~魔法使いのとある1日~ 前編
これは「ゲーム好き王子とお転婆シンデレラ」の番外編です!
そちらを先に読むことをオススメします!
シンデレラ おまけ
~魔法使いのとある1日~
ある所に、魔法使いがいました。
彼にかかれば、どんなものでも魔法で変身させられます。彼は良い魔法使いなので、私欲の為ではなく魔法の力を必要な人のために使っています。
そして、今日も困っている人がいないか、魔法の箒に乗って空から探しました。
「おや、あれはあの時のイケメンなネズミくんだな」
魔法使いは急降下し、ネズミの前に着地しました。ネズミは魔法使いに対して何か訴えていますが、何を言っているかさっぱり分かりません。
「あ、そうだ。ビビディ・バビディ・ブー」
魔法使いが微笑みながら魔法をかけると、ネズミが人間の姿になりました。かなりのイケメンです。
「うわっ、えっ、何これ!?背高っ!え、これどういうこと??」
「やあ、君が僕に何か言いたげにだったから人間にしてみたよ。これで僕と意思疎通がてきるね」
「いや俺は〈急に降りてきたから踏み潰されるかと思ったよ危ないな〉って言いたかっただけだから!」
「あらそうなの。ごめんね~。……で、何してたの?」
「え、ああ。彼女にあげる花を探してたんだ。……今晩は月が綺麗みたいだから、プロポーズしようかなって思ってて。」
イケメンがそう言いながら照れていると、魔法使いが笑顔でステッキを振りました。
「ビビディ・バビディ・ブー」
すると、とても素敵な花束が出てきました。
「ほら、これ持っていきなよ」
そう言うと、イケメンは困ったように首を横に振りました。
「気持ちは有難いけど、それは遠慮するよ。やっぱ自力で見つけた花を渡して、想いを伝えたいから」
イケメンがそう言い切ると、魔法使いはにこやかに笑いました。
「そっかそっか。そりゃ余計な事をしちゃったかな」
「いや、これは俺の気持ちだから……あ、でも人間の姿になったから、花を見つけやすくなった。ありがとう」
「なんだよー最後までイケメンかよー!じゃー僕は行くね!花探し頑張ってー」
「ああ、またな」
イケメンに対して手を振ると、魔法使いはまた魔法の箒に乗って空に向かっていきました。
暫くすると、魔法使いはまた面白そうなものを見つけました。
「あ、あれはこの前のもう1匹のネズミだね」
そう呟くと、急降下してネズミの元へ降りました。着地と同時に、なにやら足元に柔らかい感触があります。
「あ、やばい。ごめんごめん」
足を慌てて下ろしてネズミを見ると、魔法使いに踏み潰され、なかなかの重症です。
魔法使いは笑顔を保ったまま、急いで魔法の杖を振りました。
「ビビディ・バビディ・ブー」
すると、あっという間に怪我が治り、元通りになりました。
「ついでだし、ビビディ・バビディ・ブー」
魔法使いがもうにこやかに1度魔法をかけると、ネズミが人間の姿になりました。
「ちょっと!めちゃくちゃ痛かったんですけど!?」
「ごめんごめん。でもちゃんと治したでしょう?」
「身体の傷は治されてても、心の傷は負ったままなんですー!!」
「悪かったってばー」
「もっとちゃんと謝って!」
「おーよしよしごめんね痛かったねー」
「おう棒読みやめろや」
2人で一通り茶番をしてから、魔法使いはネズミに尋ねました。
「それで、君は何をしていたんだい?」
「特に何もすることが無いから、ゆったりと散歩してたんだ」
「なるほど暇人ね。それなら、僕と一緒に来るかい?僕も暇つぶ……じゃなくて困っている人を助ける仕事の最中だから」
「今暇つぶしって聞こえたからな」
なんだかんだ言いながら、ネズミ(人)も仲間になりました。
「ところで、君の名前は?」
「名前とか無い。いつも〈3番目の巣穴の息子〉とかだから」
「んー、でもそれだと僕が呼びづらいなぁ……よし、じゃあ今日から君はサブローだ!」
「変な名前だけど、まあいいか」
そうして、魔法使いは箒の後ろにサブローを乗せて、次なる目的地を見つけに飛んでいきました。
2人で空を飛んで数分後、魔法使いはまた面白そうなものを見つけ、急降下させました。落下地点にいた人物は、持ち前の瞬発力で事なきを得ました。
「やあ、シンデレラ!元気かい?」
魔法使いが笑顔で声をかけたのは、シンデレラでした。王子と継母も一緒にいます。
「あ、魔法使いだ!後ろのはあの時に御者やってくれたネズ男くん?」
「そうだよ!彼の名はサブロー」
「こいつに名付けられたので今日からサブローです」
3人が楽しそうに談笑していると、継母がびっくりした顔で魔法使いの肩を掴みました。
「お、お前……もしかして……」
魔法使いは継母を見て一瞬目を見開いて固まりましたが、またいつもの笑みを浮かべて話しかけます。
「……やあ、久しぶりだね。何年ぶりかな?元気してた?」
「元気してた?じゃないよ!!この馬鹿!!急に姿を見せなくなって……心配してたこっちの気持ちも知らないで……」
