広がる噂
「リアナ様、またセレスティア様のこといじめたらしいわ。」
「リアナ様がセレスティア様のこと泣かせたんですって。」
リアナは、悪役令嬢の演技を抑えるようになっていた。でも、噂は収まらない。
「セレスティア。最近、顔色が良くなってきたな。」
「ありがとう、レオン様。」
セレスティアは、嫌味を言われることが少なくなって、体調が良くなってきていた。だけど、時折寂しそうな表情を見せる。
「レオン様。」
「どうした?」
「私、たまにレオン様のお隣に居ていいのかって不安になります。」
「リアナが言ったのか。」
「いえ、それもあるんですけど……。でも、私自身でも思うのですよ、王妃にはなれないと。」
「それは、家柄か……?」
「はい……。」
「階級なんてなくなればいいのにな。平等な方がいいのに。」
階級は、貴族社会には必要なもの。頭の中ではわかっていても、ここの中では疑問に思ってしまう。前世で階級なんてない自由な世界で生きていたから思うのかもしれないけど、それでも僕は階級社会が嫌いだ。上の身分の者にはたとえ理不尽なことを言われようとも逆らえない。媚びを売らないと生きていけない。僕は、王族だからこの国では1番位が高い。でも、一人の人間として、権力を振りかざさないようにしていきたいなと思う。
「王子様が、そんなこと言うのですね。」
「だって、階級のせいでセレスティアは傷ついているだろう?守りたいと思うのは当然じゃないか。」
「そうですね、ありがとう。
……でもね、それだけじゃないの、理由。」
「……それは、何だ?」
「……。いえ、なんでもありませんわ。私、今レオン様に愛されていてとっても幸せです。」
「それは、良かった……。」
「聖女様。」
「リアナ様?」
「お話があるのです。少しいいかしら?」
隣で、セレスティアが息を呑んだのがわかった。
「かしこまりました。レオン様、少し行ってきますね。」
セレスティアの笑顔は、少しだけぎこちなかった。リアナはもうセレスティアを傷つけないはず――。でも、2人だけで話したら、僕には止められない。その事が、どうしても不安だった。
「大丈夫か、セレスティア。一緒に行くか?」
「いえ、一人で行けます。ありがとう。」
セレスティアは覚悟を決めた顔でリアナの方へ歩き出した。
その後、セレスティアが戻ってきた。セレスティアは泣いてはいなかったけれど、どこか表情が虚ろだった。彼女にいくら聞いても、話した内容は教えてくれなかった――。




