第28話:火中の残響、あるいは灰の記録
王都資料館で繰り広げられる、貴重な文献の焼却。
目の前で灰にされゆく知恵を前に、知将ガリウスが動きます。
ショウが仕立てた『光学迷彩マント』を翻し、炎の中に消える知略のドワーフ。
「――くそっ、教会の馬鹿どもめ! 何を燃やしているかわかっているのか!」
ガリウスが歯ぎしりしながら、光学迷彩のマントの下で震えている。
資料館の中庭では、白装束の司祭たちが祈りを捧げながら、大量の古文書を炎の中に放り込んでいた。パチパチと爆ぜる音と共に、数百年の知恵が黒い灰へと変わっていく。
「……ガリウスさん、落ち着いて。このマントは、短い時間なら炎の中でも活動できるので誰にも気づかれないで本を回収できるはずです」
「ああ、わかった。全部持ってきたいが、あの中にある『貴重な資料』は、灰にさせるわけにはいかん!」
ガリウスは、幽霊のような足取りで中庭へと滑り込んだ。
俺は【高速縫製】で、ガリウスが進むルートの熱を遮断するように、不可視の【耐火の糸】を空間に張り巡らせた。
司祭たちが「浄化の火よ!」と叫びながら本を投げ込むその瞬間。
宙を舞った資料が、地面に落ちる前にふわりと消えた。
「灰になりたまえ!」
「ん……本消えたか……?気のせいだろう」
司祭たちが顔を見合わせている間に、ガリウスは炎のキワまで歩み寄り、次々と貴重な本をマントの中に抱え込んでいく。
俺はガリウスの背後に、神の糸で編んだ『回収用ネット』を密かに設置した。彼が手を伸ばせば、糸が吸い付くように本を絡め取り、俺の手元へと引き寄せる。
「ショウ、これもだ! そっちの黒い装丁の本も持っていくぞ!」
ガリウスは、当初の目的だった本だけでなく、重要そうな魔導書や異世界の研究資料をいくつか掴み取り、足音一つ立てずにこちらへと戻ってきた。
結局、教会の人間は誰一人として、自分たちの足元で「禁書」が救い出されたことに気づかなかった。
資料館を離れ、王都の目立たない路地裏で足を止める。
ガリウスはマントの中から、煤ひとつ付いていない資料を取り出し、興奮気味に鼻息を荒くした。
「やったぞ! これだ、この『 ゼラ・ルミナス王国 図書館、資料館の歴史』があれば、鍵のありかを追えるかもしれん。それに、この『異世界言語禄』も手に入った。これでお前の持っている石板の解析もさらに進むはずだ」
「ガリウスさん、ナイスです。……でも、次は無茶しないでくださいよ」
俺たちは回収した本を神速で防水・防汚加工し、大切に保管した。
29歳、成人男性。
神様が消そうとした歴史の断片を、俺たちは確かにこの手に取り戻した。
「さて、資料の読み込みは移動中にやりましょう。港町サザンクロスへ急ぎますよ」
灰の中から救い出した「言葉」を道標に、ピース・テイラーズ騎士団は再び進み始めた。
第28話をお読みいただきありがとうございました!
ガリウスの勇気とショウのサポートによる、鮮やかな資料奪還作戦。
ついに港町での手がかりを得た一行。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