「……へえ、心配してくれてたんだ。そういう優しいところは相変わらずなんだね」
「っ、もう、黙れ!話は後でたっぷり聞いてやるからな!!」
そう言って、継母は1回咳払いをしてから、唖然としているシンデレラと王子の方を向きました。
「……2人とも申し訳ないけれど、私は少しこの方と話さなくてはいけないことがあるの。結婚式には少し遅れるって、主役の2人に言っておいてくれないかしら。」
「わ、わかった。義姉さんに言っておくね。でも早く来てあげてね」
「シンデレラの事は、私が責任もって安全に送り届けます」
継母はそれを聞くと、魔法使いを引っ張って家の方角へ戻ってしまいました。
サブローは行く宛がありません。どうしようか悩んでいるとシンデレラが誘ってくれたので、一緒について行く事にしました。
「今日の結婚式は、舞踏会の日の帰りに告白イベントしてた、あの2人だよ」
「あー、あの2人か。とうとう結婚が決まったのか」
シンデレラとサブローが楽しそうに話していると、王子が少し不貞腐れた顔をしながら話に入ってきました。
「申し訳ない、先程から気になっていたのだが、君は一体誰なんだい?」
「あ、申し遅れました。俺はサブローです。シンデレラとは舞踏会の日に知り合いました」
「……ほう。私が招待しているということは、ある程度位の高い貴族だな」
「あ、いえ、そういう訳ではないのですが……」
まさか自分がネズミだなんて言えないサブローがどう説明しようか悩んでいると、シンデレラは不思議そうに答えました。
「サブローはうちの近くに住んでるよ。王子が帰った後とかに、庭で遊んだりしてるもんね」
「いや、あれは遊んでるというよりシンデレラが俺のことを追いかけ回してるだけで……」
「……ほう、私が帰った夜に密会していると。しかも追いかけ回されているなんて……」
「あーあ、すごい誤解が生じてる気がする」
サブローはため息をつきましたが、そんな事に気がつかないシンデレラは、ふと目を輝かせました。
「そうだ、サブローなら王子の3番目の友達になれるじゃん!やったね王子、初めての男友達だよ!」
「あ、ああ……そう、だね」
「ほら、2人とも握手して」
シンデレラに急かされ、サブローと王子はぎこちなく握手をしました。
それからもたわいもない話をのんびり続けながら歩いていると、結婚式の会場に着きました。シンデレラは係の人に話して、新婦の控え室へ向かいました。
扉を3回ノックして、部屋に入ります。
「あら、シンデレラ。遅かったじゃない」
中には、純白でとても綺麗なドレスを着た義姉が座っていました。化粧も施されていますが、トレードマークの太い眉毛だけはそのままです。
「あれ、義姉さん眉毛剃るとか言ってなかったっけ?」
「私はそっちの方がいいと思ってたんだけど、あいつが『そのままの君でいいじゃないか』とか言うから……」
「ほほーう?」
「……お願いだからそんな顔で見ないで。昨日シンデレラのおやつをこっそり食べたの謝るから」
「え、おやつ食べたのも義姉さんだったの!?俺そっちじゃなくてお茶の中にワサビ入れられてた事に怒ってたんだけど!」
「あれはお前が全員分の結婚式の招待状にスフィンクス書いたからでしょ!?」
「いや、だってそれは義姉さんが……」
言い争いがあまりにも長く続きそうだったので、王子は仲裁に入る事にしました。
「まあまあ、落ち着いて下さい2人とも。義姉さんはもうすぐ式なのですから、そんな顔は仕舞いましょう。花婿さんにびっくりされてしまいますよ」
「まあ、私はそんなあなたも素敵だと思ってしまうんですけれどね」
皆が声の方向に振り向くと、あの時の御者であり、今回の花婿の彼が笑顔で立っていました。
「こんにちは、お兄さん」
「こんにちは、王子。……貴方に『お義兄さん』と呼ばれる日が来るのを、私は楽しみにしていますよ」
彼は王子にそう耳打ちしてから、花嫁の元へ向かいました。
「も、もう!部屋に入るならノックくらいしてよね!」
「君の控え室が賑やかだったから来てみました。……ドレス姿、とっても綺麗ですね。あなたにとっても似合ってます」
「あ、ありがとう」
「こんな人をお嫁さんにできるなんて、私はとっても幸せです」
「もう!変な冗談言わないで!」
「あなたに関することに対して、私は冗談や嘘は言わない……と、プロポーズした時に約束したではありませんか」
「も、もう……本当に馬鹿なんだから」
珍しく空気を読んだシンデレラは、王子とサブローを連れて控え室を出ました。
「それにしても、あの義姉さんが結婚かー。あんなわんぱくな人でも結婚できるものなんだなー」
廊下でシンデレラがしみじみとそう呟くと、王子は落ち着いた声で尋ねました。
「……君は、結婚に対してはどう思っているんだい?」
シンデレラは、少し考えてから答えました。
