第7話 少年、引き止められる
魔剣は焦っていた。
(なぜ、この少年は吾を抜かず、立ち去ろうとするのか?)
もはや訳がわからない。
本当なら、新たな持ち主が自分を手にしたときに――
『吾は魔剣、アトロポスなるぞ! 主よ、吾を使い、望みを叶えよ!』
そう初めて声にするのが今までの慣例だった。その時、新たな持ち主は驚きと高揚感を抱き、手に入れたことの喜びを示すため、高々と掲げるのだ。
それを楽しみにしていたのに――
「だから、なぜ、オマエは吾を手に入れようとしない⁉」
「やっぱり、剣がしゃべっている! 気持ち悪い!」
そう言って、少年が逃げようとするので――
「こら! 待て! 待ってください! お願いだから、待ってぇ!」
もはや、なりふり構わず引き止める。
「なんなんだよ。もう――」
そう不満をつぶやきながら少年が戻ってくると、魔剣は安堵する。
「いやいや、安堵している場合じゃない! なぜ、オマエは吾を抜こうとせぬのだ!?」
「……なんで、抜かなければならないの?」
怪訝な表情を見せる少年に、魔剣は混乱する。
「なんでって――オマエはそのためにここに来たのだろ?」
「ううん、別に」
「――へっ?」
別に? ではなぜ?
「なんか魔力を感じたから、『なんだろうなぁ?』と思って寄ってみただけだから」
「――はぁ?」
ただ、寄ってみただけ?
何を言っているんだ?
「わ、吾は魔剣であるぞ。吾を手にした者は強大な力と名声を手に入れられるのだぞ。オマエはそれを欲していないのか?」
「うん。剣なんて、別に欲しくない」
「なっ!」
いったい、どういうことだ?
剣士であれば、自分を欲しないなどありえないはずなのだが――
どうして、この少年は?
その時、魔剣は(はっ!)と思いつく。
(そうか……この少年、剣士ではないのだ。だから、剣の姿をしている吾に興味を示さないのだな)
そう理解し、「フ、フ、フ……」と含み笑いをした後――
「安心するが良い。吾は剣だけでなく、どのような武器にでも形を変えることができるぞ。さあ、言うのだ。オマエが欲する武器とはなんだ?」
槍か、弓か、短剣か――
はたまた、メリケンサックなんてマニアックな武器を欲してくるのだろうか?
魔剣は少しワクワクする。
すると、少年はしばらく考えたあと――
「うーん……それじゃ、ギター!」
「――――――――は?」
「ギターになれる?」
ぎたあ? ギタア?
何、それ?




