番外編2 前編 〜フラレウーマン〜
魔法使いと継母の関係について過去から遡っていきま〜す
私の彼氏は、変な人だ。
多分、頭はいい。私が分からず唸っていると 、横からさり気なくヒントをくれる。あと、顔も悪くないと思う。目が大きくて、常にニコニコと笑ってて、表情も含めると寧ろ可愛いと思う。
問題は服装だ。おとぎ話に出てくる魔法使いのようなローブに、黒いとんがり帽子を被っている。(一応言っておくと、外側はいつも黒いのだが、曜日によって中の色が違うので毎日同じものを着ている訳ではないらしい。最近は彼のローブの中の色で曜日を確認している。)
本人も服に劣らないほどに変人で、服装に対して突っ込まれると「魔法使いの正装だから」の一言で片付けてしまう。魔法使いについて聞いてみても「まだ師匠が見つかってないから魔法は使えない」と真顔でいう。
大学で知り合ったきっかけだって、講義の受講人数と席数がぴったり同じの教室に遅刻して入ってきた私が、彼の隣以外座れなかったからだったりする。
座ってから数分後、彼が教授に当てられた。長文の英語を日本語訳するだったが、教科書を持っていなかったらしい。仕方ないので、そっと私の教科書を手渡した。それを見てすぐに解答をスラスラと答えていた。
「君、優しいんだね。ありがとうすごく助かった!」
講義後、彼にすごく優しい笑みを向けられ、悪い気はしなかった。
「どういたしまして。じゃあその代わりにこれ教えてくんない?あんな一瞬で解けたんだから頭いいでしょ?」
「まあ、魔法使いを目指しているからね!」
「何故時々日本語が不自由になるんだか……」
そうして教えてもらったがとても分かりやすかった。
そして、その出来事をきっかけに彼と話すようになった。
「あ、おはよう。隣いい?」
とりあえず講義中は隣りにいるようになった。大学内に一応友人はいるが、専攻が違うので講義中ひとりぼっちだったから少し嬉しかった。
でも彼は忘れ物が多すぎるので、その度に長々と説教をした。その代わりに、ちゃんと忘れ物が無かった日は頭をわしゃわしゃと撫でながら褒めてみた。つい近所の子どもと同じ扱いをしてしまったが、彼が気に入ったらしく習慣になった。そのうちちゃんと持ってくるようになったので、毎日頭を撫でる事だけが習慣として残った。
彼は性格は変だけど真面目で、一緒にいて楽しかった。あとよく考えれば大学内の私の友人も変な奴が多い。友人達と共に、彼を昼ごはんに誘ってみた。結果はやはり良好で、友人達ともとても仲良くなっていた。
私はそれがすごく嬉しかった。
その後、テスト前はよく彼と勉強するようになった。上手く日本語にできない論文なんかを持っていっても、彼はちゃんと理解して私に説明してくれた。しかも、ただ教えてくれるのではなく、あくまで自分で考えさせるようにしてくれているので、私の英語読解力が上昇した。テストで95点を出した時に教授に替え玉かと疑われたのも今では笑い話だ。
それから、友人と遊んだことがないという彼を休日にあちこちへ連れ出した。
ローブ禁止と言ったら高校時代のものと思われる学ランで来たから、一瞬誰だか分からなかった。私服は全く持っていなかったらしい。確かにローブではないし、似合ってはいたけど初日は服屋に行った。その後は美術館や遊園地に行ったり、ただカフェでお茶しながら話したりした。
「君は、僕が今まで知らなかったワクワクする事を次々教えてくれる。君と一緒にいることが、どんなことよりも1番楽しいんだ」
そう言って笑う彼に、嬉しさがこみ上げてきた。
その1週間後。彼と水族館に行った日に告白をされ、私達の関係は友人から恋人に変化した。
大学でも週に1日、友人達とではなく2人きりで昼ご飯を食べた。週末に一緒に出かけてる際には、手を繋いで歩いていた。長期休暇中は2人でちょっと遠い所に旅行へ行き、同じ部屋に泊まった。
彼と過ごす毎日がとても楽しくて、いつまでも彼と一緒に居たいと感じていた。
……しかし、彼にとってはそうではなかったらしい。
彼と交際を初めて半年後、彼は突然私の前から居なくなった。
慌てて彼の部屋に向かったが、何も無い。
[魔法使いになる修行をしてきます。またね]
残されたのは、その手紙だけだった。
「ま、まあさ。あいつが変な奴なのは元からだし、そのうちひょっこり帰ってくるよ。だからその……元気出して」
「そ、そうそう!あなたが嫌いになった訳では絶対ないって!」
友人達からの慰めの言葉を受け流しつつ、家に帰った。もう、何も考えられなかった。
次の日も、その次の日も彼は帰ってこなかった。授業が終わったらすぐに教室を出て探しに出かけても、どこにも居なかった。
日に日に学校に向かうのが辛くなっていたある日、友人の中の1人が私に声をかけてきた。彼は友人の中で1番イケメンと言われているが、「小人の恋人」との惚気を語る妄想疑惑かロリコン疑惑がある奴だった。
「もう、探さなくていいよ。あいつが帰ってくるまで、お前が待ってればいいじゃないか」
すごく無責任な言葉にも思えたが、少し気が楽になった。
そして私は、彼を探すのを止めた。
しかし、暇な時間にふと彼を思い出して辛くなる。そんな時は、その思いを歌詞にするつもりで書き出してみた。歌詞が書ききってしまったら、音を付けてみた。音が付いたら、ギターで歌ってみた。
そして飲み会終わりに、酔っ払った勢いでY○uTubeに動画をupした。
『フラレウーマン 魔法は恋を打ち消した』
何故か反響が大きく、沢山のコメントが届いた。
「思いが伝わってきて切ない……」
「何この歌辛い……頑張って」
「彼氏が後悔するくらいいい女になっちゃえ!!」
「応援しています」
私のこの辛さを歌にすれば、誰かが聞いてくれた。もう、やけくそだった。
気がつくと私はY○utuberになっていた。




