~魔法使いのとある1日~ 後編
前編の続きです!
式が始まるから、ということで義姉が戻り、それと入れ替わる形でシンデレラが戻ってきました。2人は式の会場へ向かい、自分の名前の書いてある席に座りました。勿論サブローの席はありませんので、代わりに継母の所に座りました。
その後新郎新婦の入場や色々な挨拶が終わり、皆で乾杯をして食事の時間になりました。サブローは初めて見るチーズ料理に目を輝かせています。
「なにこれ超美味しそう!いただきまーす!」
「サブロー食べて大丈夫?ネズミに戻った時にお腹壊さない?」
「大丈夫だと信じてる」
3人が料理をしこたま堪能していると、外で係員と誰かが揉めている声がしました。
「そ、そそそそ空を飛んで来た人がいる!!宇宙人かもしれない!!」
「だから、魔法使いだってばー」
「だから言っただろう、一般世界に魔法使いなんかいないんだよ。こうなることが予測できたから、私は歩いていこうと言ったのに……」
シンデレラは急いで外に出て、係員に説明をし無理やり納得させて会場に引っ張りました。目を擦ったのでしょうか、継母の目は赤く瞼も少し腫れていました。
シンデレラはそれらを見なかったことにして継母に話しかけました。
「義母さん遅すぎ!もう、どんだけ話してたの?もう1時間を軽く過ぎてるんだけど!」
「ちょっと色々話しててね……ああ、やっとあの子のウエディングドレス姿が見られるよ」
継母は義姉の元へ向かいました。こちらに気がついた義姉も、継母の元へ駆け寄ります。
「遅くなってすまなかったね。……すごく綺麗だよ。流石私の娘だ」
「お母さま……!」
義姉は思わず泣き出しました。そんな様子を見ていた新婦は、義姉の肩を抱きながら継母をしっかりと見つめました。
「娘さんは、私が必ず幸せにします!」
「ああ、頼んだよ」
会場で拍手が湧きました。サブローもつられて拍手を送っていましたが、その途中にズルズルと引き摺られて行きました。
「ちょっと、今いい所なのに!」
「君は元々この式に呼ばれてなかったでしょう?そういう人は参加しちゃいけないの。ほら、行くよー」
サブローはその時、ふと魔法使いの顔を見ました。左頬が大きく腫れて、目は赤く、瞼は少し腫れています。
「その……話し合いどうだった?」
「……いや、別に普通。じゃあまたいつか、って感じで別れた」
いやそんな筈ないだろ!と言いたい気持ちをグッと抑えて、サブローは魔法使いの頭を撫でました。
「……サブロー、飲みにでもいくか」
「飲みって何?」
「酒だよ酒。そっか、君はネズミだから知らないか。米でできたジュースのこと」
「へー、米でできたジュースか。米をジュースにするだなんて、人間は変わってるね」
「そうそう。ほら、行くぞー」
魔法の箒に乗って、2人は居酒屋に向かいました。
2人が居酒屋に入ると、なかなか混んでいてすぐに入れなさそうでした。
「お兄さん達、座れる席無いのだったら相席どうぞ」
中年男性に声をかけられて、相席することになりました。
そうして、不思議な3人で乾杯をしました。
飲み始めてから30分ーー
「おれはねぇ、そりゃ~あもちろんあの子のこともね、大っっっ切に思ってたよ!!でもさぁ~、急にね、自分の将来やりたいこと見つけてさあ。あの子のせいでその夢諦めるっつー方がね、あの子にシツレーになるんじゃないかなって思うんだよ!!だから俺は別れを告げたんだよ!!」
魔法使いはすっかり酔っ払っていました。
サブローは1杯目は酒を飲んでみましたが、魔法使いの醜態を見て、これ以上飲むのは控えました。
「おーい魔法使い大丈夫かー?なんかさっきまで一切教えてくれなかった事も出てきてるぞー?」
「そんなのいいから聞けよぉ!!」
そんな2人の様子を、中年男性は微笑ましそうに眺めていました。
「あ、すみません。同席させて頂いたにも関わらずこんな状態になっちゃって……」
「いえいえ、気にしないで下さい。私としても自分の若い頃を思い出してとても楽しいですから」
サブローが謝ると、男性はまたにこやかに笑いました。
それを聞いて、魔法使いは今度は男性に向けて自分の学生時代から今に至るまでを話しました。
「……なるほど。夢と恋とを天秤で考えた結果、あなたは夢を取った訳ですね」
「そうなんですよぉ……だから、夢を取った僕はさ、もうこれ以上あの子の近くにいちゃあいけないんですよぉ。……それが僕の選んだ道だから…」
魔法使いは急にしおらしい態度になりました。目には涙を溜めています。
「……あなたも相手もそれを望んでいますか?それで納得していますか?」
「……きっとそうでしょう。事実、ほっぺをグーパンされましたし。旦那はいないみたいだけど子どもは2人いるみたいだし、もう俺が追いかけちゃ駄目ですよ……。」
「そうでしょうかね?私にはそうは見えませんでしたが。
まずは1つ目。確かに貴方は、1番として夢を取った。しかし先程の話を聞く限り、そこにその方への思いは一切無かった訳ではありませんよね?
