第22話:絶対聖域への帰還、あるいは禁域の裁断
王都の安宿で奇跡の復活を遂げた暗黒騎士団の面々。
しかし、大柄な魔族の幹部たちが一堂に会したことで、ボロ宿の強度は限界を迎えていました。
「……ミシミシ、と言っているな」
三眼の巨漢、ギルガスがコーヒーカップを手に持った瞬間、宿の床が悲鳴を上げた。
ここは王都の場末にある安宿だ。そこに、回復して本来の体格を取り戻した魔族の幹部たちが揃ってしまった。特に身長2メートルを優に超えるギルガスの重量は、この古い木造建築には荷が重すぎる。
「ショウ、床が……沈んでいるぞ」
ショーベルが冷静に指摘するが、その足元でも「バキッ」と不穏な音が響いた。
「ちょっと待ってください! 今、補強しますから!」
俺は慌てて『針と糸』を取り出し、神速で不可視の糸を床下に走らせた。
【概念付与:剛性】
を付与した糸で床板と梁を幾重にも縫い合わせ、強引に「絶対に抜けない床」へと作り変える。
「ふぅ……。とりあえず、これで建物が崩壊する心配はなくなりましたね」
「貴様、宿の内装まで瞬時に仕立て直すとは……。もはや大工の領域だな」
ゼスタが呆れたように笑うが、全ステータス1の俺にとって、宿の崩壊による「即死」は笑い事ではない。
翌朝、王都は昨日以上の厳戒態勢にあった。 「パクリ勇者」こと権三郎のライブを台無しにされ、メンツを潰された教会と騎士団が、血眼になって俺たちを捜索している。
「ショウ、検問が強化されている。この人数で抜けるのは至難の業だぞ」
副隊長のゼスタが窓の外を警戒しながら低く呟く。だが、俺は冷静に『針と糸』を操っていた。
「大丈夫です。全員分の『光学迷彩機能付き移動用マント』を、今さっき神速で縫い上げました。これを着てください」
俺たちは幽霊のように検問をすり抜け、王都を脱出した。目指すは、俺たちのホーム、独立都市エトワールの古代図書館だ。
数時間の行軍を経て、ようやく瓦礫の山――もとい、俺が偽装を施した拠点へと辿り着いた。
「……ショウ、ここはただの瓦礫の山だが? 隠れ家はどこだ?」
三眼の巨漢、ギルガスが不思議そうに首を傾げる。俺はニヤリと笑い、瓦礫の一部に見える「縫い目」に指をかけた。
「――ようこそ、俺たちの『メインステージ』へ」
俺が糸を解くと、空間が揺らぎ、五階建てのショッピングモールほどもある壮麗な古代図書館がその姿を現した。
「なっ……なんだこの建物は!? 瓦礫の中に、こんな神殿のような場所が……!」
幹部たちが絶句する中、俺は彼らを中に招き入れた。
【拠点防衛スキル:禁域の裁断発動】
「許可なく侵入した奴は、空間ごと型紙のように切り離されて、一生この中の迷路を彷徨うことになります。ここならギルガスさんが暴れても床は抜けませんよ」
内装を見た幹部たちは、さらに言葉を失った。
清潔な室内、座ると吸い込まれるようなソファ、そして自動浄化される大浴場。
「魔王城よりも豪華ではないか……」
冥界の導き手ヴァルカスが、信じられないものを見る目で俺を凝視する。
一同がリビングに集まり、一息ついた頃、ヴァルカスが重い口を開いた。
「……ショウ、ショーベル様。俺たちは行く場所がない……ここにいてもいいか……?」
一同を見渡して告げた。
「もちろんです!いつまでもいてください!!そして『暗黒騎士団』を名乗るのはやめましょう。俺たちは神に抗い、バラバラになった世界を縫い合わせる職人だ。今日から皆さんは、『ピース・テイラーズ(平和の仕立て屋)騎士団』です。俺が作ったこの『平和の服』が、皆さんの新しい制服になります」
「ピース・テイラーズ……。平和を仕立てる騎士か。悪くない響きだ」
ショーベルが自らの袖に触れ、誇らしげに目を細めた。
第22話をお読みいただきありがとうございました!
ついに全メンバーが本拠地エトワールに集結。
そして、魔王が残した「日本語の日記」に記された驚愕の内容とは?
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




