第5話 少年、旅立つ
アニエルは「オレに勝ったら、オマエの好きにしていい」と言われ、父親、ダニエルと勝負した。そして、アニエルはそれに勝った――というか、ボコボコにしてしまった。
気を失ったダニエルを背負って家に運び込み、ベッドに寝かせる。
一時間後――
「うっ――」
目が覚めたダニエルは、全身の激しい痛みで身動きができなかった。
首だけをかろうじて動かし、息子の姿を見る。
「ア、アニエル――」
「父さん、ありがとう」
いきなり、感謝の言葉を伝えられた。
「やっぱり、ボクの身を案じてわざと負けてくれたんだよね?」
この程度の実力では冒険者になっても苦労するだけ――だけど、それを口にしてしまうと息子が傷ついてしまう。だから、こうしてわざと負けてくれた――そう、アニエルは理解したようだ。
もちろん、そんなことはない。ダニエルは全力で戦った。「冒険者にならない――」なんて、バカげたことを言う息子を戒めようとしたのだが、結果は逆となってしまった。悔しい気持ちもあるが、ここまで成長した息子が誇らしくもある。
しかし――
「約束は約束だ。オマエの好きにしろ」
そう、ダニエルは息子に伝えた。
「うん。『立派な冒険者』になるという、父さんの期待には応えられなかったけど、必ず立派な職業に就くから。それじゃ、元気でね!」
いつの間にか旅の準備を終わらせていたアニエルは、そのまま家を飛び出していくのだった。
すっかり逞しくなった息子を目で追いながら、ダニエルはこう呟く――
「アニエルよ、動けない父さんを置いて行かないでくれ……」




