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S級冒険者の父に地獄育成された少年の無自覚無双~火竜を素手で殴り殺すなんて普通でしょ?~  作者: テツみン


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第6話 少年、樹海に入る

 アスタリア大陸中央に広がる大樹海――


 魔族領と人間の住む大陸南部を隔てるこの地には多数の魔物が生息する。


 五百年前、この地を治めようと人間が攻め入ったことがある。だが、魔物と魔族からの抵抗に遭(あ)い、あっけなく全滅。それ以降、この地に人間が進軍したことはない。


 その大樹海のとある場所に大剣があった。先の戦で主人を失い、放置されたのだ。

 大きな岩に刺さった状態で五百年もの年月を耐えてきたその剣は、朽ちるどころか荘厳(そうごん)な輝きを今なお留めている。


 その剣の名は、『魔剣アトロポス』。


 その昔、悪名高き魔女が禁忌の魔法を使い、自らの魂をその剣のコアである魔石に封じ込めたとされる剣。


 その強大な魔力は樹海に生息する魔物を引き寄せるのだが、同時に触れさせることを許さなかった。そのため、常に魔剣の刺さった岩の周りには魔物がうろついている。


(はあ、今日も何もなかった――)


 魔剣はそう思念する。

 人間だった頃の人格が、その剣に宿っていたからだ。


 最後の主人だった人間が討たれて五百年。そ(・)れ(・)はこの岩の上で次の主を待ち続けていた。しかし、自分に相応しい人間どころか、誰一人としてこの場所に現れたことはない。


 ここは大樹海、それも奥深い場所。最も近い人里からでも、歩いて数日かかる。

 もちろん、そこまでの道のりには凶暴な獣や魔物が無数に生息していた。


 つまり、危険を冒してまでわざわざこの場所までやって来る人間などいないのだ。


 ふつうは――


(はっ! なんだ⁉ この巨大な気力は!)


 突然、人間の気配を感じた。それも極めて強力な!

 これまで仕えてきた主人たちに匹敵――いや、それ以上の気力と魔力を感じ取れる。


(ついに、現れたのか⁉ 吾の主(あるじ)となる者が!?)


 気持ちが高ぶった。

 五百年待った。もはや、誰も来ないとあきらめてしまった時もあった。


(しかし、吾を求める者がまだいたのだ!)


 魔剣を取り囲むように群がっていた魔物がその気配に逃げていく。そのどれもが、冒険者ギルドの等級分けでA級やB級、つまり『災害級』クラスの魔物だというのに――


 巨大な気配は確実に近づいている。その目的は間違いなく自分だ。


(良いぞ。その姿を吾に示せ!)


 魔剣はそう願い、気配のする方向へ意識を向けた。


 そして、草むらをかき分けて、その人物が姿を現す。


(――えっ?)


 気配の大きさから、(いったい、どんな屈強な男が現れるのか――)と考えていた。いや、もしかしたらイケメンの勇者かも――なんて、ちょっと期待したりもした。

 しかし、現れたのはちょっと生意気そうな顔の小柄な少年だった。


(こ、このような少年が、これだけの気力と魔力を有しているとは――)


 この若さで、さぞかし厳(きび)しい試練を乗り越えてきたのだろう――そう考えるだけで、感慨深い思いを抱く。


 少年は、自分が突き刺さっている大岩を見上げると、「よっ!」とかけ声を出して、飛び乗った。


「剣? ふーん……」


 少年は魔剣を見つめると、そんなふうに呟(つぶや)く。


(さあ、吾を抜け! さすれば、強大なチカラと名声を手に入れることになろうぞ!)


 五百年ぶりの高揚感を魔剣は噛みしめていた。


 しかし、その少年は剣を抜こうとしない。


「ま、いっか。一応わかったし――」

 そう独り言を口にして、魔剣に背を向けた。


(――えっ?)


 そのまま岩から飛び降りようとしているので、そ(・)れ(・)は慌てる。


「こ、こら! なぜ、吾を抜かぬ!? なぜ、そのまま行こうとする!?」

「うわっ! 剣が喋(しゃべ)った!?」

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