第43話:知識の略奪、あるいは遠雷の呼鳴
王都の地下遺構を脱出し、禁断の知識が集まる「窓のない書庫」へと辿り着いたショウたち。
そこは、絶対王が隠した世界の真実が、豪華な装束を纏って眠る場所でした。
王都へと続く、カビ臭く長い隠し階段。ショウたちがその狭い通路へと足を踏み出すと同時に、背後でガシャガシャと不機嫌な音を立てていたT3のブロック群が、一瞬にして隙間ない一枚の石壁と化した。それは、ショーベルが壊した壁を埋め戻す、完璧な封鎖だった。
「……ゼスタがいるから大丈夫だと思うけど、これで安心だ」
ショーベルが、愛剣を鞘に収めながら不敵に笑う。
ショウは、転がりながらついてくる1ブロックだけのT3にふと思いついたことを尋ねた。エリオが先ほど『多重読書』で得た、あの膨大な資料の知識。それを、エリオ自身の帽子に魔力回路として記録させているのだが、T3の方で読み込むことはできないだろうか、と。
『理論上は可能ですが、現状のスロット規格と魔力波長が適合しません。……しかし、私は「物理的な読書」による直接スキャンが可能です。世界創世後の資料を直接スキャンさせていただければ、世界創生後のデータを学習できます』
「わかった。俺たちの拠点は図書館なんだ。そこなら、腐るほどの資料がある。後でたっぷり見せてやるよ」
『了解。……テイラー、ここでもう一つ、重要な提案があります。この地下発掘拠点は、施設ごと隠蔽移動が可能です。通称、移動要塞「グラウンド・テラー(Ground-Teller)」として、あなたの旅に同行させたい』
「壁や天井もブロックだったな……まさか、あの巨大な遺跡ごとついてくる……? 」
ショウの驚愕の問いに、T3は無機質に肯定の光を放つ。
『はい。探知網に引っかからないよう、地殻の振動と魔力放射を完全に隠蔽しながら移動します。バレないように移動させる方法は、私の演算にお任せください』
「……すごい守護者だな。よし、T3、よろしく頼む」
通路を登りきった先には、静謐な空気が漂う小部屋があり古い扉を慎重に開けるとそこには、書庫があり、壁一面を埋め尽くすように、見るからに豪華で、魔力を帯びた装丁の本が並んでいる。自分たちが今出てきた扉は、こちら側から見れば精巧な本棚の一部にしか見えず、完璧な隠し扉となっていた。
「多重読書できない……ここは……王都でも限られた者しか入れない、禁書と魔導書の書庫です……!」
エリオが、畏敬と興奮に声を震わせながら、本棚の一冊に手を伸ばそうとする。
「異世界の言語の本もあるな。……全部持って行こう。エリオさん、他に欲しい本は?」
「農民の手紙……ここには……ないようですね」
「ひと暴れして、図書館の全館から探し出してやるか? 聖堂騎士団どもを血祭りにあげてな」
ショーベルが剣の柄を鳴らして笑うが、ショウとエリオが必死に止めた。
「二度とここには来られないだろうけど、この部屋の本だけでも凄い収穫だ。全部持ち帰ろう」
ショウは【神速】で指を動かし、神の糸に本の重さを極限まで軽減する概念を付与した巨大な袋を幾つも編み上げた。だが、どんなに糸に「力」の概念を込め、物理法則を捻じ曲げても、力のステータス1から補正がかからないショウ自身の肉体は、完成した袋を一つも持ち上げることができなかった。
「……やっぱり、力だけは補正がかからず、1より上がらないんだな」
結局、ショーベルが4つ、エリオが2つ、そしてT3が1つの巨大な袋を担ぎ、一行は急ぎ足で地下通路を引き返した。帰り道、T3が不意に報告を上げた。
『テイラー、報告。拠点で待機中の少女……リリティアが言葉を発しました。断片的ですが、脳内の記憶細胞が再構成され始めています。現在、私との精神リンクを通じて古代語および現代言語を急速学習中。拠点に戻る頃には、日常会話が可能となるでしょう』
「……遠くにいても、そんなことがわかるのか? すごいな……」
『はい。概念通信の応用です。……テイラーの「神の糸」も、遠隔情報の送受信、あるいは「通話」も可能かと推測されます』
「俺の糸で……そんなことまでできるのか!?」
ショウが驚愕し、自分の指先の糸を見つめた、その瞬間。
指先に巻かれた、シノへと繋がる「糸」が、弾けるような熱を帯びた。
(――ショウ……!)
声ではない。だが、はっきりとシノの声と、彼女の存在が黒い霧に飲み込まれようとしている絶望的なイメージが脳裏に直接流れ込んでくる。
「シノ! 今すぐ逃げるんだ!」
ショウは、重い袋を担ぐ仲間たちを促し、夜の闇へと飛び出した。
仕立て屋の戦場は、もはや針箱の中だけではない。
第43話をお読みいただきありがとうございました!
移動要塞「グラウンド・テラー」の構想と、ショウの糸に秘められた「遠隔通信」の可能性。
そして、ついにシノの危機がショウの意識に直接流れ込み、物語は切り替わります。
いつも応援ありがとうございます!次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




