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第49話:地を這う影、あるいは記憶の呼び声

神の目を欺く巨大な「隠蔽マント」を纏い、グラウンド・テラーはエトワールを後にします。

目指すは疫病に滅びたドワーフの廃村。移動中の要塞内で、リリティアの記憶が少しずつ形を成し、かつての計画者たちが抱いていた「神への祈り」にも似た決意が語られます。


グラウンド・テラーの内部は、大量の箱が積み上げられた倉庫のようになり、T3のブロックによって効率的に再構成された不思議な空間へと変貌していた。

 四本の巨大な足が大地を掴み、山を越え、谷を抜け、滑るように進む。ショウの施した【概念:耐震】と【概念:軽量化】の糸のおかげで、箱が大きく揺れることはない。


(……本当に、不思議な乗り心地だ。外では爆走しているはずなのに、まるで静かな書斎にいるみたいだ……)


ショウは、T3が空中に投影する周囲の地質データを眺めながら、ふと高精細モニターの前に立つリリティアの背中に気づいた。彼女は、過ぎ去る夜の景色を、何かに怯えるように、それでいて懐かしむように見つめている。銀糸のような髪が、微かに要塞内の空調に揺れていた。


「リリティア、大丈夫か? ……気分が悪いなら、少し横になった方がいい」

「……いえ。大丈夫です、ショウ様。……少しずつ、思い出しているんです。私たちが、なぜこの計画を始めたのか。……なぜ、自分自身を複製し続けてまで、神を殺そうとしたのか」


彼女の紫の瞳に、深い憂いと、数千年の時を超えて受け継がれてきた「意志」の光が宿る。


「神が作る『終わりのない苦しみの世界』が、あまりにも残酷だったから……私たちは反旗を翻した……ような気がします……」

「……終わりのない苦しみの世界……なんて残酷な」


ショウは自分の指先に巻かれた、透明にして強靭な神の糸を見つめた。

 この糸で服を作る。それは単なる防具ではなく、誰かの「存在」を定義し、神の消しゴムから守る行為そのものだ。


『報告。後方、高度300に熱源反応。……王国軍の偵察隊と思われるグリフォン・ライダー計10体を感知。隠蔽できていない可能性があります。迎撃しますか?』


T3の無機質な警告が、静寂を切り裂いた。


「 迎撃できるの!?じゃあおねがい」

『肯定。……これより、迎撃モード(Interception-Mode)へ移行します』

「迎撃モード……!?」


ショウは不謹慎ながら、心のどこかでワクワクするのを感じていた。全ステータス1の俺にはできない、古代の武力。

外部モニターの映像と、T3の現在の状態を映し出すモニターが、一瞬にして戦闘用のレイアウトへと切り替わる。

要塞の屋上からT3のブロック群がせり出していく。


「……すごい」


モニター越しに、ショウは目を見張った。

 せり出したブロック群が、凄まじい速度で互いを連結させ、再構成していく。それはまるで、要塞の背中から生えた、巨大な「腕」のように見えた。

腕が、要塞の一部を構成していたブロックを一つ、その手に握る。

 次の瞬間。


――ドォォォォン!!


音速を超えた投擲音。

 鉄の腕から放たれたブロックは、空気を切り裂き、グリフォン・ライダーの一体に直撃した。

 肉と骨が砕ける音さえ聞こえない。直撃を受けたライダーとグリフォンは、そのまま爆散するように夜空へ散った。


「当たった……! なんて速度だ!」

『次、座標確定。……投擲』


T3は淡々と、しかし確実に、迫りくる脅威を処理していく。

 ブロックを掴み、狙いを定め、投げる。その単純な動作が、T3の演算能力とブロックの質量によって、絶対的な破壊力へと昇華されていた。

2体、3体……。

 空を裂くブロックの鉄槌が、次々とグリフォンを撃ち落としていく。

 10体。そのすべてを撃ち落とすのに、1分とかからなかった。


『迎撃完了。……脅威度ゼロ』


T3のモニターが、再び巡航モードへと戻る。ショウは、ただただその圧倒的な力に圧倒されていた。

 この「歩く煉瓦倉庫」は、神を拒絶するための、最強の防盾でもあったのだ。


「……すごすぎる。これなら、誰が来ても大丈夫だな」

「……ショウ君、油断は禁物よ」


 シノが立ち上がる。煤汚れたクロークを翻し、短剣を握り直す。


「T3が撃ち落としたけど、生き残りがいるかもしれない。情報が漏れたら厄介だわ。私が確認に行ってくる」

「頼む、シノ」


シノが要塞のハッチから夜の闇へと溶け出すように飛び出していく。

 ショウは、彼女の後姿を見送りながら、再びリリティアに向き合った。


「……俺たちの『家』に着くまでに、まだ波乱がありそうだな」


『危機を回避。……敵を殲滅。目的のドワーフ旧村……「エルダー・スミス」まで、残り3時間』

「もうすぐ着くんだな……。ガリウスさんの家」


ガリウスは、愛用のツルハシの手入れをしながら、複雑な表情で窓の外を見つめていた。

 かつて疫病に滅び、呪われた地と化した故郷。そこには、ただの悲劇ではない「何か」が隠されているはずだ。


「よし、みんな。着いたらすぐに二往復目の準備だ。……第2の拠点には、何が待っているんだろうな」


29歳、成人男性。

 仕立て屋は、次なる伝説の「拠点」へ向けて、ハサミと針を構え直した。

 神様、俺の仕立ては、あんたの「消去」よりも、ずっと頑丈だぞ。


第49話をお読みいただきありがとうございました!

リリティアの語る、計画の「本当の動機」。それは、消し去られる歴史への抗いでした。

シノの活躍で王国軍をやり過ごし、一行はついにガリウスの故郷エルダー・スミスへ。

いつも応援ありがとうございます!次回、お楽しみに!

面白いと思っていただけたら、ぜひブクマや評価をお願いします!

※AIとの共同執筆作品となります。


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