次に2つ目。1番と2番は、どちらか片方だけしか手に入れてはいけないのでしょうか?勿論、現実的に不可能な事もあるでしょう。しかし、今回は相手の気持ちです。その方に尋ねるまで、分からないと思いますよ」
男性は、魔法使いを正面からしっかり見つめました。
「それでは、もう1度聞きます。本当に、あなたも相手もそれを望んでいますか?本当にそれで納得していますか?」
男性は尋ねるように、もしくは諭すように魔法使いに尋ねました。魔法使いは少し考え込んでから、顔を上げて答えました。
「……本当はあの子と一緒に居たいに決まってるじゃないですか。口が悪いし不器用だけどさぁ、なんだかんだ面倒見がよくって、責任感も強くて、誰よりも優しい心を持ってる人なんですよ。
僕はまだ、あの子の事が好きです!」
「そうですか。それなら、もう答えは決まりましたか?」
「……もう1回!!あの子の家に行ってくるー!!」
魔法使いが勢いよく立って出ていこうとしたので、サブローは慌てて止めました。
「待って!!こんな夜中に酔っ払いが来るとかただの迷惑にしかならないか!明日にしとけ!!」
「まあまあ。せっかくですし、よければ私の若い頃の話も聞いていって下さいよ」
男性が微笑みながらそう言うと、魔法使いも大人しく座りました。そして男性も、自分の若い頃を語り始めました。
「へぇー!それでは、その頃の彼女が今の奥さんなんですか~!」
「というか、王子の従者やってるとか貴方すっごいエリートじゃないですか……」
2人が感心しながら聞いていると、男性は急にため息をつきました。
「そう、王子……あの方が恋愛に奥手すぎて、王宮関係者達は頭を抱えるしかないんですよ!もう結婚式の準備もハネムーンの手配も済ませてるのに、肝心の王子があの調子ですからね……まあでも、今までゲームしか興味なかった王子が人間に恋をするようになっただけでも、大きな成長だとは思うんですけれどね……」
男性も酔いが回っているのか、先程に比べ喜怒哀楽を激しく表しながら話します。
「大体ねぇ、きっかけがゲームとはいえ、いつまでも2人きりの時にゲームの話をしてるのが悪いんですよ。ここまできたら、ゲームはむしろあの子の興味を引く敵だと思わなきゃ駄目だろうって思うんですけれどねぇ……」
「そうそう!王子はもっとガッとバシッといっちゃえばいいんれすよ~!」
「本当にその通りだと私は思いますよ。今日も想い人の姉の結婚式と言ってましたが、ちゃんと伝えられてるかどうか……」
「あー……無理そうでしたね」
「てすよねぇ……ハァ」
男性は頭を抱えながら、王宮での愚痴を語り始めました。
そして、それと同じくサブローも心の中で頭を抱えていました。
「(酔っ払いって、面倒くさい……)」
サブローは、もしまた人間になることがあっても、酒は一切飲まないと心に決めました。
結局男性が2人分も奢ってくれて、解散になりました。
「それじゃあ、これで。2人とも、もしまた機会があれば一緒に飲みましょう!その時は是非魔法使いさんのその後の話をしてくださいね」
そう言って、男性は王宮に続く道へ戻っていきました。サブローはフラフラしている魔法使いを抱えながら、男性に手を振って別れました。
さて、困ったのはその後です。
サブローとしてはこのまま魔法使いを家まで送っていきたいのですが、彼の家など知りません。ついでに魔法使いが寝てしまうと自分は人に戻ってしまう為、時間的余裕もありません。
「魔法使い起きてる?お前家どこ?」
「ん~僕は、庭付きの一軒家を買って一緒に暮らしたいなぁ~」
