第33話:地下2階の真実、あるいは世界の「原典」
司書エリオが示した「ペン」という名の鍵により、古代図書館の最深部、地下2階の扉が開かれます。
そこには、地上の書庫をも凌ぐ「異世界の英知」が眠っていました。
知識の神の力を持ちながらも、魔力不足ゆえに不完全だったエリオは、ショウの仕立てた服によって真の力を発揮し始めます。
白銀の扉が、長い沈黙を吐き出すように重厚な音を立てて開かれた。
扉の先に広がっていたのは、地上の書庫を全て合わせても足りないほど、高く、広く、果てしなく続く「禁忌の回廊」だった。
「……なんじゃ、これは。地上よりは整然としておるが、密度が桁違いだぞ。本だけではない、石板に水晶、異世界の機械の破片まで……」
ガリウスが目を剥き、山のように、あるいは壁のように積まれた資料の群れに圧倒される。
そこは、この世界「アプラウディア」に招かれ、そして消えていった異世界人たちの生きた証そのものだった。
かつての勇者たちが持ち込んだ未知の工学、魔族が禁忌とした悪魔の書、さらには彼らの故郷の言語で綴られた日記。それらが分類されることなく、しかし大切に、この地下の静寂に守られていたのだ。
「……エリオ、お前は『知識の神』の加護を受けているんだろう? ここにあるものも、全て瞬時に理解できるのか?」
ショーベルが、本の一山を手に取りながら尋ねた。エリオは苦笑し、首を横に振る。
「いえ……知識の神の権能といっても万能ではありません。この世界『アプラウディア』の既知の事象なら即座に引き出せますが、異世界人が持ち込んだ知識や、神々が意図的に隠蔽した事象、あるいはそれらが干渉して変質した歴史については、直接調べて読み解かない限り分からないんです」
エリオは自嘲気味に、自分の細い腕を見つめた。
「何より、私は専門である魔法の知識はあっても、それを実行するための魔力が少なすぎて……。今までは、高度な鑑定魔法さえ一度使えば気絶する始末でした。ですが――」
エリオは、ショウが仕立てた『多機能ローブ』の胸元をぎゅっと握りしめた。
「ショウさんが作ってくれたこの服……。単なる防具ではありませんね。私の枯渇した魔力回路を補完し、神からの知識を受け入れるための受像機の役割を果たしている。……これがあれば、神が与えてくれた権能を初めて100%発揮できます」
「俺の服が、そんな役割を……。それなら話は早いです」
ショウは不敵に笑った。
「ガリウスさん、エリオさん。この資料の山、全部俺たちが攻略しましょう。知恵を出すのはお二人だ。環境作りは俺がやります」
ショウは神速で針を動かし、資料を次々と整理するための「自動仕分け棚」を壁際に縫い上げ、長時間の作業でも疲れない「超高輝度・無影魔導ランプ」を次々と設置していく。さらに、大量の情報を読み解くエリオの脳がオーバーヒートしないよう、常に精神を安定させる【概念:鎮静】を付与した神の糸を、部屋中にカーテンのように張り巡らせた。
「……これなら、いける。行きますよ、ガリウス先生!」
「おおともよ、若き司書よ! ワシもドワーフの意地を見せてくれるわ!」
エリオが眼光を鋭くし、ショウの服から溢れる魔力を糧に、古代魔法『多重演算』を起動した。
彼の周囲を無数の本が浮遊し、ページが猛烈な勢いでめくられていく。知識の神の使徒と、魔王軍随一の知将。二人の天才による、前代未聞の「世界解読」が始まった。
数時間が経った頃。
エリオが、一冊のひどく汚れた、しかし不気味な威圧感を放つ手記を手に取り、叫んだ。
「……ショウさん、見つけました! 今の魔王と、彼の世界の記述!石板の解析が進むと思います!」
エリオがそのページを開いた瞬間、地下2階の全域が不気味な黒い光に包まれた。
まるで、世界のシステムそのものが、その真実に触れられることを拒絶しているかのように。
「光と闇の戦いは……守るためのものじゃなかった。この世界を『消費』するための……」
エリオの声が震える。
29歳、成人男性。
ついに俺たちは、この歪んだ世界の「最初の一針」に指をかけた。
第33話をお読みいただきありがとうございました!
エリオの覚醒と、地下2階に眠る禁忌の資料。
ついに明かされ始める「勇者と魔王」の本当の役割。神々が隠し通したかったその真実が、ピース・テイラーズの手で暴かれようとしています。
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