「そうだなー……正直、あまり考えたことは無かったかな。義母さんのご飯食べて、義姉さんとゲームしたりイタズラしたり……そういう日常が当たり前で、それがずっと続くものだと思ってたから。だから、今回義姉さんが結婚してそれが変わっちゃうのが、少し寂しいし怖いかな」
シンデレラはその後、でもね、と話を続けました。
「変わるのが全部悪くなるとは思ってないよ。だって、舞踏会という変わったイベントのお陰で、王子が俺の家に遊びに来てくれるようになったしね」
シンデレラはそう言って、王子に向けて笑顔を向けました。
「……そうか。そうだね、私も君に会えて、とっても幸せだ。君に出会わなければ、自分がこんな気持ちになるなんて知らないままだった」
「……もう、王子ってばどれだけ友達いなかったの?」
「いや、友人感情じゃ無くて、その……なんというか……」
サブローは必死に空気と同化しながら、2人を見守っていました。
結局王子が何も言えないまま五分が経過した時に、義姉さんが控え室から出てきました。
「シンデレラ。ところで、お母さまは?」
「あー、義母さんなら魔法使いと話してるからちょっと遅れるって」
「……魔法使い?」
義姉は少し俯いて考えてから、少し苦い顔をしました。
「もしかしてその魔法使いって、常にニコニコしてたりする?」
「うん。……え、義姉さん魔法使いのこと知ってるの?」
「知り合いって訳じゃ無いんだけど、お母さまから聞いた事があって……お母さまって、普段は自分の過去とか話さないんだけど、二か月前に2人で晩酌してた時に少しだけ話してた事があるの」
「え、まって、2人で晩酌とかずるい!」
「あなたはまだ20になってないでしょう!話を続けるわよ。
そのニコニコしてる人……その時はまだ魔法使いじゃなくて普通の人だったみたいなんだけど、まあ、2人は学生時代の知り合いみたい。2人の間に関して具体的な名前は言ってなかったけど……お母さまの話し方から察すると、恋人のようなものだったと思う。
でも、ある日から急に電話やメールが通じなくなって、その人の家に行ったらお母さま宛に[魔法使いになる修行をしてきます。またね]っていう手紙があったんだって。必死になって探したけど足取りも掴めなくて、そのまま何年も経って今に至る……って」
「義母さん……」
「それでやけくそになったお母さまは、その時の気持ちを「魔法は恋を打ち消した」っていう歌詞に込めてギターを弾きながら歌って、その動画をY○uTubeにupしたらなかなか有名になって、そこから今はY○utuberとして活躍してるんだって」
「ちょっとまって、お義母さんの職業ってY○utuberだったの!?ユーザー名は?」
「ミコンノママハハ」
「え?は?え?俺のお気に入りの人じゃん!……と言うことは三ヵ月前に出してた最新曲の『うちの子達よ、働けニート』って、もしかして俺たちのこと??」
「だろうね」
「えー……どうしよう次からあの曲聞いても笑えない」
義姉がひとしきり笑ってから、優しい笑みを浮かべてシンデレラに言いました。
「話を戻すわよ。そこからどういった経緯で実の娘でない私たちを1人でここまで育ててくことになったのかは分からないけどさ、そろそろお母さまも自分の青春に戻ってもいいんじゃない?
……てことでお前も就職するか永久就職するか、早く決めなさいよ!」
「よーし、俺ちょっとトイレ行ってくる」
「話から逃げないでよシンデレラー!!」
シンデレラはダッシュでトイレに向かっていきました。
義姉はひとつため息をついてから王子に向き合いました。
「……という訳で、うちとしてもシンデレラを早く嫁に出したいのだけれど。王子様はいつまで待たせるのかしら~?さっきも肝心なところで言葉を詰まらせちゃってたしね~?」
「そ、それはもう少しお互いを意識しだしてから……」
「いい?あの子は言わないとわからない子よ!自分が恋愛するなんて夢にも思ってないんだから。……逆に言えば、今まで脈ナシっぽい態度取られてたとしても、告白してから脈アリになる可能性だって充分あるわ。とにかく、さっさと言いなって!」
「う……努力しよう」
「頼むわよ。
……ところで、さっきから気になっていたのだけれど」
義姉は、今度はサブローの方に視線を向けました。
「あなたは誰?王子の知り合い?」
「それが、私もよく知らなくて……シンデレラの友人でよく夜に密会している人物らしいのですが……」
「夜に密会?そんな人居ないはずよ」
「……初めまして、サブローです」
サブローは諦めて、自分がネズミであることやシンデレラと出会ったきっかけ、今日ここにいる経緯までを全部説明することになりました。
先程まで魔法使いの話をしていた事もあり、すぐに本当だと信じてもらえました。サブローに警戒していた王子も、話を聞いてからはホッとした表情を浮かべたので、やっと安心したサブローだったのでした。
後編は、数日中にupしたいと思います!




