第42話:神の複製、あるいは影の同調
目覚めたのは、記憶を失った少女と、二人の女性。
彼女たちはただの犠牲者ではなく、数千年の時をクローンとして生き続けてきた「計画者」そのものでした。
T3が語る衝撃の事実と、神の目からすら存在を消し去るショウの「糸」の特異性。
「……みんな、この子たちを運び出すぞ。ゼスタ、ショーベルさん、手を貸してくれ!」
俺の言葉に、二人の騎士が即座に動いた。ゼスタが記憶のない少女を抱き上げ、ショーベルが意識のない二人の女性を軽々と肩に担ぐ。
運び出した三人の呼吸は、俺が【神速】で仕立てた【概念:回復】を編み込んだ即席の毛布と布団に包まれ、静かな寝息へと変わっていった。
地下遺構の冷たい空気の中で、T3のブロックが一つ、カプセルに付随していた操作端末の深層部を精密な光の走査で探っている。
「T3、何か分かったか? 彼女たちは……一体何者なんだ」
『――この少女……「リリティア」と記録されている個体が、神殺し計画「プロジェクト:デオサイド」の主導者です』
T3が空中に投影したホログラムに、一同が息を呑む。
銀糸のような輝きを持つ髪を広げ、深い紫の瞳を持つ少女リリティア。その横に映し出された二人の成長した女性は、顔立ち、魔力の波長、すべてが似ているがリリティアと違っている。
『この三人は、同一の遺伝子から抽出され、肉体を複製し続けてきた「同一存在」です。通常、同一の複製を繰り返せば「複製限界」が訪れ、肉体は崩壊します。そのため彼女たちは、世代ごとにわずかな外部遺伝子を取り込み、自己進化を繰り返しながら計画を維持してきました。……この少女は最新のシリーズであり、そして、製造設備が失われた今、この世に遺された最後の「リリティア」です』
「彼女自身が、永遠の時を生きる計画そのものだったのか……。死を乗り越えてまで、神を殺そうとした執念の結晶か」
『はい。彼女たちの記憶が戻れば、「封印の書」を介さずとも、失われた神殺しの計画のすべてに到達できるはずです。……もう一つ重要な報告があります』
T3のブロックが、俺の指先に巻かれた「神の糸」に触れた。無機質な石の表面が、共鳴するように細かく震える。
『驚くべきことに、あなたの「神の糸」には、この世界の創造主たる神々の権能から存在を隠蔽する、極めて特異な能力が備わっています。T3にも隠蔽効果があり中にいれば誰にも気が付かれません』
「神からも隠れられる……? 俺の『隠蔽』は、神様相手にも通用するってことか」
『肯定します。我らT3も最小サイズに分割し、あなたの影として同行することが可能です。……私はこの施設の壁や天井、床そのもので構成されています。機能ブロックを切り離し、あなたの旅に随行させることができます。移動中も、外部の情報を学習し、不足したデータを補完し続けることが可能です』
改めて見渡せば、この巨大な地下空間を構成するすべてが、T3と同じブロックでできている。この施設はT3という知性を持った防壁の一部だった。
「......すごい守護者だな。よし、T3、よろしく頼む」
俺たちは役割を分担することにした。目覚めたばかりで混乱し、幼子のように眠るリリティアたちの看病と、この「聖域」の守備はゼスタに託す。
「ゼスタさん、ここをお願いします。俺たちはT3を連れて、王都の中央禁書館にある『資料』を片っ端から回収してきます」
「ああ、任せておけ」
俺はブロック4つ分の小型T3を連れて歩き出した。
29歳、成人男性。
神の目を盗み、神のライブラリを物理的にハッキングする。
全ステータス1の仕立て屋による、神話への逆襲が本格的に動き出した。
「行こう、エリオさん、ショーベル」
俺たちは、再び闇に包まれた王都の心臓部……禁書館の深淵へと足を踏み入れた。
第42話をお読みいただきありがとうございました!
少女リリティアの衝撃的な正体と、T3の圧倒的なサポート性能。
そして、ショウの糸が持つ「対神隠蔽性能」が、ついに絶対的なアドバンテージとして定義されました。
いつも応援ありがとうございます!次回、お楽しみに!
面白いと思っていただけたら、ぜひブクマや評価をお願いします!
※AIとの共同執筆作品となります。




