第30話:隠密の仕立て、あるいは司書の旅立ち
司書長の息子エリオを仲間に加えたショウたち。
しかし、サザンクロスの街には「勇者権三郎」の巡業準備のために、光の親衛隊が続々と集結し始めていました。
ショウは神速の針を動かし、青白い顔の司書を「最強の司書」へと変貌させます。
「……この布、ただの防寒着ではないようですね。肌に触れるだけで、思考がクリアになり、魔力の巡りが安定する……」
俺が神速で仕立てた『多機能ローブ:書記官仕様』に袖を通し、エリオが驚愕の声を上げた。
このローブには、神の糸に【概念:集中】と【概念:疲労軽減】を付与してある。さらに、司書なら泣いて喜ぶ「本の中身を記憶できる帽子とマント」もセットだ。
「ええ。エトワールへの帰還は過酷な旅になります。……なので、装備でステータスを補強しました」
「ショウ、準備はいいか。港の広場で権三郎の先遣隊が演説を始めた。街の門が封鎖される前に出るぞ」
ショーベルが窓の外を睨みながら急かす。
俺たちはエリオを中央に据え、全員で最新の『光学迷彩マント』を羽織った。
「エリオさん、離れないようにしてください」
サザンクロスの街門付近は、勇者を讃える熱狂的な信者と、目を光らせる親衛隊で溢れかえっていた。
広場では、権三郎のパクリ曲が大音量で流されている。
「――光の勇者様が明日、この海を浄化される! 異端の書を持つ者は速やかに差し出せ!」
スピーカーから響く罵声。エリオがマントの下で、恐怖と怒りに身を震わせた。
「……あそこだ! 空間が歪んだぞ! 誰かいる!」
親衛隊の鋭い感覚が俺たちを捉えかけた。
万事休すか――と思った瞬間、エリオが懐から一本の古い羽ペンを取り出した。
「……古代魔法、『墨塗りの夜』!」
エリオが唱えると、俺たちの周囲数メートルが、まるでインクをこぼしたような「絶対的な闇」に包まれた。それは光を吸収し、視覚だけでなく魔力探知さえも無効化する古代の目くらましだ。
「今のうちに!」
俺たちはその闇に紛れ、兵士たちの間をすり抜けて門の外へと駆け抜けた。
街を離れ、森の深くまで逃げ込んだところで、ようやく息を整える。
「……助かりました、エリオさん。今の魔法、凄かった」
「古い術式です。……今までは、使うことはできなかったですよ」
エリオは少しだけ、誇らしげに眼鏡を上げた。
29歳、成人男性。
新しい仲間は、ただの「知識人」ではなかった。
俺たちはエリオから、古代図書館の地下2階に眠るとされる『世界のバックアップ・データ』の噂を聞きながら、絶対聖域への帰還を急いだ。
第30話をお読みいただきありがとうございました!
エリオの意外な活躍により、サザンクロスを脱出した一行。
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




