第47話:要塞、戦場に立つ。あるいは知の集積
独立都市エトワールに帰還したショウたちを待っていたのは、死線を潜り抜けたシノとの再会、そして王都から持ち帰った「世界の禁忌」との対峙でした。
古代の叡智T3と、神殺しの計画者リリティア。
グラウンド・テラーが静かにその巨体を沈め、四本の足を器用に畳み込むと、周囲の瓦礫と同化するように元の「廃墟となった図書館」の姿へと擬態を完了させた。
ショウたちは、エトワールで待機していた仲間たち――ガリウスや防衛隊の面々に、王都地下での信じがたい収穫を報告した。
「……信じられん。これが太古の技術、そして『計画者』の生き残りだというのか」
ガリウスが、最小サイズとなったT3と、まだどこか夢見心地な瞳をしたリリティアを見つめ、驚愕に声を震わせる。
小型モードになったT3は、挨拶もそこそこに、本棚の列を猛烈な勢いでスキャンし始めていた。その表面を走る青い光がページを撫でるたび、数千年の時を止めていた紙の記憶が、次々とデジタルの奔流となってT3の内部へと吸い込まれていく。
『――アーカイブ進行中。未学習の言語体系、および神話創生後の歴史記述を多数検出。……数日あれば、この館内の全知識を私のユニットに定着可能です』
その傍らでは、ガリウスも王都から持ち帰った重厚な禁書に手を伸ばしていたが、解析スキルを持たない彼は、一文字を解読するのにも古語辞典と格闘し、気が遠くなるような時間を費やしていた。対照的に、エリオはT3と競うような凄まじいスピードでページをめくり、『多重読書』を限界まで回して情報の海を泳いでいる。
そこへ、煤汚れたクロークを翻し、息を切らせたシノが飛び込んできた。
「ショウ、戻ったんだね! 助かったよ、あの時は本当に……本当に、ありがとう!」
駆け寄るシノの瞳には、まだあの「黒い霧」に消されかけた恐怖の残滓があったが、ショウの姿を見て、ようやく安堵の表情が浮かんだ。
「シノ! 無事でよかった。……戦況はどうなんだ? エトワールの外はどうなっている」
ショウの問いに、シノの表情が再び険しくなった。
「王国軍が攻勢を強めてる。どうやら彼ら、ここ……独立都市エトワールを『補給路の要』にするつもりらしくて。今、すぐ近くの大街道沿いに大規模な中継基地を建設し始めてる。そこが完成すれば、この図書館の廃墟も安全じゃなくなるわ」
「王国軍の中継基地……。となると、ここももう安全じゃないな」
「どうするの、ショウ。せっかく持ち帰った知識も、ここで燃やされたらおしまいよ」
ショウは、T3がスキャンを続けている膨大な本棚を見渡した。一冊一冊が、神が隠した世界の綻びを証明する証拠品だ。
「よし、基地ができる前になんとかしよう。……この図書館、本も棚も、建物ごと全部移動させる」
「……本ごと? 一冊残らず持っていくのか? 物理的に不可能じゃない?」
シノが目を丸くして驚くが、ショウは静かに、傍らで浮遊するT3を指差した。
「この倉庫は、ただの要塞じゃない。T3、一度の往復でこの館内の全蔵書を格納できるか?」
『否定します。グラウンド・テラーの内部空間では、二往復程必要です』
「……わかった。問題は、どこへ移動するか、だ」
29歳、成人男性。
ステータスは「1」のまま。だが、彼の背後には世界で最も重い「真実」という名の積み荷と、それを運ぶための「古代の脚」がある。
神の目が届かない場所。王国軍の及ばない、歴史を縫い直すための新たな拠点を求めて。
仕立て屋の地図の上に、次なる目的地を定めるための「運命の針」が落とされようとしていた。
「どこに移動するか……みんなの知恵を貸してくれ。この世界のどこかに、神からも人からも忘れられた『空白の地』はないか?」
第47話をお読みいただきありがとうございました!
知識を貪るT3とエリオ、そして迫る王国軍の基地建設というタイムリミット。
「図書館丸ごと引っ越し作戦」という、前代未聞のダイナミックな計画が始動します。
果たして一行は、どこへ逃げ延びるのか。
いつも応援ありがとうございます!次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




