしまうのです。私は、彼女を傷つけたくありません。」
「セレスティアは傷つかないよ。彼女は聖女で優しい心の持ち主だから――。」
「聖女は聖女でも、1人の人間です。いくら優しくても、自分を傷つけていた人物が笑っている――それに何も思わないわけないでしょう。私は、罪を償いたいです。」
「リアナは優しいな……。」
「優しさとか慈悲じゃなくて、責任なのですよ。」
「責任――。じゃあ僕もとるよ、リアナを処刑させないようにした責任。リアナのこと守る。今度こそ。」
「……レオン様。本当に私なんかを守ってくれるの、……?」
「もちろん。誰にも傷つけさせない。」