「おまえの夢は聞いてない。というかそれ相手、俺じゃないでしょ」
「もっちろん!……ごめん、サブローのことは嫌いじゃないよ?でも君はネズミだからさ……」
「告ってもないのに振らないでくれない!?」
サブローは仕方ないので、自分の巣穴の近くまで連れていくことにしました。最終手段として、シンデレラの継母なら、彼の家を知っているはずです。
「ほら、もうすぐだから寝ないでよ魔法使い」
「うーん……起きてるよぉ……」
「本当にお願いだから起きてて。俺ネズミに戻っちゃうから。……あ、シンデレラだ」
家の前に、シンデレラと王子がいました。2人の様子を見て、サブローは魔法使いを引き連れて木の影に隠れます。少し遠い為2人の声は聞き取れません。
王子はシンデレラの手を掴み、何かを言ってます。シンデレラは最初いつもの表情でしたが、段々と赤くなっていき、あたふたしはじめました。王子はそんな様子を見て笑みを浮かべ、握っていた手をそうっと離して帰っていきました。
そんな2人の様子を見て感動していたサブローでしたが、急に身体が小さくなって、元のネズミの姿に戻ってしまいました。支えていた魔法使いも、音を立てて倒れます。しかし魔法使いは完全に寝てしまったようで、起きようとしません。
「え、そこにいるの誰?」
音のする方へ近寄って、2人(1人と1匹)を見つけました。事情を察したシンデレラは、サブローの頭を撫でた後に魔法使いをお姫様抱っこして家に入っていきました。サブローもやれやれと首を振ってから、自分の巣穴に戻っていきました。
数日後、サブローが巣穴で寝ていると、大量の砂を投げ入れられました。犯人を捕まえる為に巣穴から出てみます。
「ビビディ・バビディ・ブー」
出た途端に、笑みを浮かべた魔法使いに魔法をかけられました。するとサブローたちまち人間の姿に変わります。
「やっほーサブロー。元気?」
「やっほーじゃないから!勝手に人間の姿にしないでよ!今俺明日の結婚式の為に準備してたんだけど!?あと巣に砂は超迷惑だからやめて!」
「ごめんごめ……え、お前結婚するの?」
「俺じゃなくて、2番目の巣穴のとこのやつだよ。お前に分かるように言うと、可愛い彼女と同棲してたネズミ。この前プロポーズして、明後日結婚式だから」
「あーあのイケメンくんか!なるほど、プロポーズが成功したんだね。よかったよかった。
あ、シンデレラからの伝言ね。お前シンデレラの結婚式行く?行くなら席を用意してくれるってさ」
「お!やっぱあの2人結婚することになったのか!絶対行く!いつ??」
「んーと、来週の水曜日。大安吉日!」
「タイアンキチジツ……?まあいいや、行ける行ける!」
「そっかぁ。それじゃあそう伝えとくね!」
魔法使いがそう言って立ち去ろうとするのを、サブローは必死に止めました。
「待て、どこに行く!?」
「えー何?僕これからあの子のところ行くんだけど」
「俺を人間のままにして放置するな!俺も連れてくか魔法解いてから行け!」
「魔法は寝るまで解けないんだって……もう、仕方ないな。俺達の邪魔はしないでね」
「勿論、俺としても気まず過ぎるわ。シンデレラの部屋にでも遊びに行く」
「はいはい。それじゃあいくよー」
そうして、2人はシンデレラの家に向かいました。
おわり
~魔法使いと別れた後シンデレラの部屋に行ったら王子とシンデレラがイチャついており、非常に気まずい思いをしたサブローの話は省略します~
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!




