第29話:潮風の港町、あるいは封じられた灯台
灰の中から救い出した資料を手に、ショウたちはついに港町サザンクロスへと辿り着きます。
目指すのは、かつての古代図書館司書長の息子。
「知」を愛するがゆえに心を閉ざした男を相手に、ショウが差し出したのは、命懸けで守り抜いた「紙の記憶」でした。
サザンクロス。潮風と活気に満ちたはずのその街は、今や「勇者権三郎」を讃える色とりどりの旗と、街中に響くパクリ賛歌に塗り潰されていた。
俺たちはガリウスの分析をもとに、街の公立図書館へと足を運んだ。ターゲットは、古代図書館の最後の司書長「オルダス」だ。
「……資料によれば、司書長オルダスと息子のエリオが、司書としてこの図書館に勤めているはずじゃ。エリオは古代資料の専門家で、若くして数多くの論文を発表した俊才だという」
図書館の奥、カビとインクの香りが漂う閲覧室。そこで、度の強い眼鏡をかけ、必死に古い巻物を整理している青白い顔の青年を見つけた。
「……何の用ですか。ここは現在、教会の検閲が入っている場所で、反勇者の資料を処分するので、部外者は立ち入らないでいただきたい」
処分に明らかに不満そうな顔をしている。
「わかりました。人を探しています。エトワールの古代図書館の司書長オルダスさんはどこにいらっしゃいますか?」
「どちらさまですか?」
エリオは俺たちの姿を見るなり、警戒心を露わにした。ショーベルの威圧感やガリウスの風貌、そして何より全ステータス1の俺という奇妙な集団は、彼にとって「不審者」以外の何物でもなかった。
「すいません。ショウと申します。俺たちはエトワールの古代図書館のことで聞きたいことがあります」
「エトワールの……父は亡くなりました。私でわかることなら答えますが……」
「亡くなっていたのですか……。知らずに申し訳ありません」
鍵のありかは分からないかもしれないとよぎったが、聞いてみることに。
「ご子息のエリオさんですか?俺たちはエトワールの古代図書館の地下にある『封印の部屋』を開くための鍵を探しているんです」
俺が直球で切り出すと、エリオの表情が凍りついた。
「……あれを、開く?何のためですか?金目のものはないですよ。金にならない資料しかないのであなた方の役に立つとは思えませんが……」
「異世界の言語を読み解きたいのです」
「異世界の言語?何のために?」
「入手した石板に書かれている文字を解読したいのです」
「私は何も知りません。お引き取りください」
何か知っている。そう感じたショウは、信頼を得るために一か八かの賭けに出るしかない。
マントの中に隠し持っていた「燃やされる寸前の資料」を取り出し、テーブルに置いた。
「これを見てください。王都の資料館で、教会が『異端の本』として燃やそうとしていた本です。俺たちはこれを助けるために、火の中に飛び込みました」
エリオが息を呑み、震える手でその焦げ跡の残る資料に触れた。
「これ、は……失われたはずの異世界言語録……。あぁ、なんてことだ。王都では本当に焚書が始まっているのか……」
各地で貴重な本や資料がゴミのように燃やされている現状に、彼は人知れず心を痛めていたのだろう。エリオは眼鏡を拭い、俺の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「……分かりました。あなたたちが、少なくとも知識を愛する側だということは信じましょう。鍵の在り処を知っています」
エリオは声を潜めて言った。
「ですが、鍵はここでは渡せません。私もエトワールへ同行します。そこにある知識が、独裁者に利用されないよう、この目で見届ける義務がある。……私をあそこへ連れて行ってください」
「もちろんです。そのための準備をしましょう」
29歳、成人男性。
お堅い司書さんを仲間に加えるには、まずは見た目からだ。
俺はエリオの細い体躯に合わせ、王都の監視を掻い潜るための「移動用ステルスマント」と、司書としての矜持を保つための「最新鋭多機能ローブ」を、神速で仕立て始めた。
第29話をお読みいただきありがとうございました!
司書長の息子エリオと接触し、ついに「鍵」への道が開けました。
しかし、エリオを連れての帰還は、王都の警戒網を再び潜り抜ける過酷な旅となります。
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




